第20話 辺境の地での話し合い②
本日二度目の更新です。できてよかったです。
「どういった問題がもちあがったのですか?」
落ち着いた工藤の低い声が、スミレを促す。
スミレは目を閉じ、深呼吸する。
「どこから話したほうがわかりやすいのでしょう」
「まずは貴女の常人が持ちえない能力からお話していただければ」
「そうですね。そのほうが分かりやすいかもしれません。わかりました。私には人には視えないものが視えます。といっても幽霊等ではありません」
そう。人ではない。今まで幽霊は、視たことがない。
「私が視ているもの、それが実際存在するのかわかりません。頭が作り出している幻想かもしれません。視ていると思っているだけでしかないのかもしれません。ただ、それは私にいつも偶然ではないメッセージを伝えてくるというのも確かなんです」
「と言うと、例えばどのようなものが視えるのですか?」
「緑色の葉のようなものだったり。黒い毛玉のようなもの。形、色、動きなど本当に色々です」
わかりやすい例として、片桐に話した小さき黒きモノ存在を話した。不思議なもので人と話していると頭が段々整理されていくような気がする。
「それらはただ自分の存在を示すのではなく、自分に何かを伝えたいと思った時に姿を現す事が多いです」
そうだ。特に危険が迫っている場合だ。それは何もスミレ本人の危機だけではない。
「もしかしたら、私が受信できないだけで、彼らは私に常に話しかけているのかもしれません」
そして彼らがどうしてもスミレに気づいてほしい時、より強力な信号を彼らは送ってくるのではないか。
「私により鮮明に伝えたい時、予言のような夢を見る事もあります」
それは無視するにはあまりにも鮮明でインパクトがありすぎて。それでも無視していると。
「強烈な映像と音で、不幸な出来事が起こると通告をしてくるのです」
ただ、いつもそれは防ぎようもなく起こってしまう。
「なるほど。妖精もしくはそれに類するものが貴方に警告してくれるのですね」
工藤の声にスミレは現実に引き戻された。
どうやら自分の考えに少し没頭していたらしい。
「夢だけを考えれば、予知夢として予知能力があるのかと思いますが、貴方のそれは妖精があるいは精霊化かが、貴方の意識に干渉してみせているようです。予知は予知でも、特殊な分類になりそうですね」
「本当だよ!今までは分類できる力ばかりだったけど、面白いよね。まさに力は未知数。人の数だけ、色々な能力があるって事だね!」
が 碕森はスミレの話にはしゃぎまくりだ。
「それで、今、貴方が直面している問題はなんですか? なぜ今、急に動いたのですか?」
「ああ!また僕をまるっと無視する?!」
「何を視たのですか?」
スミレはそこで、片桐や香蓮に話した同じ内容を工藤に話した。
「なるほど。貴方の縁者で近いうちに亡くなりそうな方がいるとの警告を受け、その特定をしたい、という訳ですね」
「はい。今度こそ、その人を助けたいんです」
もう、何もできないと嘆きたくない。罪悪感を感じたくない。
「わかりました。それだけなら、少しお時間をいただければ、特定するのは可能でしょう」
「えっ! 本当ですか?!」
「ええ。私たちの組織に人の先を視れるものがいます。その者であれば、極近い将来に死を迎えそうな者を特定できるかと」
「そんな方がいらっしゃるのですか?!」
スミレは身を乗り出した。
「ええ。だからでしょうか。その者は、人と会うのを極端に嫌います。その為、会う事は諦めてください」
スミレは頷いた。
それはそうだろう。まれにわかるだけで、自分自身の根底が揺さぶられるのだ。会う者、会う者の寿命が視れたら、やりきれないのではないか。
「その者は人の寿命を視えにくくするような訓練を今しているところです。貴方の知人の名前と写真を貸してください。それで特定できる筈です」
なんと。会わずに、写真と名前だけで特定できるというのか。
自分にその能力があったら、気が変になってしまうのではないだろうか。
今回助けてもらうことで、その人の負担になると思うとこれも気が重い。
「あの」
「なんです。負担になりそうなのでやめますか?」
「いえ!」
申し訳ないが、誰に死がせまっているのか一刻も早く知りたいのも事実で。
自分にその能力が不足しているのが、何とも歯がゆい。
「今後、もしその方の手助けができる事があれば、ぜひ声をかけてください。私にできる限りの事をしたいと思います」
「伝えておきましょう。さて、これで死が迫っている人物を特定する目処はついた訳ですね。その後、どうするつもりです?」
「どうするって」
決まっている。
「その方の死を回避したいです」
「どのように? 素直に話して、信じてくれるますか? 少しでも注意を払ってくれるでしょうか? 貴方がいえば、信じてくれるのでしょうか?」
「!」
スミレはきつく唇を噛んだ。
前に同じような事があった。その時、実の家族にさえ、気味が悪いと罵られた。
「信じてもらえないかもしれません。それでも、助ける努力したいです」
「結構です。警告をしてもらえてるという事は、回避できる事柄なのかもしれませんからね。我々もできる限り協力しましょう」
「ありがとうございます。でもただの善意だけでは、全面的にバックアップはしていただけないのでしょうね。そちらが動く条件は?」
「さすがのご慧眼。わかっていらっしゃいますね」
当たり前だ。慈善事業をやるようには全く見えないのだから。
碕森の言動で、薄々彼の組織がどういった物かわかってきた。
「単刀直入に申し上げましょう。我々の組織に入ってください。そして我々の目的に力をかしてください。それが条件です」
「やっとあなた方の組織について話していただけるのですね」
スミレのいやみは綺麗にスルーして工藤は続ける。
「我々の組織、“辺境の地”は簡単に言ってしまえば、通常の人間が持っていない能力を研究し、商売につなげる事です」
「商売に?」
そんなこと可能なのだろうか。
「スミレさんも感じた事があるでしょうが、特殊な能力を持っていると、どうしても強烈な疎外感を感じて、社会に馴染む事が難しい」
確かに。能力については、人には滅多に話さないし、ばれるのが怖いから、人との接触をさけるのだ。人とは違う事のコンプレックス。もしくは強烈な孤独感を感じる。
加え、もし知られて忌避された時の、強烈な胸の痛みは、感じた者にしかわからない。
「それでも社会で生きていかなければならない。だから我々は彼らの能力を生かした商売を確立して、彼らに生やすような環境を整えたいと思っているのですよ」
「その事を思うようになったきっかけは?」
「親しい者が能力者で、彼らを理解したいと思ったからですね。この代表が。私はそれに賛同したわけです」
「そう!僕は愛する者を理解したい!のびのびと生きて欲しい!そう思ってこの組織を立ち上げたのさ!」
碕森は立ち上がって力説する。
「残念ながら、僕にはほどほどにしかお金がないからね。生きていくためにはお金がいる。ならば、能力を生かして稼げばいいだけの事さ! さあ、スミレくん、僕らと一緒に進もう!神から授かった力を高めて、幸せになるんだ!」
差し出された碕森の手を、スミレは疑わしげに見つめた。
自分の話もそうだが、相手の話もそうだ。
どうして言葉にすると、こうも胡散臭く感じるのか。
まるでそう感じるようにされているような気がしさえする。
「実際、私たちの組織は日々研究を重ねている。1人、いや失礼、2人で悩むよりはるかに解決する可能性が高いように思うよ。そして今回の件だけではなく、未来にも同じような問題が出てくるだろう。その時にも、私たちは力になれると思う。どうだろう。悪い話ではないと思う」
工藤の言に、スミレは内心で頷いた。
確かに。自分は今まで何もして来なかった。
それに比べたら、きっと何倍も彼らは情報を持っているだろう。
「もし組織に入ってくれるのなら、少々環境の変化が必要になる」
「君の能力を研究するために、学校を変わってもらう。組織の近くにいないと不便だからね。こちらの指定する学校に転入してもらう」
「転校、ですか?」
「はい。学校は全寮制です。住む場所も変わってもらいます」
それは多少の変化ではないのではないか。
転校など果たしてできるのか。
香蓮を説得できるのか。
「人の命を助ける代償には、大きすぎるかな?」
「!」
スミレは息を飲んだ。
工藤がずばりと切り込んで来る。
確かに人の命を助けられず、生涯苦しむのなら、転校など安いものかもしれない。
「わかりました。その条件でお願いします」
工藤が手を差し出す。
「よい返事をもらえてよかった」
スミレも多少抵抗を感じながらも、その手を握り返した。
「それとこれはお願いになりますが、君の父君をこの件に関わらせないようにして欲しい。君の父君は力を持っているから、絡まれると困ります」
「それは大丈夫です。父は私には無関心だと思います。でも、転校するとしたら、一度話にいかなければならないので、組織の事は伏せて伝えておきます」
「ありがとうございます。さて、スミレくんの事は決まりましたね。では、片桐くんはどうしますか? 聞いたところによると、彼も能力持ちだとか」
工藤は、スミレの横にいる片桐を見つめる。
「そうなんだよ! 彼女を守ろうとする彼の心が力になったんだね。まるで姫を守るナイトのように!」
ナイトかどうかは別にして、彼が力を発現したのは、先ほどの一度のみ。
少し無理があるかもしれないが、火事場の馬鹿力の類いが大きく出たのかもしれない。
「彼の能力は一時的なものかもしれません。だから」
「スミレが組織に入るなら俺も入る」
スミレの言葉を遮るように、今まで黙っていた片桐が口を開いた。
「片桐くん!?」
そんなのだめだ。彼は巻き込まれただけだ。こんな危険な組織に彼は入る必要はない。
彼は糀ケ石高校では、成績優秀で特待生にまでなっている。このまま進めば、よい就職先も得ることができるだろう。
「入る」
片桐の瞳は揺るがない。短い付き合いだが、こうなったら、彼は頑固だ。
スミレは大きく息をついた。
「3日、時間をください。彼の事も含め、今後について、叔母に相談します」
自分の心はすでに決まっているが、香蓮を抜きに事は進められない。
「ええ。了解しました。そうしてください」
一段落ついて、スミレはつい愚痴を零した。
「それにしても、もう少し穏便に話を進められなかったのですか?」
今までの経緯を考えると、碕森が率いるこの組織に、叔母が好印象を抱くとは思えない。
むしろマイナススタートである。
「僕らが真正面から現れたら、君たちは話を聞いてくれたかな?」
碕森がチッチッと指を横に振る。
確かに。怪しすぎて、追い返しただろう。
それどころか警察に通報していたかもしれない。
スミレの顔に答えを見つけたのだろう碕森は続ける。
「交渉の時間を短縮するためには、これが一番有効なやり方なんだよー。まずは僕たちの力を見てもらうのも兼ねてね」
百聞は一見にしかず。
多少強引でもやり方が有効であったと、不承不承にだが、認めざるおえなかった。
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