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その後輩、変態につきご用心  作者: ピピサビ


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後輩が変態な第一話

「もぉおぉぉ! あの時の雫ちゃんに戻ってよぉぉ」 福坂女学院、通称「福女」。

 その美術室に、今日も悲痛な先輩の声が響き渡っていた。

 「何言ってるんですか、和葉先輩。私はいつも変わらず、純粋無垢な乙女ですよ〜」

 雫が不思議そうな顔で言いながら、和葉のスカートをめくり上げる。

「じゃあ、いっつもいっつも何で私のスカート捲ってくるわけ!?……バカじゃないの!?」

 「っえ、何でって……今日のラッキーカラーを探しているんじゃないですか。

 今日は黄色なので、見つからなくて……」

 「うーん、今日は水色ですか……」と残念そうに呟く後輩に、和葉は顔を真っ赤にして叫んだ。

 「もぉ! 言わない! 捲らない!!」

 スカートを離した雫を和葉は追いかけていた。

 そんなドタバタを、美術部の部員たちは「今日も始まった」とばかりに慣れた様子で見守っていた。

 二年生の薫と一年生の泉希が、並んでキャンバスに向かいながら小声で話す。

 「ほんと、いつ見ても飽きないよね、あの二人」

「そうですね、薫先輩」

 やがて我慢の限界を迎えた部長が、定規を手に二人の元へ歩み寄った。

 「お前達、いい加減落ち着け」

 パシッ、という軽い音と共に、和葉の頭に衝撃が走る。

 「さぁ、みんな部活を始めるぞ。……和葉と雫は部活後掃除な」

 部長は表情一つ変えずにそう告げると、静かに自分のイーゼルに戻っていった。


 何で私だけ……和葉が呟く。

  その隣では、雫がケラケラと笑いながら自分の画材を広げていた。


  

 部活が終わり、夕陽が差し込む美術室。

 部長の姿が見えなくなった瞬間、和葉は箒を握りしめて大きく肩を落とした。

 「もー、今日も掃除当番じゃん! 雫のせいだからね!」

 雫はモップを片手に、にこにこと笑顔全開で即答した。

 「文句言いつつ本当は嬉しいんでしょ?先輩。

 今日も私と一緒で!」

 「そんな訳ないでしょ!ほらっ、手を動かす!」

 和葉の顔が一瞬で赤くなる。雫はくすくす笑いながら、和葉の横にピタリと寄り添った。

 「えー? でも先輩、さっきから私のことチラチラ見てるじゃないですか。

 『雫と二人きりになれて嬉しいな〜』って顔してますよ?」

 「してません! 絶対してない!

 むしろ迷惑なんだから!」

 「ふふん、照れ隠しが上手ですよね、先輩は」

 雫がモップをくるくる回しながら肩をコツンとぶつけてくる。

 和葉は「熱い、くっつくな!」と文句を言いながらも、結局その場から逃げなかった。

 後ろの方で片付けをしていた薫が、泉希に小声で囁いた。

 「相変わらずだね、あの二人」

「和葉先輩、いじられるの嫌いじゃないのに本人は自覚がないんですよね……」

 「聞こえてるよ!!」

 和葉が振り返って叫んだ瞬間、雫が後ろからぎゅっと抱きついてきた。

 「ほらほら、先輩。怒るとまた部長に怒られますよ?

 ね、二人で仲良く掃除しましょう?

 私が後ろから抱きついたまま床拭くの、どうですか?」

 「どうですか、じゃない! 離れろ、バカ! 効率悪すぎるだろそれ!」

 「効率より、先輩の温もりが大事ですもん」

 「そういう発言が一番問題なんだよ!!」

 結局和葉は雫に抱きつかれたままモップを動かす羽目になり、薫と泉希は笑いを堪えながら残りの作業を進めていた。

 夕陽に染まる美術室に、いつもの賑やかな声が響く。

 和葉は小さくため息をつきながら、心の中でそっと思った。

 (……まあ、雫と二人で掃除ってのも、嫌いじゃないけどさ)

 もちろん、そんな本音は絶対に口には出さない。 福女美術部の、騒がしくて、馬鹿馬鹿しくて、かけがえのない放課後。

 今日も静かに、明日へと続いていくのだった。


お読みくださりありがとうございました。

是非感想等頂けたらモチベーションアップになりますのでよろしくお願いします。

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