失われた『家族』
優しい父様、母様。面白い兄様。
公爵家で生まれて、幸せな時間を過ごしたのは2年だけだった。
きっかけは2才の夏。
世話係のメイドにお気に入りの人形を壊されて泣いて、気づいたらメイドが死んでいた。
怖くて、怖くて、もっと泣いていつの間にか意識が途切れていた。
気づいたら知らない部屋に鎖で繋がれていた。
父様も母様も兄様もいない。
誰もいない。
ベッド、トイレ以外何もない部屋に1人だった。
怖くて泣いたら鎖から電気が流れてきてまた意識が途切れた。
目が覚めるとご飯が扉の前にあった。
鎖がギリギリ届く位置だった。
母様に会いたくて、助けて欲しくて、怖くて、悲しくて泣いたらやっぱり電気が流れてきてまた意識が途切れた。
泣くのが怖くなった。
でも、泣かなくても電気は流れた。
電気は恐怖などの『感情』がトリガーになっていた。
『感情』を押し殺した。
ただ、喜びなどの感情と縁が薄い環境だった事を考えるとそっち方面の感情抑制には耐性が薄かったかもしれない。
『感情』を殺してしばらくすると知らない人が来た。
久しぶりの『人』だった。
私は3才になっていた。
私は魔力が強すぎて泣いた時に魔力が暴走して家が壊れてしまったらしい。
魔力をコントロール出来ないと母様達に会えないと言われた。
その人から魔力のコントロールや魔法、言葉、色んな事を学んだ。
小さい体に大きな魔力。感情1つで不安定になり暴走してしまう。
家に帰りたくて必死に学びコントロール出来るように頑張った。
外に出れた時、私は6才になっていた。
久しぶりの家。
顔も朧気になってしまった母様達。
会えることを考えると嬉しくて、感情を抑えるのが少し大変だった。
母様達に会えた。
だが、怯えていた。
瞳に恐怖が宿っていた。
抱きしめてはくれなかった。
新しい家族が出来ていた。
妹だった。
家族団欒の場に私が姿を現すと空気が変わった。緊張が走っていた。
記憶にあった『家族』が失われていた。
1人で過ごすことが多くなった。
窓から見える『家族』の姿。
父親に見守られ、母親に優しく抱かれ、兄に頭を撫でられ、無邪気に笑う小さい少女。
私の中に小さな棘がささった。
私が電流に怯え、悲しみ、苦しんでいた時。
すでに私はいないものとされていた。
それでも感情は少し動くだけで現実をすぐ受け入れた。
幼少期に受けた電流の影響か、訓練のおかげか分からないが冷静でいられるのは有り難かった。
13才になり学園に入ることになった。
幼少期に起こした魔力暴走は大きな事件だったらしく私はやはり恐れられていた。
変わらず1人の時間が流れ16才、私にとって大きな転機となる出会いが訪れる。




