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33-1・ガルダ容赦無し~リンクス逃亡

 契約者と霊魂スペクターの融合。青い霧に覆われた佑芽が、一瞬だけ礼奈の姿に変わり、直ぐにリンクスへと変化をする。


〈ソイツ等をやっつけて!お姉ちゃん!!〉


 両手の妖扇を構えたリンクスが、ザムシードとガルダに向かって突進!ザムシードは裁笏ヤマを(木製ナイフ)構え、ガルダは鳥銃・迦楼羅焔をリンクスに向けて光弾を発砲する!

 リンクスが横飛びで光弾を回避しつつ、扇を振るって突風を放つ!重心を落として凌ぐザムシードとガルダ!リンクスは左右の扇を同時に振って、5本×2扇のクナイを飛ばす!


「チィッ!」 「来たっ!」 


 横跳びで、5本のクナイを回避をするガルダ!ザムシードは迎撃をするが、2本を打ち返し、残る3本を喰らって弾き飛ばされた!


「にゃぁぁぁっっっっっっっっ!!!」


 10本のクナイは左右の扇に戻り、両扇を振り上げたリンクスが、立ち上がった直後のザムシードに突進をして、左右の扇を交互に叩き込んだ!悲鳴を上げ、再び弾き飛ばされるザムシード!


「佐波木っ!」


 追い撃ちを掛けようとするリンクスに向かって、ガルダが光弾を発砲!リンクスは扇を盾にして光弾を受け止めつつ、素早く後退をする!


「ソイツ(リンクス)の瞬発力には警戒しろと言ったはずだ!」

「警戒はしてたけどさ・・・攻撃に勢いが、急に変わりすぎだろ!?

 さっきまでの妙な戸惑いは解消されたようだな!」

「・・・らしいな。こちらとしても、その方が戦いやすい。」

「本気で戦うのか?知ってるヤツなんだろ?」

「関係無い。死者の冒涜は外法だ。

 死者リンクスは、本来の姿に還さねばならない。」


 里夢は、リンクスの動きに迷いが無くなったことに安堵をしていた。


(予想通り、融合させてやれば、依り代の意思が直通状態に成り、

 スペクターは自由を奪われて、反発は解消されるようね。)


 粉木は、「自分も騙された被害者」のはずなのに、場違いな笑みを浮かべた里夢の表情を見逃さない。


〈アイツが・・・鬼退治専門のアイツ(ガルダ)が、ちゃんとしなかったから、

 お姉ちゃんが作戦に引っ張り出されて、犠牲になったんだよね?

 先ずは、無能なアイツ(ガルダ)をやっつけよう。〉

「違う・・・違うの、佑芽。こんなことはやめて。」


 リンクスはYウォッチから属性メダル『斬』を抜いて、右の妖扇に装填。扇に仕込まれた5本の刃が40センチほど(脇差しサイズ)に伸びた。

 一方のガルダは「接近戦に縺れ込まれたら不利」と判断して、鳥銃を腰のホルダに戻し、妖槍・ハヤカセを召喚して構える。


「情は無用!君は下がっていろ!」


 左扇の5本のクナイを飛ばすリンクス!ガルダは妖槍を回転させて弾き飛ばした! クナイは左扇に戻り、リンクスは突進しながら、刃の伸びた右扇を振り上げる!


「にゃぁっ!!」


 リンクスが振り下ろした右扇の長い刃と、ガルダの妖槍がぶつかる!直後にリンクスが突き出した左扇の5本クナイがガルダに叩き込まれる!


「はぁぁっっ!!」 


 ガルダはダメージを堪え、穂先でリンクスの右扇を上に弾き上げながら妖槍を回転させて、石突きをリンクスの脇腹に叩き込んだ!更に、体勢を崩したリンクスを蹴り飛ばす!

 弾き飛ばされたリンクスは、空中で体を捻って体勢を立て直しながら着地!直ぐに再突進をする!


「身軽だな。・・・だがっ!」


 ガルダは冷静にリンクスとの距離を測る。今まで、リンクスは、ガルダの槍やザムシードの短刀の攻撃圏外(距離にして10~20m)で、突風を発したりクナイを飛ばし、防御をしている間に身軽なフットワークを駆使して距離を詰め、接近戦に持ち込んできた。

 つまり、リンクスがクナイを飛ばすタイミングは、「リンクス自身が攻撃を受けない」と判断した距離になる。


「君のクセは理解した!」


 突っ込んでくるリンクスに向かって突進をするガルダ!互いが動いたことで、リンクスが5本クナイを飛ばそうとする距離が、10mよりも詰まる!

 リンクスの安全圏と判断した距離を潰して死地にする!それが、ガルダの作戦!ガルダが突き出した妖槍の穂先が伸びて、突進してきたリンクスの腹に突き刺さった!


「くっ!」


 押し戻され、数歩後退して片膝を付くリンクス!ダメージを受けた腹から、青い霧が上がる!


「おいおい、知り合い相手に、容赦無しかよ!?」

「容赦をしている余裕など無い!」


 ザムシードの問いに対するガルダの回答は正論だ。知り合い云々以前に、パワーアップをして本気で襲いかかる相手に、手を抜いて戦う余裕なんてあるはずが無い。

 これが生者同士の戦いならば、今の一撃で、リンクスは今まで通りの動きができなくなり、決着が付くのは時間の問題だろう。だが、相手は生者ではない。まだ決着は付いていないと判断したガルダは、腹を押さえて蹲るリンクスに、妖槍の歩先を向ける。


「まぁ・・・そうかもしんないけど。」


 ザムシードは頭では理解している。だが、何かが心に引っ掛かって納得できない。


(ただ、お姉さんを嗾けているだけでは、勝てないわよ佑芽さん。

 お姉さんの無念を晴らす為に、アナタの霊力も上乗せしてあげなさい。)


 里夢が、もう一段階上の要求をした途端、リンクスの中の佑芽の眼が冥く濁った。


〈・・・はい〉


 佑芽が全身から霊力を発する。佑芽の霊力は、霊体の礼奈と混ざり合う。


〈もっと頑張ってよ、お姉ちゃん!私が力を貸してあげるから!〉


 リンクスのダメージが回復をして、両眼が輝き、更なる妖気が発せられる。


「チィ・・・依り代を止めなければならないか。」


 ガルダは容赦をせずに戦っているが、依り代の佑芽が死なないようには心掛けていた。だから、妖槍のカウンターは、頭や胸ではなく、傷を負っても癒やせる腹を狙った。だが、それでは戦いは終わらない。依り代の命を優先させるのではなく、問答無用で依り代を卒倒させる一撃が必要だ。


「はぁぁっっ!!」


 突進するガルダとリンクス!ぶつかる妖槍と妖扇!ガルダがリンクスの妖扇を弾いて妖槍を振るうが、リンクスは素早いフットワークで回避!ガルダは穂先を伸ばしてリンクスと捉えようとするが、手の内を読まれており、穂先に右妖扇を当てて受け流され、左妖扇からクナイが射出されてガルダに着弾!


「にゃぁっ!!」


 体勢を崩したガルダに突進をするリンクス!しかし、その背後から、自動操縦をされたガルダの愛車・マシン流星(ヤマハ・MT-10)が突っ込んできて、リンクスに体当たりをして弾き飛ばす!


「俺は闇雲に武器を撃ち合わせていたわけではない!

 マシン流星が機動するまでの時間を稼いでいたのだ!」


 マシン流星が変形をして、カウルが開いて砲身が出現!妖砲イシビヤに姿を変える!ハンドルを握ったガルダが、ハンドル脇のスロットに白メダルをセットして、タイヤを軸にして妖砲を回頭させ、砲口をリンクスに向けた!


「うおぉぉっっ!!」

「なにっ!?」


 だが、ガルダが引き金を引く寸前で、射線上にザムシートが割り込んで、リンクスに裁笏ヤマを振り下ろした!リンクスは妖扇で受け止める!

 ガルダには、ザムシードが攻撃の為に割り込んだのではなく、リンクスを庇ったようにしか見えない。


「邪魔だ、佐波木!」

「邪魔なのは解っている!オマエの言うのが正しいのも解っている!

 でも、やっぱり、俺には納得ができない!」


 幾度か裁笏と妖扇をぶつけ合った後に、胸に妖扇の一撃を喰らったザムシードが後退!リンクスが踏み込んで右扇(伸びた刃)を振り下ろすと、ザムシード左腕で受け止めた!そして、ガードしたまま、左腕のYウォッチから水晶メダルを抜き取って、和船バックルに装填!


《LIMITER CUT!!・・・EXTRA!!》 


 全身が輝いてEXザムシード登場!左腕で受け止めていた右扇を力任せに押し戻し、リンクスの腹に蹴りを叩き込んだ!リンクスは、追い撃ちを避ける為に素早く後退をして体勢を整える!


「うおぉぉっっ!!」


 左扇のクナイを飛ばすリンクス!EXザムシードは突進をしながらクナイを3本弾き飛ばすが、2本が肩と足に着弾!しかし、痛みを無視して突進を続け、リンクスの懐に飛び込んだ!リンクスの振り下ろした右扇(伸びた刃)がEXザムシードの肩に叩き込まれ、同時にEXザムシードの裁笏ヤマが、リンクスの胸に叩き込まれる!


「あの未熟者・・・どういうつもりだ?」


 ガルダは、妖砲イシビヤを構えたまま、EXザムシードを眺める。接近戦をするEXザムシードが邪魔で、必殺の一撃を撃つことができない。それどころか、EXザムシードが装備をしているのは、攻撃力の高い妖刀や弓銃ではなく、属性メダルの効果すら利用していない通常の裁笏ヤマ(木製ナイフ)。リンクスを倒す意志があるようには思えない。


「退け、佐波木!」

「退かねーよ!ここは俺に任せろ!!」


 EXザムシードは、リンクスを倒すつもりが無い。エクストラモードで、リンクスの攻撃に耐えられるように防御力を上げ、ガルダに手を出させずに、リンクスを救う為に戦っている。


〈こいつ・・・何なの!?

 お姉ちゃん、サッサと倒してよ!〉


 戦いの定石を無視して、防御を捨てて突進してくるEXザムシードに対して、契約者の佑芽は動揺をして、リンクスに的確な指示が出せない。


「うぉぉぉっっっっっ!!!・・・オーン、除霊!!」


 EXザムシードの振るう裁笏ヤマの乱打が、リンクスの全身に叩き込まれた!全身から闇を散らして弾き飛ばされるリンクス!


〈・・・くっ!〉


 リンクス(礼奈)の念が弱体化をして、姉の霊を覆っている佑芽に、ダメージとプロテクターの重みがのし掛かる!


〈お、お姉ちゃん、シッカリしてよ!〉


 動きが鈍くなったリンクスに突進をして、腹に蹴りを叩き込むEXザムシード!リンクスは再び弾き飛ばされて地面を転がる!


「・・・佑芽。」


 今の一撃で、契約者の佑芽が意識を失った。命令の強制状態から脱したリンクスは、立ち上がるなり、踵を返して逃走。跳躍力を活かして粉木邸の屋根に飛び上がり、屋根から屋根へと跳び跳ねて移動する。


「ゲッ!マジで!?逃げんなっ!」


 EXザムシードは、リンクスを追い払うのではなく、弱体化をさせて取り押さえるつもりだったので、慌てて追い掛けようとする。しかし、ダメージ無視で突撃を続けた所為で、足が縺れて片膝を付き、更にエクストラモードが強制解除されて、ノーマルのザムシードに戻ってしまう。


「チィ!全く世話が焼ける!

 圧倒的なエクストラを無駄使いしたあげく、逃亡を許すなど、未熟の極みだ!」


 ガルダは、妖砲モードのマシン流星をバイクモードに変形させて、屋根を駆けるリンクスを見上げながら追走をする。


「これが俺のやり方だ!

 中の女の子(佑芽)の生命を無視して容赦無く攻撃するよりはマシだろうに!

 まぁ、逃げられたのは予定外だけど・・・。」


 十数秒ほど遅れて、マシンOBOROに跨がったザムシードが、リンクスとガルダを追う。


「全く・・・両極端やのう。

 里夢ちゃん、ワシもリンクスを追う。

 呼び出しといて放置になってまうが、落ち着いたら連絡をするよって勘弁な。」

「はい、気を付けてくださいね。」


 粉木は、里夢に謝罪をしてから、愛車のスカイラインの乗り、駐車場を飛び出した。見送った里夢は、粉木の車が見えなくなってから小さく舌打ちをする。契約者(佑芽)を洗脳状態にして、里夢が間接的にスペクター(リンクス)に指示をするのは、命令系統が間延びをして思い通りには操れないようだ。


「使えない供試体は、サッサと廃棄したいのよね。」


 今回の戦闘で得られた情報を元にして次の計画を進める前に、根古佑芽が余計なことを喋らないように始末をしておきたい。だが、里夢も、少なからず疑いが向けられている状況では、あからさまには動きにくい。


「直ぐに対処できるようにしておくべきね。」


 里夢が、近くの電線に止まっていたカラスを睨み付けて、見えない魔力の楔を飛ばす。魔力の干渉に墜ちたカラスの眼が青く輝き、使い魔となって文架の退治屋を追って飛び上がった。




-YOUKAIミュージアム東側の交差点-


 信号で車を停めた粉木が、スマホと手に取って、本部の砂影滋子に連絡をする。


「おう、滋子!」

〈リンクスの妖幻システムはあったが?〉

「持っとったのは、根古佑芽ちゅう娘や。」

〈なんで、就学生の佑芽が文架市に?〉

「知らん。詳しいことは聞かしてくれへん。

 一度は確保したけど変身されて逃げられた。

 スマンが、リンクスの妖幻システムの位置情報を送ってや。」


 信号が青の変わったので、粉木は、交差点を通過して路肩に車を停車させる。しばらくすると、砂影から「東に向かって動く位置情報」が送られてきたので、無線で燕真と雅仁に伝えながら、車をスタートさせた。






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