表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/71

兆し

「お帰り先生。」


 玄関にはちょうど、荷物をどさりと置いている先生の姿があった。先生はこちらを見ると、豪快に笑う。


「ただいま、バル。相変わらず早起きだな。」


 口調やら声は、そんなに緊迫した様子はない。ただ単に早く帰れただけだろうか?


 そう思っていたが、急に先生の顔つきが変わった。着替えて武装したスクリトフが、二階から降りてきたからだ。


 何やら、空気がはりつめる。


「悪いな、バル。ちょっとスクリトフと話があるんだ。」


 席をはずしてくれ、と言わなくても伝わった。子供には聞かせたくない内容なのだということはわかる。


 先生は笑っているが、決して心穏やかという訳でもなさそうだ。


「わかった。朝飯、冷蔵庫にあるから。」


 俺は控えめに笑い、先生に心配をかけないよう、自分の部屋に戻る。


 去り際に、スクリトフと目をあわせる。後で内容教えてくれと言うアイコンタクトなのだが、伝わるかは微妙。


 伝わらないならそれで直接聞くまで。


 今は話の邪魔をしないよう、俺は静かに部屋の扉を閉めた。


 聞き耳をたてるが俺の部屋は玄関から一番遠いため、ほとんど声が聞こえない。


 待つこと、10分。部屋にノック音が響く。俺が返事をする前に、すでに先生が扉を開けてしまっていた。


「悪いな、バル。待たせちまって。もう終わったぞ。」


 にやりと笑う先生は、ベッドに座っていた俺の頭をわしゃわしゃと撫でた。


「あれ、先生。スクリトフは?」


 見たところ、先生の姿しか見えず、首をかしげる。


 他に人の気配もなさそうだが...まさか…。


「ん?あぁ、スクならもう出掛けちまったよ。ちょっと早く出ていかないといけない用事があったらしいぞ。」


 やっぱりか。先に出ていかれては、今日の話の内容は聞けそうにない。


 気になるところだが、後日聞くとしよう。先に出ていったのも、恐らく先生の話が原因だろうし...。


「そっか。ならいい。皆起こしてくる」


 俺はベッドから跳ねるように起き上がると、元気よく廊下へと駆け出した。


 スクリトフがいなくなった途端に元気がなくなれば、怪しまれそうだからな。


 元気よく駆け出したついでに、俺はそのままの勢いでクリスの部屋を直撃するのであった。


 ※※※※※※※※※


「ん?今日の買い出し?なにも買ってきてないぞ?」


 朝14時。子供たちと朝食を囲いながら俺は先生に訊ねていた。


 俺の隣では早食いして喉をつまらせて暴れているクリスがいるが、水を差し出すだけ差し出して後はスルーだ。


 クリスは多分、食い物で死なないような気がするので、これくらいの対応で大丈夫だろう。


「もうパンがないんだ。それに、パン以外の食料も。」


 俺の言葉に、げっ、と言いたげな顔になった先生。


 すぐさま冷蔵庫やらを確認。俺の言葉に嘘がないことを確認して、肩を落とした。


「しまった。確認し損ねてたな...これじゃ、明日なんとか持つくらいか。」


 うーんとしばらく考え込む先生。明日のご飯がないかもしれない、という事を悟った子供達の目が、一瞬にして輝いた。


 理由は、ただ一つ。


「なら街に買いにいかないと!」


 シェーナの言葉にここにいた俺以外の子供たちが頷く。つまり皆街に行きたいのだ。


 気分的には遊園地にいきたがってるみたいな感じ。あまり家の外にでない分、余計だろう。


 思った通りの反応で、先生は苦笑いを浮かべている。


 正直あまり連れ出したくはないのだろう。子供五人を連れてゾンビ地帯の横を通るのだ。


 守る大人の立場からすればとんでもないリスクだ。子供達を外に連れていってあげたいという親心と、危険にさらすわけにはいけないという警戒心が、入り交じった顔をしていた。


 しかし現状、食料がなければ困る。


 ましてや子供達をおいて街に行くなんて論外だ。先生は諦めたように頭をかいた。


「仕方ない、街に買いに行くか。」


「「やったぁぁ!」」


 シェーナ、クリスがガッツポーズを浮かべている。なんだろう、すごく都合がよすぎるよな...。


 ちょうど先生が在庫確認を怠り、俺も直前まで気づかず、買いにいかないといけない状況になってるって。


 まさか、な。うん。ただの偶然、だよな...?


 そんな俺の考えなど知りもせず、クリスたちは食事を続けていた。


 ただし、クリスだけなんだか食欲がなさげだ。もう腹がいっぱいなのかな?


 不思議に思うも、俺も食事を続ける。先生の準備もあり、俺たちは昼頃出発することとなった。


 昼より夕方の方が危ないと思われるが、実は日が落ちてからの方が道の明かりがあって、森はとても明るくなる。


 ゾンビ、もといパラウスも出にくいのだ。森の奥に入ったら襲われるけど。俺みたいにな。


 そういうわけで、俺たちはさっさと飯を食って支度を始めるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ