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41-3・刺客は大魔会~茨城乱入と鬼印

 何故、退治屋上層部は、妖怪を差し向けた?性急な紅葉討伐計画の意図はなんだ?


「大武COOに問い質すのが、一番手っ取り早そうだな。」


 成り行きに振り回されていた若者達の疑問が明確化をする。まだ暗中模索に近いが、一縷の光が見えてきた気がする。・・・だが


「ふふふっ・・・相変わらずの優等生ね、狗塚君。

 だけど、貴方達が、その先の事実を知ることは不可能よ。」


 振り返ると、堤防上に里夢&アトラスが立って、斜面の燕真達を見下ろしている。


「大魔会っ!?なんで、オマエ達が!?」

「大魔会躍進の為に、退治屋のトップに恩を売っておこうと思ってね。」

「上層部と組んだってことか!?」


 退治屋では、「狗塚家の約定」がある為に雅仁を攻撃できない。だから、大魔会を嗾けた。上層部は、若者達の声に耳を傾ける気が全く無いらしい。雅仁の感じていた疑惑が確信へと変わる。


「貴方達の魂、私のコレクションに加えてあげる。」

「蹴散らして、大武COOの思惑を暴く!」


 燕真&雅仁&佑芽が、紅葉&麻由を庇って構える!同様に、里夢&アトラスも構える!


「幻装っ!」×3

「マスクドチェンジ」×2


 妖幻ファイターザムシード&ガルダ&リンクス、及び、マスクドウォーリアリリス&ギガント、変身完了!

 ガルダはリリスとギガントの動きを警戒しながら、「この戦場を狙える高い場所」を見回した。


「気を付けろ!弓使い(ハーピー)の姿が見えない!

 こちらの隙を突いて、遠距離から仕掛けてくるつもりだ!

 魂狩りに対抗できる佐波木は、アサシン(リリス)を頼む!

 俺と佑芽ちゃんは、紅葉ちゃん達を守りながら、槌使いに応戦する!」

「燕真君と佑芽さんと葛城麻由は利用価値あり。可能な限り捕獲しなさい。

 他(雅仁&紅葉)は、要らないから殺して構わないわ。

「要は、銃使い(雅仁)と鬼娘(紅葉)を優先して仕留めるのだな!」


 マスクドウォーリア達は、ザムシードを無視して、一斉に紅葉に襲いかかる!思惑の裏をかかれたガルダは、「リンクス(佑芽)には即死攻撃スキルを宛てられない」と判断して、リリスと応戦する!リンクスは妖槌・ネコノテを装備して、ギガントのサイクロプスハンマーに対抗するが、力で圧倒されて弾き飛ばされた!


「クソ!狗の采配、いきなり的外れじゃねーか!」


 ガン無視をされたザムシードが、妖刀を装備してギガントに突進!ギガントは、リリスとガルダ&リンクス&紅葉&麻由の位置を確認しつつ、ザムシードの足音の接近にタイミングを合わせて、サイクロプスハンマーを振り上げた!


「里夢、飛べ!」


 ギガントの指示を受けたリリスが、漆黒の翼を広げて飛び上がる!直後に、ギガントが足元の地面にサイクロプスハンマーを振り下ろした!

 奥義・ノームクエイク発動!ギガントを中心に、半径30mの範囲に地震が発生!ザムシード&ガルダは体勢を崩し、リンクスは尻餅をついたまま動けず、紅葉と麻由は激しい揺れに抗えずに倒れた!



-少し離れたビルの屋上-


「ここだっ!」


 隠れて待機をしていたハーピーが、弓矢を構えて鏃を紅葉に向ける!付加されているのは、「矢が飛ぶ」という経緯を省略して、貫通という結果のみを発生させるオーキュペテーアローの効果!矢がハーピーの手から放たれた時点で、紅葉への命中は決定をする!


「他の連中を狙うのならば高みの見物をするが、

 御館様の入れ物を攻撃するならば見過ごせんな。」

「なにっ!?」


 紅葉を狙うハーピーの目の前に、闇の霧が発生!2本の腕が出てきて、右手で弓を掴んで照準を外し、左手でハーピーの首を絞める!


「ぐぁぁっっ!!なんだ、オマエっ!?」

「私は御館様の忠臣!」


 闇霧は人型を整え、茨城童子の姿になる!



-河川敷-


 ギガントが地震を発生させて、ザムシード達に隙を作り、紅葉を無防備にするまでは予定通り。しかし、紅葉を仕留める為のハーピーの矢が飛んでこない。


「ん?カリナの奴、何をやっている?」

「使えないバカ娘めっ!」


 体勢を立て直して構えるザムシード&ガルダ&リンクス。紅葉と麻由は、ギガントのノームクエイクを警戒して射程圏から離れる。リリスとギガントは、ハーピーが待機をしているはずのビルの方向を眺めて、我が目を疑った。


「我が主への姑息な狼藉は許さぬ!」


 茨城童子が上空で大魔会幹部を睨み付けており、その手には、変身が強制解除されたカリナが抱えられている!


「カリナが倒された?」

「ふん!初見では不可思議な魔力矢にしてやられたが、所詮は人間の動作。

 ハナから警戒をすれば、どうと言うことはあるまい。」


 抱えていたカリナを無造作に放り投げる茨城童子。気絶中のカリナは、何の抵抗もできずに芝生斜面に落ちた。


「生きていたのか!?茨城童子!」

「なんでアイツ(茨城童子)が俺達の味方を?」


 狗塚家にとって、酒呑の一派は仇敵。退治屋にとって、茨城童子は倒すべき敵。相容れるはずの無い存在。酒呑童子の魂は紅葉の中にあるからといって、鬼の副首領が紅葉に忠誠を尽くして助太刀をするなんて有り得ない。


「おい、狗。どっちを優先して叩けば良いんだ?」

「マスクドウォーリアですか?それとも鬼ですか?」

「・・・わ、解らん。」


 ザムシード&ガルダ&リンクスは状況を把握できず、呆気に取られたまま上空の茨城童子を眺める。

 一方の茨城童子は、都合良く紅葉が距離を空けていることを確認して、闇を灯した掌を戦場の中心に翳した。


「闇の衝撃波が来るぞ!備えろっ!」


 ガルダが不可能なことを要望してくるのは、テンパっている時だ!これは拙い!


「備えるたって・・・」 「・・・どうやって?」


 妖気乱舞発動!空間が茨城童子に掌握され、周囲に立ち込めていた妖気が衝撃波となって炸裂!リリスとギガントは、為す術も無く弾き飛ばされた!ザムシード&リンクスは身を屈めて抵抗するが、衝撃波に押されて後退!ガルダは浄化力を発動させようとしたが間に合わずに弾き飛ばされる!


「くそっ!茨城童子が助っ人をするなんて御都合主義が起こるわけがないか!」


 立ち上がって構えるザムシード!


「貴様等など眼中に無い。勝手に潰し合いでもしていろ。」


 茨城童子は、ザムシードには目もくれずに、紅葉の目の前に着地。麻由が震えながら庇おうとしたが、腕を掴んで投げ飛ばして退け、紅葉の前で片膝を付いて頭を垂れる。


「目覚めていただく術式の習得に些かの手間がかかってしまい、

 御館様の存在に気付きながら遅参したこと、謝罪致します。」

「んぇっ?おやかたさまって・・・ァタシ??」

「今、その手狭な入れ物の中から開放して差しあげます。」

「んぇっ?てぜまな入れものって・・・ァタシ??」


 顔を上げて紅葉を見つめ、呪文を唱えて掌に鬼印を発生させる茨城童子!紅葉の腹に目掛けて、鬼印を放つ!


「うおぉぉっっっっ!!!結局は、どいつもこいつも敵ってことかっっ!!」


 警戒をしていたザムシードが飛び込んで紅葉を庇い、茨城童子が発した鬼印の盾になる!


「ふん!愚かな!」


 紅葉を救いたい一心で割って入ったザムシードだが、肥大化をする鬼印を消すことも抑え込むこともできない!


「この茨城童子が、習得に手間取ったのだぞ!

 貴様如きに処理をできる術式ではない!」

「うわぁぁっっっ!!!」

「これは、小娘を破壊して、御館様を開放する呪い。

 人間を消し去り、妖怪のみを残す。

 貴様は闇に飲まれて死ぬ為に来ただけだ!」

「え、えんまっ!!」


 為す術も無く、鬼印が発する深い闇に飲み込まれていくザムシード!紅葉がしがみついて引っ張ろうとするが、止められない!


「バカ、紅葉!離れろ!このままじゃオマエまで!」

「イヤっ!燕真が消えちゃうなんてダメっ!ァタシが助・・・んわぁぁっっ!」


 抗う手段は無かった。ザムシードと紅葉は闇に飲み込まれる。


「佐波木っ!」 「紅葉ちゃんっ!」


 ガルダ&リンクスが駆け寄るが、そこには闇が浮かんでいるだけで、ザムシードと紅葉の姿は無い。



「うわぁぁぁぁっっっっっ!!!」


 飛び起きる燕真。周囲を見廻すと、そこは自分の部屋で、燕真はベッドの上にいた。


「・・・あれ?俺、闇に飲まれて死んだんじゃ?」


 何度見廻しても、そこは自分の部屋。茨城童子やリリスの姿は無い。「気絶して夢でも見てる?」と頬を抓るが、ちゃんと痛い。今見ているのが夢ではないなら、戦って死んだのが夢だった?スマホで時刻を確認したら、9時を過ぎている。


「やっべぇ!寝坊した!」


 慌てて着替えて部屋から飛び出し、愛車のホンダ・NC750Xに乗ってYOUKAIミュージアムへと向かう。

 店に到着すると、既に、雅仁&粉木&佑芽&麻由、そして紅葉が開店の準備をしていた。


「おはよ~っす。」

「おはよう。」 「早うはあれへんねん」 「おはようございます。」×2

「燕真~~!また遅刻だよっ!

 なんで遅刻したの?遅くまでテレビ見てた?ゲームしてた?

 ァタシゎ3時までスマホのゲームしてたけど、遅刻してないよ。

 ァタシって、スゴくね?」

「朝からウゼー。」


 いつも通り、紅葉が纏わり付いてくる。


「腹減った~。朝飯は?」

「遅刻したんだから、あるわけないぢゃん。全部食べちゃったよ。」


 燕真は紅葉に絡まれながら開店準備をして、オープンと同時に、いつも通り2階に上がって受付に収まる。2階博物館の担当は、燕真(受付のみ)と麻由。数ヶ月前までは、誰からも興味を示されなかった博物館だが、麻由がギャラリーアテンダントに就任してからは、彼女の解説を聞く為の客が訪れるようになった。


「ね~ね~、燕真。ァタシが目を離してる隙に、麻由と変なコトしないでよね。」

「しないよ!客がいるのに、どうやって変なことするんだよ!?」

「んぇぇっ!?だったら、お客が居なかったら変なことすんの?」

「しないっての!」


 紅葉は1階の喫茶店担当なのだが、繁忙・閑散に関係無く、たびたび2階に上がって燕真に絡む。

 喫茶店担当は、紅葉の他に、雅仁と佑芽がいる。どちらも、何事も卒無く熟すタイプなので、紅葉が職場放棄をしても、紅葉目当ての客が不機嫌になる以外には特に問題は無い。ただし、かきいれどきに紅葉が戻って来ないと手が足りないので、佑芽が階段室に行ってヘルプを出す。


「紅葉ちゃ~ん!降りて来て~~!!」


「おい、紅葉!呼んでるぞ!下に行け!」

「んぇ~~・・・今、忙しいのに~。」

「忙しいのは茶店だ!ここで無駄話をしているオマエは忙しくない!」

「私が代わりに下に降りましょうか?」

「ん~~~・・・ァタシが行くぅ~。」


 紅葉が1階行きをゴネると、見かねた麻由が気を利かせて代わりに手伝いに行こうとするが、麻由に仕事を奪われるのはプライドが許さないらしく、紅葉は渋々と応じる。


「またあとで遊びに来るね、燕真っ!」

「来なくて良い!下でちゃんと働け!」


 紅葉を2階から追い出した燕真が、疲れた表情で溜息を付く。ぶっちゃけ、博物館の仕事(受付に座ってるだけ)よりも、紅葉の相手の方が疲れる(まぁ、当然だけど)。



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