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セフィロトの書〜賢者は賢者と知らない  作者: 華音 楓
学院編
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第15話 賢者は武術大会で無双できない④

 ルドルフとの一戦の後、ジョシュアとパトリックの快進撃が続いた。本来であれば、名誉としてSクラスが勝つはずであった。なぜならばそれが彼らの親の望みだからだ。

 しかし、ジョシュアとパトリックは違った。ダニエルの戦闘を見て、自分たちも負けてはいけないと感じたのだ。

 それからはまさに激闘だった。

 パトリックはその背負った大剣を振るい一人、また一人と打倒していった。

 ジョシュアに至っては圧巻の一言だった。おそらくはじめは手加減をするつもりだったのであろう。しかし、ダニエルの一件でその考えを捨て去った。この学院は実力主義をうたっている。それなのにもかかわらず、権力が横行しているのだ。ジョシュア自身権力を否定するつもりはない。しかし、それはむやみに振るうべきものではないと思っていた。だからこそ、ルドルフの行動には怒りを覚えてしまったのだ。


 そして、【武術大会】最終試合。ジョシュア対ルドルフの一戦となった。


「騎士爵風情がこの私にたてつくとはいい度胸だ。私のクラスメートの分まできっちりお仕置きをしてやろう。」


 尊大な態度で「お仕置き」と言い放ったルドルフだが、ジョシュアの態度が納得いかなかった。恐れるわけでもなく敬うわけでもない。そう、いうなれば無関心だ。


「ふぅ、無駄話はいりません。あなた様の胸をお借りいたします。」

「むっ?何とも…かわいらしい顔をしている。その顔を苦痛に歪ませたらさぞかし愉快であろうな…。」

「………。(この下種が)」


 ルドルフはこの時まで自身の勝利を疑ってはいなかった。王国騎士団の訓練にも参加し、自身の剣技を高め続けてきたのだ。

 そう、ルドルフは悪人ではない。あくまでも貴族主義階級主義なだけなのだ。自身より下の階級のものは自身に従えばいい。本気でそう考えているだけなのだ。


「最終試合。始め!!」

「では行くぞ!!」


 教師の合図とともにルドルフが先制攻撃を仕掛けた。いつも通りの上段攻撃。ルドルフの身体能力と剣技がいい待って、並みの子供では太刀打ちは難しいだろう。

 しかしジョシュアに焦りの色は見えなかった。


「安心してください…終わりです。」

「な、何?!」


 勝負は一瞬にして終幕した。

 ルドルフの首筋にジョシュアの剣が添えられていたのだ。

 そして、ルドルフは驚愕した。その剣筋が全くわからなかったのだ。いつ躱され、いつ添えられたのか。さらに、自身の腹部を見ると一度剣で斬られた後まであったのだ。

 あの一瞬でジョシュアは回避と胴の横薙。そして首筋への突きを行っていたのだ。


「降参していただけますか?」

「何をばかな…。」


 静かに降参を宣告するジョシュアに対し、ルドルフは納得できなかった。下級貴族風情に負けるわけにはいかなかったのだ。右手に持つ自身の剣で切り付けようと思った瞬間だった。


「では、その首…もらいますよ?」


 ジョシュアの冷たい殺気が、ルドルフの全身を襲った。今にもこの命が費えるのではないかと…、本気で感じたのだ。


「わ、わかった、降参だ。」


 ルドルフには、そこまでの気概は持ち合わせてはいなかった。これはただの【武術大会】。命まで掛ける必要などない、と自身に言い聞かせていた。


「勝者、ジョシュア!!」


 高らかにジョシュアの勝利を告げる教員の声に、訓練場の観客席は沸くに沸いた。この大会が始まるまではルドルフの勝利をだれも疑っていなかったのだから。

 ジョシュアは客席の声援にこたえるように手を振り、壇上を後人したのだった。


「ジョシュアのやつ、手加減する気すらなかったのか…。むしろ今までのは本気ではなかったってことか…」

「兄さんはあれでたぶん8割出してないですよ?」


 ジョシュアの戦いぶりに驚嘆するばかりだった。

 レイアスはというとジョシュアの実力を理解しており、当然の結果だとは思っていた。


「おいおい、レイアスも規格外なのにジョシュアも規格外って…」

「二人と縁を結べたことに感謝しないといけないね、パトリック。」

「その通りだな。」


 レイアスの言葉にさらに驚いたパトリックは言葉を詰まらせていた。

 ダニエルに至ってはすでに感想すら述べる気力もなくなっていた。


 全ての試合が終わり、表彰式となった。

 優勝はもちろんジョシュアであった。壇上にジョシュアが上がると、どこからともなく黄色い声援が巻き起こった。ジョシュアもまた、その声援に手を振ってこたえていった。間違いなく王子様と呼ばれても不思議はないくらいであった。

 準優勝は何とパトリックが決まった。本人もポイントを確認していなかったみたいで、一番驚いていた。

 ダニエルはルドルフとの一戦により負傷したため、棄権となった。


 三人の頑張りを見てきたレイアスは、やはり憤りを隠せずにいた。

 誰かにぶつけるわけにもいかない怒りは沸々と沸き上がり、そしてある覚悟へと導いていく。

 この時レイアスの進むべき道が決まったのだった。


「誰にも屈しない…そう、誰にも折れない。それが『俺の生き方』だ。」


 その言葉は誰かに聞かれるわけでもなかった。

 ただ空に向かって投げかけられた、天澤零〈あまざわれい〉としての覚悟であった。

ここまでお読みいただきありがとうございます。


サスジョシュサスジョシュな回でした。

ジョシュア君が本気で切れたらたぶん師匠達でもやばいと思います。

レイアス君が切れたら国が消えてなくなりそうです。

そんな二人はどうなっていくんだろうな…


誤字・脱字等ございましたらご報告いただけると幸いです。


感想・評価・ブクマいただけると作者は頑張れます。


では、次回をお楽しみください。


※ほかにもちょい読みシリーズ他作品掲載中です。頑張って毎日掲載しています。

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