第十三話 脱出1
映画ではよくバールなんかを使ってこじ開けるシーンがある。あれを真似することにするが、ここにはバールのような物はない。あって鉄パイプだが劣化が激しい。一本ならテコの原理を使った際にぽきりといってしまいそうだ。
しかしあるだけの道具で何とかするしかない。俺は積み上げられたパイプを二本手に取る。一本でダメそうなら二本だ!安直な考えだがそれしかないのだから仕方がないだろう。
しかし丸い鉄パイプでは扉に差し込めない。隙間に入れるには大きすぎるのだ。
ならば入るようにするまでだ!
俺は鉄パイプ二本を床におき、煉瓦を持ち上げた。両手で思いっきり持ち上げないといけないくらいには重い。頑張って運び、それを鉄パイプの上へと落とした。ガンッ、という音をたてて鉄パイプの端がつぶれる。音で誰か来ないか気が気じゃなく、しばらく扉の方へと全神経を向けたが異常はない。変わりなく静だ。
よし、今のうちだ。
俺は先がつぶれた鉄パイプ二本を持って扉へと向かう。扉の隙間に入れてみるが、なんとか入る程度で押し込まないといけない。これにも煉瓦を使おう。
煉瓦を一生懸命運び、これまた渾身の力で持ち上げ、釘を打つ要領で扉に鉄パイプをねじ込む...というより本当に打ち付けた。音が出るのは仕方ないが、音を出した度に作業を止めて辺りの様子を確認するため、作業効率は悪い。自分の命がかかっているのだ、これくらい慎重でもいいだろう。
なんとか扉に少しだけ鉄パイプを捩じ込めた。一本だけ。二本目は折れたときにすぐに変えられるように用意したのだ。
よし、あとはテコの原理だ。正直鉄パイプの強度が心配だが、俺は刺さった鉄パイプを扉の錆びたサッシを力点にして思いっきり作用点となる変形していないパイプの端を押した。
テコの原理といっても、鉄の扉をこじ開けるにはなかなかの力が必要だ。かなりの力を入れたが、扉はぐにゃりと変形したくらいでサッシから外れることがない。そして力を入れすぎたため、案の定ぽきりと鉄パイプがおれた。力をかけていたため、俺は体勢を崩して転ぶ。
「いってぇ!」
思いっきり転んで胴体が痛い。思わず声が出てはっとする。慌てて扉に耳を当てるが、声は聞こえない。
...よかった。なんとか気づかれていないようだ。しかし何度もそううまくいくわけがない。
歪んだ扉の隙間から少しだけ外が見えるようになる。そこから中を覗くと、まっすぐコンクリの廊下が繋がっていた。一直線だ。曲がり角が見えない。
これは...出たら速攻走って曲がり角を見つけないと、最悪敵が同じ廊下にいたら丸見えだ。
ここまで来てやめるわけにもいかないので、やるしかない。扉は歪んでいるがまだ少しだ。しかし幸運にも南京錠がかかっていない、閂だけだ。子供一人監禁するにはこれくらいでもいいだろうと思ったのだろう。これなら隙間に腕が入れば閂をはずせる。あと少しだ。
俺はもう一度鉄パイプを先程できた歪みに突き刺した。今度はさせるくらいに広がっているから煉瓦の出番はない。これならいけるかもしれない!
ゆっくりゆっくり歪みを広げていく。必要以上に歪めなくていい、せめて俺の腕が通ればいい。先程同様に力を込めて変形させれば、子供の腕が入るくらいの隙間を作ることができた。
閂の作りはどこも同じ...はずだ。なんとか手を伸ばして閂に手をかけると横へスライドさせて閂を外す。先程見張りがきたときに開け閉めしたからか、閂は錆びていたが引っ掛からなかった。
もう一度隙間から人影かないことを確認して俺は扉を開けようとした。が、当然歪んでいるためなかなか開かない。
ここに来てもう一度煉瓦の出番だ。煉瓦をハンマー変わりにして扉を叩き、ほとんど壊す勢いで扉を開けたのだ。
...最終的には力業だ。子供でも煉瓦投げればそれなりの威力にはなるだろ?というわけで思いっきり煉瓦を投げつけた。音は出ているが回りに人の気配がない事をいいことに結構はでに投げつけることができた。
こうして俺は、ようやく扉を開くことができた。




