42-1・ガルダvs大魔会~リンクスの意地~4日目の同じ日
-山頭野川の西側河川敷-
「佐波木っ!」 「紅葉ちゃんっ!」
茨城童子によって、ザムシードと紅葉が闇に沈められた。ガルダ&リンクス&麻由は動揺をする。しかし、消えた仲間達を心配する余裕すら与えてもらえない。大魔会のリリスとギガントが、襲いかかってきた!
「くっ!葛城さんは離れてくれ!」
「はいっ!」
「君(佑芽)は槌使い(ギガント)を頼む!
ただし、スピードによる撹乱のみ!決して深追いはするな!」
「わ、解りました!」
戦力としてアテにしていたザムシードの脱落は痛い。大魔会の2人は、素人のリンクスで凌げる敵ではない。それでも、物理攻撃メインのギガントの方が、即死攻撃をしてくるリリスと戦うよりは生還確率は高いだろう。そう考えたガルダは、リンクスにギガントを宛てて、自分はリリスと対峙をする。
リリスとギガント、そして茨城童子。全てをガルダが倒す以外に、この窮地を脱する方法が思い付かない。
「ペース配分を考えている余裕は無さそうだな。」
意を決したガルダが、金色メダルをベルトの五芒星バックルに装填して、Hガルダへとパワーアップ!胸スロットに属性メダル『風』をセットして、妖槍を構え、リリスに突進をする!
一方のリリスは、クラーケンの能力を付加した『Kr』メダルをデスサイズの柄にセット!一振りで十の刃が発せられる攻撃=アーキテウシス発動!
「おぉぉっっっ!!!」 「はぁぁっっっ!!!」
2つの気勢が上がり、互いの刃が激突!十の刃のうちの2発がHガルダに着弾!対するリリスには、風を纏った無数の刺突が着弾!数歩後退して、素早く構えを整えるHガルダ!リリスは、全身から火花を散らせながら弾き飛ばされて地面を転がる!
「うぅっ・・・今の攻撃・・・見えなかった。」
「俺は、装備のパワーアップを実力と勘違いするほど他力本願ではない!
ハイパーモードに相応しい技くらいは、自力で考えるさ!」
風属性でHガルダの機動力を上げて、妖槍による目に止まらない早さの無数の刺突を発生させる=奥義・サハスラブジャ(千手観音)。
「それに、その攻撃は、既に攻略されている。」
過去のザムシードとリリスの戦いで、ザムシードは、デスサイズが振り下ろされるタイミングをずらして、十の刃を不発させた。同様に、Hガルダは、最初の刺突をデスサイズの刃の当てて、致命打となる放線から外した上で、残りの無数刺突をリリスに叩き込んだ。だから、ガルダが喰らった2発の刃は、急所には程遠い。
「悠長に戦っている余裕は無い!」
リンクスの戦況をチラ見するHガルダ。指示された通りに、ギガントに対して、ひたすらスピード重視で走り回って攻撃を回避している。もうしばらくは、致命傷を受けずに戦いを維持できそうだが、裏を返せば、深追いをしていないのでギガントも無傷。このままでは、リンクスが消耗をして足が鈍ったところで連打を食らうのは確実だろう。
「決着を付けさせてもらう!」
Hガルダが気合いを発すると、背の翼が開いて輝きながら大きく広がり、風を帯びる!ハイパーアカシックアタック発動!助走から低空で飛翔をして、流星と化してリリスに突っ込んでいく!
「フン!このギガントを、些か舐めすぎではないかな?」
「なにっ!?」
リリスに襲いかかるHガルダの真上!ハンマーを振り上げたギガントが落下をしてきた!
「俺が、素人の無駄だらけの動きに翻弄されていたとでも思ったか?」
ギガントは、リンクスのスピードに撹乱をされていたわけではなかった。大魔会の標的は雅仁と紅葉。紅葉が消えた今、狙うはHガルダのみ。ギガントはガルダの作戦を見抜き、走り回るだけで射程圏に寄って来ないリンクスなどハナから相手にせず、ガルダに攻撃できる隙を待っていたのだ。
「おぉぉっっっっ!!消滅しろっっ!!!」
ギガントが握るサイクロプスハンマーの柄には、サラマンダーの能力を付加した『Sa』メダルが填め込まれている!サラマンダーバースト発動!ハンマーヘッドが灼熱の光球と化して、飛行中のガルダの背中目掛けて振り下ろされた!
「チィィッ!」
このままでは、ハイパーアカシックアタックがリリスの届く前に、直撃を喰らってしまう!Hガルダは咄嗟に翼を収納して、奥義を継続状態のまま飛行のみを解除!着地と同時に地面を蹴って、ギガントに飛び掛かりながら再び翼を広げた!
「回避が困難ならば、迎撃で相殺する!」
Hガルダの必殺技とギガントの必殺技が空中で衝突!爆発が発生して、共に弾き飛ばされて地面に墜落!激しいダメージにより、両者の変身が強制解除をされて、雅仁とアトラスの姿に戻ってしまう!
「咄嗟に相打ちに持ち込むとは・・・見事!」
「かろうじて死なずに済んだか!」
雅仁とアトラスは、痛む体に活を入れて同時に立ち上がり、互いを睨み付けながら再び変身メダルを翳す!しかし、デスサイズを振り上げたリリスが、雅仁の背後に襲いかかった!
「ふふふっ、隙だらけよ。貴方の魂・・・私のコレクションに加えてあげる!」
「しまったっ!」
振り返って、降りてくる刃を見て青ざめる雅仁!足を止めた状態なので回避不能!変身をしていないので、迎撃も不能!
「わぁぁぁっっっっっっっっっっ!!!」
ソウルイーター(魂狩り)を発動させたリリスの真横に、左右の手に妖扇・猫爪を装備したリンクスが突っ込む!
「戦いの素人かもしれないけど、私は戦力外じゃなぁぁっいっ!!」
奥義・ヘルクロウスラッシュ発動!五本の刃が装備された二枚一対の扇から放たれる五閃二連の斬撃が、リリスを直撃!リリスは悲鳴を上げながら弾き飛ばされ、地面を転がって、変身が強制解除をされる!
「くっ!小娘如きに、この私がっ!!」
「私の扱いが酷すぎませんか!?」
雅仁と、里夢&アトラスは、変身が解除された状態で、カリナは気絶中。戦闘状態を維持しているのはリンクスのみ。大魔会との戦闘は、一定の決着が付いた。
-同じ日が繰り返される世界-
異常性が確信に変わった燕真は、直ぐに粉木に連絡を入れて説明をするが、粉木は「特に不思議には思わない」と言う。
「そんなはずはない!」
改めて考えると、袂を分けたはずの師と、何故、【今までと同じ】関係を維持している?紅葉を討伐しようとしていた退治屋達は何処に行った?全て夢だったのか?
何か、重要なことから取り残されているような気がする。ジッとしていられなくなった燕真は、部屋から飛び出し、バイクに乗って、夜の文架市内を走り回る。
「どこかに異常が発生しているはずだ!」
しかし、何もかもが今まで通り。山頭野川の西側河川敷に、【数日前】に燕真と紅葉が闇に飲み込んだ八卦先天図が浮かんでいのだが、霊感ゼロの燕真では気付けない。
燕真は、宛てもなく、だけど立ち止まっていることができず、ひたすらバイクで文架市内を走り回った。焦りばかりが募る。
「くそぉっっっ!!どうなっているんだぁっっっっっ!!!」
遠い道路で響き渡るホンダ・NC750Xの走行音と燕真の叫び声を、聞こえるはずのない紅葉の自室で、紅葉が聞いていた。
「ダメだよ、燕真。これでいいんだから・・・。」
紅葉は、耳を塞ぐようにして布団に潜り込み、就寝をする。
飛び起きる燕真。周囲を見廻すと、そこは自分の部屋で、燕真はベッドの上にいた。
「・・・あれ?俺、バイクで走っていたはず。」
何度見廻しても、そこは自分の部屋。夢を見ていたのだろうか?枕元のスマホで時刻を確認したら、9時を過ぎている。
「・・・またかよ。抜け出せないのか?」
4日目の【同じ日】を迎えてしまった。YOUKAIミュージアムに到着をして、恐る恐る店に入ると、いつもと同じように、皆が開店の準備をしていた。
「おはよう。」 「早うはあれへんねん」 「おはようございます。」×2
「燕真~~!また遅刻だよっ!」
燕真は、開店準備には手を付けず、粉木に寄って行って近くの椅子に腰を降ろした。
「なぁ、ジイさん。やっぱりおかしいよ。
毎日、同じことしかできないんだ。なんで、不思議に思わないんだ?」
「なんも不思議なことなんてあれへんやろ。」
「だいたいさ、ジイさんは、俺を処分するつもりじゃなかったっけ?」
「朝から何言うてるんや?寝惚けてるんか?」
昨夜、電話で説明した時と同じで、粉木は現状への疑問を少しも感じていない。
「皆はどう思っているんだ?」
「君は、何に不満を感じているんだ?」
「変わらない何もかもだ!」
「極端な変化を望む佐波木さんが変なんですよ。」
「極端どころか、少しも変化をしないんだ!
葛城さんはどう思ってる?なんで4日連続で、朝一からバイトに来られる?
学校はどうした?部活はどうした?」
「休みだからお手伝いに来ているのですが、迷惑でしょうか?」
「・・・・・・・・・・・・」
一定の予想はしていたが、やはり、誰1人【繰り返し】を疑問に感じていない。
「このまんまでイイぢゃん。誰も迷惑してないんだからさ。
早く準備しないとお客さんが来ちゃうよぉ!」
紅葉の発した言葉に皆が同意をして、開店準備が再開される。燕真の疑問に誰も取り合ってくれないので、燕真は何も言えなくなってしまう。
「開店と同時に、紅葉目当ての客が2人・・・
その次は、近所の婆さんが1人・・・」
数日間の来客パターンを呟く燕真。その言葉通りに、駐車場で待っていた紅葉目当ての客が開店と同時に入ってきて、その20分後には近所の老婦人が来店をする。近くで聞いていた雅仁と佑芽は、燕真の予言が当たったことに驚く。
「え?何で解ったの?」
「偶然か?」
「そろそろ、葛城さん目当ての博物館リピーターが来る頃か?」
麻由に声を掛けて2階に上がる燕真。その直後に博物館の客が入館をしたので、麻由が驚く。燕真にしてみれば、【全部同じ】が4回目なんだから、覚える気が無くても覚えてしまった。
「凄いですね佐波木さん。予言ですか?」
「予言でもなんでもねーよ。何も変わらないんだからさ。」
自分だけが記憶を継承しているのなら、既に答えが解っている競馬やスポーツ振興くじで大当たりを狙えるのだろうか?
「ダメだろうな。多分、朝にはリセットされて、全部、夢になっている。」
そもそも論として、【繰り返される世界】に馴染む気の無い燕真は、この世界で得られる利益に興味が無い。
この一連で解ったのは、昨日の記憶を意識しているのは燕真だけ。他の連中は、【昨日の出来事が今日も起こる】を認識していない。
「繰り返しが作用しているのは俺だけ?」
皆が【同じ日の繰り返し】をしているのではなく、燕真だけが【同じ日】に閉じ込められている?
茨城童子が発した闇に飲み込まれたのは、夢ではなく現実?この世界は、茨城童子の影響下に落ちた燕真が見ている仮想世界?
「確認をする価値はあるか。」
燕真は、2階の業務を麻由に任せ、階段を駆け下りて店の外に飛び出し、バイクに乗って出掛けていく。雅仁&粉木&佑芽&麻由は「燕真の奇行」を呆然と見送り、紅葉だけは「昨日と違うことをする燕真」を不安そうに眺めた。
「この世界が、茨城童子の影響下ならば・・・。」
鬼印の作用で作られた仮想世界ならば、霊感ゼロの燕真には原因の究明ができなくて当然だ。
「幻装っ!」
燕真は、バイクを走らせながらザムシードに変身をする。途端に、周囲が薄い妖気に支配されていることを感知。今までは妖怪討伐時にしか変身をしていなかったので、薄い妖気は発生妖怪の妖気に紛れてしまい、気付けなかった。
「妖気は・・・どこから流れてくる?」
妖気の密度が高い方に向かってバイクを走らせるザムシード。文架大橋の真ん中を通過した時点で、発生源は予想できた。
「俺が、茨城童子の闇に飲まれた場所か!?」
『朧』メダルをハンドルのスロットに装填。ホンダ・NC750Xに朧車が憑依して、マシンOBOROに変化をする。
「OBORO、頼む!ワープ先は、茨城童子の妖気だ!」
マシンOBOROが口から妖気弾を発してワームホールを作る。ザムシードの予想が正しければ、山頭野川の西側河川敷に移動できるはず。どうせ、ただの思い付きだ。予想が外れたとしても、別の手段を思案すれば良いだけ。今は、何でも良いから試すべき時だ。
「うおぉっっっ!!正解してくれっ!!」
ザムシードは、マシンOBOROを加速させて、眼前のワームホールに飛び込む。異空間(黄泉比良坂)を経由して、数秒後に到着した場所は、ザムシードの予想通り、山頭野川の西側河川敷だった。
「・・・やはりな。」
マシンOBOROが出口に選択をしたのは、茨城童子の妖気。ザムシードが振り返ると、直径2mほどの鬼印が宙に浮かんでいる。予想が的中して誇らしい反面、こんなに堂々と発生していた闇の塊に今まで気付けなかったのが恥ずかしい。
「この鬼印の所為で繰り返される世界が発生しているなら・・・
これを浄化すれば脱出できるはず!」
鬼印が届く位置に立ち、妖刀を構えるザムシード!
「待ってよ、燕真!切らないで!」
「・・・え?」
背後で聞き慣れた声がした。振り返ると、紅葉が立っている。




