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ふれられないもの  作者: 柳
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修学旅行とそれぞれの想い7

 

 旅行中の班決めを行い、旅行で必要になる物を休日に買いに行き、準備を進めていけばあっという間に当日を迎えた。


 昨日からクロは雪花の家にお世話になっている。知らない家に預けることに多少の不安はあったが、雪花の両親と顔合わせしてもクロは動じることはなかった。穂乃香から引き渡す瞬間も抵抗する素振りすらなく、雪花の母親の腕の中で大人しくしていた。嫌がれるよりはましだとは思うけど、少しばかり寂しくもあった。


「そういえば、二日目の自由行動って結局どこに行くことになったんだ?」


 いつもよりも静かな通学路を歩きつつ、二度目となる質問をしてみた。以前に尋ねた時はまだ決めかねていた。行きたいところが沢山あるから迷うのだと。


「金閣寺が最初。それから竜安寺に行って二条城で終わり」

「伏見稲荷大社はよかったのか? 行きたいって言ってたろ?」

「時間を考えると三つが限界みたい」

「まあ、そうだよな」


 パンフレットで見た伏見稲荷大社の鳥居には俺も惹かれるものがあった。他にも幾つかの候補を穂乃香から聞かされてはいたが、時間に限りがある。学校が定めた三ヶ所をまわり終わった後の時間は自由となっているものの、移動時間を考慮すればそれほど余裕はない。他に足を延ばそうとすれば一ヶ所に留まる時間が短くなり、気分的にも忙しなくなる。故に、三ヶ所で収めるのが基本となっていた。


「託も金閣寺に行くよね?」

「最後の方だけどな」

「逆になっちゃったね」


 どことなく寂しそうな声色だった。


「前もって行く場所を決めておけばよかったな」

「そうすれば一緒にまわれたかもね」


 既に何処を巡るのかは学校に提出しているので、直前の変更は出来ないことになっている。同じ京都内なのだから、と楽観的に考えていたが、そううまくは行かなかったらしい。


「まだ時間はあるんだし追々決めればいいよ。多少こっちの順番を変更すれば無理じゃないからさ」

「先生に怒られるよ?」

「怒られたってかまわないよ。常に見張られているわけじゃないし、証拠さえあれば多少の融通は許してくれるよ、きっと」


 修学旅行だからといって大目に見られる、ということは決してないだろう。多少のことであるならまだしも、予定を変更しての行動となれば何らかの罰があってもおかしくはない。


 旅行中万が一のことが起こり、教師が生徒の現在地を把握していなければ、例え現地にいたとしても対応できなくなる可能性がある。そうしたリスクを回避するために事前に行く場所を提出している。そう、言っていた。


 穂乃香も同じような注意事項を教師から聞かされている。それでも、それ以上のことは言ってはこなかった。悪いことだとわかっていても、俺と同じく一緒に京都をまわれる提案に惹かれているのだろう。すでに準備は整えている。問題は何もない。


 学校に着いて穂乃香と別れてからは流れるように時間が過ぎていった。各クラスごとに用意された大型バスへ乗り込み、しばらく揺られて東京駅に着き、そこから新大阪行きの新幹線で京都駅へ向かった。


 移動中は夕貴と他愛無い話をしたり、外を眺めたりして過ごし、出発から三時間ほどの移動を経て宿泊先のホテルに着いた。


 バックを受け取った後、一度ホテルのロビーに集められ、学年主任からホテルでの注意事項を聞き、事前に決められた三人部屋へ夕貴と滝椿と共に向かう。


 洋室だとしおりに書いてあった部屋は、いったって普通の部屋だった。ただ、三人分のベットが部屋の大半を占めていので全体的に窮屈な感覚があった。こんなものだろう、と思いつつ誰がどのベットを使うか決めてから食堂に向かった。


 昼食後ははクラスごとに清水寺を巡ることになっている。担任の先導のもと、各自適当なグループを作りつつ、バスと徒歩で清水寺に向かった。誰も彼もが浮かれいるようで、今日を楽しみにていたんだということが表情から窺えた。それは隣を歩く夕貴も同じらしく、見られない街並みを眺めていた。


「京都なんて初めて来たよ。不思議な感じ」


 もっと古風なイメージだった市内の中心は地元とそれほど変わらない。京都らしさはまだ感じないものの、地に足が着かないような感覚はあった。それだけでも、知らない土地にいることを自覚させられる。


 途中まではバスを使い、清水道で降りて細い道を人の流れのまま進んで行くと、緩い坂の両側にお土産屋さんが連なり、観光客の姿も多く一気に賑やかになる。そのまま坂を上り続けると清水寺が見えていくる。名所の中でも有名だと言われるだけはあって、清水寺から見た風景は綺麗だった。


「清水の舞台から飛び降りるつもりでって言うけど、飛び降りたら死ぬよね」


 縁に手を掛け、夕貴は下を覗き込んでいた。つられて見てみれば、確かに助からない高さだと思った。


 帰り道の途中にあるお土産屋さんを覗いたりしてホテルに戻った。知らない土地を見てまわるのは新鮮で楽しかった。ただ、隣に穂乃香のいないだけで物足りなくも感じていた。

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