表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【王国内屈指の公爵家の令嬢ですが、婚約破棄される前に婚約破棄しました。元婚約者は没落したそうですが、そんなの知りません】  作者: ナロー


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/89

【ロバート=ロジャー警部の来訪】


 エインズ邸の鉄柵の門の前に一人の男がいた。


 よれよれのコート、シワのついた上着、汚れたズボン、無精髭。


 そのコートの胸には一つの記章が付いていた。猛禽類のワシを象った記章……この国の警察のシンボルマークだった。


 男は警部だった。




「お久しぶりですな、ロバート=ロジャー警部。相変わらず寝不足なご様子で、しかし目だけは鋭いままだ」


「お久しぶりです、エインズ卿。本日はお時間を割いて頂き感謝致します」



 エインズ邸の応接客間。


 ソファに座るウォールと、テーブルを挟んだ向かい側に立つロバート警部。


 もちろんソファは用意されているのだが、警部は座ろうとしなかった。



「お座りになっては如何ですか、警部。ここまで疲れたでしょう」


「いえ、私は立ったままで結構です。すぐに帰るつもりですし」


「そうですか」



 本人が遠慮しているので、ウォールはそれ以上勧めようとはしなかった。


 出されたコーヒーと菓子に目を向けることもなく、警部は口を開く。



「私がここに来た理由ですが、先日の事件についてです」


「事件? はて、俺は殺人も恐喝もマネロンもしていないが?」


「ご冗談を」


「いやすまない。こういう身分だからな、心当たりが多すぎて逆に見当がつかないんだ。どこの誰が仕出かした事件で、うちの誰が関わったのかな?」


「エインズ公爵家は自然と敵が湧いてきてしまうようですね」


「全くだ。うんざりする」



 ウォールが肩を竦める。


 警部は述べた。



「先日のひったくり犯の事件です。昼間、道路で女性のバッグがひったくり被害に遭った」


「ひったくり?」


「そのひったくり犯を、貴方の家のメイド二人が捕らえました。本日はそのお礼を申し上げに来たのです」


「ああ、そのことでしたか。報告はそのメイド達から聞いています」



 しかしウォールは不思議そうに尋ねる。



「ですが、わざわざ警部が謝礼しに来る程のことではないと思いますが?」


「そのひったくり犯は先月から度々犯行を繰り返していて、我々も追っていたのです。馬車ですぐに逃げてしまう為、現行犯逮捕が難しくてね」


「なるほど。日々の他の犯罪や、凶悪犯罪などの対処もしなければいけないから、対応がどうしても後手に回ってしまうのですね」


「面目ない次第です」


「いや、私に謝る必要はないでしょう」



 ウォールは続けて言う。



「ご苦労様です。当人達には、後で俺から伝えておきましょう。警部が謝礼に来たと」


「ありがとうございます」


「まあ、あの二人はそんなことは特には気にしないと思いますがね。自分に出来ることをやっただけだと」


「それでもです。この度は犯人逮捕にご協力頂き、誠に感謝致します。では、私はこれで」


「執事に見送らせましょう。屋敷内で迷わない為にも」


「ありがとうございます。以前、大丈夫だと断ってしまった時に、恥ずかしくも迷ってしまいましたから」


「はは、いや広すぎる家というのも考えものですな」



 ウォールは笑ったが、警部は堅物なのか笑みをこぼさなかった。笑顔が苦手なのかもしれない。


 ウォールが執事に言う。



「お見送りしろ」


「は」



 そうして、短い来訪は終わり、警部は屋敷から去っていった。



「相変わらず堅物だが、だからこそ信用できる奴だ」



 ウォールがつぶやいた。



 エインズ邸からの帰途。


 広大な屋敷を背後に、歩きながら警部は考えていた。



(そう、この街には犯罪が多い。捕まえても捕まえても、日々次々と犯罪が起こり続ける)



 王国の首都であることも、もちろん関係しているが。



(犯罪が多すぎる。安息の時がない程に。まるで……)



 そこで警部は小さく頭を振った。



(いや、余計なことを考えるのはよそう。俺は俺に出来ることをするだけだ)



 警察署では、今日も多すぎる犯罪が彼の帰りを待っている。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ