第7話 賢者は森で修行する 一日目③
しばらく西へ進むと、目の前には大きな崖が壁のようにそびえたっていた。
どうやらこの先には、今の段階では進むことはできないらしい。
「この先は…この壁みたいな崖が続くみたいだね?」
「そうみたいだね。この崖沿いに洞窟とかあるといいんだけどね。」
レイアスは周囲を見渡し、何かないか探してみたが、拠点にできそうなものは見当たらなかった。
ジョシュアはこの崖に洞窟があるか探し始めた。
少し歩くとジョシュアがボソッとつぶやいた。
「先住民がいないことを祈るよ。」
「兄さん…それ言うと…絶対いるやつだよ…」
「うっ…。き、気を付けて探そう。」
二人の顔が若干青ざめていく…
気合を入れなおし探索を再開した。
「あ、あそこに穴がある。」
レイアスは少し遠くにある洞窟を見つけた。
入り口の大きさ的にもちょうどいいよう見思えた。
「うん、気配的には何もいない…違う、いるね…」
「魔物?」
「たぶん動物だと思う。殺気が感じられない。」
ジョシュアは外から魔物の気配を探ったが、特に見られなかった。ただ、動物の気配だけがするのだった。
「じゃあ、行ってみよう。熊とかなら倒して今日の食糧だね。」
「レイアスは逞しいね。」
レイアスは考えても仕方ないとばかりに洞窟へ向かった。
それを見たジョシュアはある意味レイアスを尊敬してしまった。
「ほら、師匠達がああだったから…」
「うん…いこっか。」
レイアスは、ジョシュアの問いかけに、師匠のせいだと答えた。
レイアスの答えに納得してしまったジョシュアなのだった。
一方そのころ森の入り口で待機していた師匠二人は大いにくしゃみをしたそうだ。
レイアスは洞窟の入り口で【詠唱】を開始した。
≪我願う。わが前に光の導きを。≫
「【光源】」
「やっぱり熊さんだね。」
光源で照らされた先には一匹の熊が横たわっていた。
「レイアス待って。あの熊弱ってない?」
そばにはいくつもの血痕が残されており、熊の生命が今にも潰えそうに思えた。
「本当だ…ケガしてるみたいだね。」
「兄さん…治療してもいいかな?」
「レイアスなら言うと思ったよ。でも、僕も賛成だ。」
本来であれば手負いの熊にとどめを刺すのが冒険者であろう。しかし二人はまだ8歳の子供だ。その決断をすることを強要するのは、酷というものだ。二人がしたこの決断が、この後のサバイバルに大きな影響を与えることを、この時の二人は知る由もなかった。
レイアスはケガをして動けない熊に向かい【詠唱】を開始した。
≪我望むは癒しの力。傷つきたもう彼の者に慈悲なる光を。≫
「【癒しの光】」
熊の周りに光の粒が集まり、包み込んだ。姿を現したとき熊のケガは治っていた。
「これでよしっと。」
「いつ見ても不思議だよね。回復魔法って。」
魔法の発動を確認したレイアスは小さくガッツポーズをした。
ジョシュアはレイアスの魔法を見て率直に疑問がわいてきた。
「それ言ったらポーションだって変じゃない?飲んでよし、かけてよし。傷口がうねうねしだしてくっつくんだから。いつ見てもあれは気持ち悪いよね。」
「確かにそれはそうだね。回復魔法のほうが見えないだけましかもしれないね。」
二人は熊が気が付くのをしばし待つのだった。
「うぅぅぅぅ~~~~!!」
傷が治り立ち上がった熊。その顔は困惑していた。その命が風前の灯火であったので、当然のことだ。熊は周りに自分以外の気配を感じ、とっさに威嚇をし始めた。
「そりゃ威嚇するよね。」
「そうだね。ここは離れたほうがいいかもしれないね。」
「熊さん!!もうけがしないようにね!!」
二人は威嚇をものともせず、洞窟を後にした。
「じゃあ、次の洞窟を探さないとね。」
「うん、だいぶ暗くなってきたから急がないと。」
レイアスは周りを見渡しながら洞窟を探し始めた。
ジョシュアも賛成しており、周辺警戒しながら同じく洞窟を探し始めた。
「がうっ!!」
すこしすると、後ろから突然何かの声が聞こえた。
慌てた二人は、辺りを警戒をしながら後方を振り返った。
「え?さっきの熊さん?」
「そう、みたいだね?」
ジョシュアは熊の存在に気が付いた。
レイアスもまた熊がいることに驚きを覚えた。
熊は二人が振り向くなり頭を下げた。そして振り返るとそのまま歩き始める。二人が付いてきていないのを感じた熊は一度立ち止まり、二人が動き出すのを待った。
「こっちにこいって言ってるみたい…」
「行ってみようか…」
二人は熊に連れられて、先ほどまでいた洞窟へ戻ってきたのだった。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
二人の心のやさしさがうかがい知れる階になったらいいなって勝手に思う作者なのであった…
誤字脱字等ございましたら教えていただけると幸いです
では、次回をお楽しみください。




