表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/131

Ⅱ-6・アデスvsブロント~恨みのメダル~希望

-社屋3階-


 ブロントが上段からの振り降ろす2連撃を、アデスは霞構えで受け流す!すると、ブロントは、今度は刺突を放ってきた!素早く身を引き、ブロントの大太刀に一撃を叩き込むアデス!衝撃でブロントの手を痺れさせ、大太刀の刀身でサーベルのブレードを滑らせながら踏み込む!


「チィィ!」


 ブロントは抑え込まれている大太刀から手を放して後退!両手甲の鉤爪(基本装備)を伸ばして、片腕でアデスのサーベルを受け止めた!


「さすがに戦いの組立が上手いな、粉木さん!・・・だがっ!!」


 もう一方の鉤爪がアデスに炸裂!弾き飛ばされて床を転がり、アデスの手からサーベルが離れる!


「これで終わりだ!」


 丸腰になったアデスに突進をするブロント!アデスはサマナーホルダからカードを抜いて翳し、スピアを召喚して仰向けのまま防御!ブロントを弾き返して起き上がり、やや無理な体勢から刺突を放つ!一撃を喰らったブロントは数歩後退!体重の乗らない攻撃だったので致命打にはならないが、ブロントにダメージを与えて退けることには成功した!

 ブロントは、浅い傷口を手で押さえながら、アデスを睨み付ける!一方のアデスは、サーベルを拾って腰に納刀して、改めてスピアを構えた!


「フン!誰が『これで終わり』なんや?オマンか、信虎?」

「舐めるなよ・・・ジジイ!」

「まだジジイ扱いされるほど老いてへんわい」

「そう思っているのはアンタだけだ!」


 ブロントは、メダルホルダから属性メダル『雷』を抜いて、右手甲の窪みに装填!雷を帯びて放電する右鉤爪を振り上げて突進をする!アデスは、スピアの切っ先で鉤爪を弾きつつ後退!スピアが通電をして、握っている手が痺れる!


「フン!手段を選ばんくなってきおったな!」


 刃同士をぶつけたら、雷がまともに流れ込んでしまう為、間合いを空けた戦いしか選べない!攻め方を見出せなくなったアデスに対して、鉤爪を構えたブロントが突進!スピアの切っ先を宛てて、鉤爪を受け流し続けるアデス!弾かれた鉤爪が周辺の机や事務機器に当たり、通電で焼き、延焼を加速させる!


「何を今更!反乱を決意した時から、手段を選ばない決意はできている!」

「それは決意やない!考えることから逃げただけや、愚か者!」

「口の聞き方に気を付けてもらおうか!」


 右掌を翳すブロント!鉤爪にチャージされた電気が、雷球となって掌から放たれ、アデスを襲う!


「なんやとっ!?」


 直撃を喰らって弾き飛ばされ、壁に激突するアデス!感電で直ぐには体が動かない!


「アンタが俺の前から去った後で会得した技だ!

 俺は日々進化をしている!

 アンタの知らない技でアンタを殺して、アンタを越えた証明する!」

「・・・飛び道具は想定してへんかった。・・・ちと、マズいか。」


 再び、右掌をアデスに向けるブロント!鉤爪に雷エネルギーがチャージされる!



-社屋の外-


 解放をされた子供達が逃げ出してきた。滋子やモブ隊員達が駆け寄って保護をする。


「いったい何があったの?」

「粉木のおじちゃんです!」

「アデスが助けてくれました!」

「勘平!?勘平が来て、既に単身で交戦をしている?」


 次の瞬間、3階の壁が破れ、アデスが火花を散らせながら弾き出されて、隣接する工場の屋根に墜落!屋根を突き破って工場内へと落ちる!


「勘平っ!」


 続けて、破れた大穴から身を乗り出したブロントが、工場に向かってダイブ!薄鉄板の屋根を突き破って、瓦礫と共に工場内に降り立った!



-工場内-


 這いつくばるアデスと、マスクの下で余裕の笑みを浮かべるブロント!


「体力が無いのは、年寄りだからですか?

 それとも、左遷先で鍛錬をサボりすぎましたか?

 衰えた師匠など見たくもない!」


 痺れで体勢を立て直せないまま、牽制の為にスピアを振るうアデス!しかし、ブロントに楽々と受け止められ、蹴りを喰らって弾き飛ばされ、焼かれた壁に叩き付けられる!

 前線を退いた老兵と、最前線に立つ若者。30年近く前のロートルシステムと、銀色メダルで底上げされた最新システム。力の差は歴然。


「ハハハッ!どうしたんですか、粉木さん!

 アンタも、上層部と同じで、

 偉そうな能書きを垂れるワリには、何もできないんですか!?」

「・・・チィィ!」

「まだ、アンタには切り札があるでしょう!

 銀色メダルの元になったカードが!!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


 ブロントの指摘通り、アデスには、まだパワーアップの手段があった。使えば戦闘能力は底上げされる。だが、勘平は使いたくなかった。この状況で使ってしまえば、力を渇望するブロント(信虎)達と同じになってしまう。


「眼を覚ますんや、信虎!そして、剣を収めて罪を償え!!」

「寝ぼけているのはアンタだ!何故、この力の素晴らしさが解らないんだ!!」

「心が置き去りにされる力なんぞ、ただの暴力やっ!!」

「違うっ!置き去りなのは、力の素晴らしさを理解できない老害だけだ!!」

「それは独裁や!それではアカンのや!」

「独裁で良いんですよ!時代を作るのは、常に一握りの英雄だ!!」


 アデスは、ブロントの心に呼び掛けた。だが、最初の被験者に選ばれたがゆえに、妖怪によって最も心が破壊されていた弟子は、既に人間の心を取り戻せない。

 何度も叩き伏せられ、吹っ飛ばされて床を転がり、追い詰められるアデス。対するブロントは息一つ切らせていない。アデスが力尽きて敗北をして切り捨てられるのは、時間の問題になっていた。


「まぁ・・・老い先短い命。そいでもいいか。」


 弟子を導いてやることはできなかったが、捕らわれていた子供達は逃がした。未来を繋ぐことができたのだから、「自分の役目は終わっても良い」と考える。


「勘平っっっっ!!!」


 ボンヤリと自分の終焉をイメージしていたアデスの耳を劈くように、滋子の怒鳴り声が聞こえた。我に返り、声のする方を見上げるアデス。勘平を心配する滋子が、火を潜り抜けて、工場内に戦場に駆け付けてきた。


「アホンダラッ!何で来たんやっっ!!」

「そっちゃこっちの台詞ちゃ!なんでアンタがここで戦うとるのちゃ!?」

「呼んだ張本人がそれを言うなや!」

「1人で勝手に戦うなんて思うとらんかった!

 大変なことになったさかい、傍におって欲しかっただけながに!」

「ソイツはスマンな!

 ワシが導き損なった怪物だけは、ワシの手で決着を付けたかったんや!

 此処は、生身のオマンが来て良い場所やない!」

「勘平が心配やったさかいっ!

 もう会えんんでないかって・・・嫌な予感がしたさかいっ!!

 危険って解っとっても、来んわけにはいかなんだ!」

「・・・滋子。」


 滋子を見詰めるアデスの視線を遮るようにして、ブロントが立つ。


「老人達の茶番劇なんて醜いもの・・・

 見てられないので、続きは常世でやってください。

 アンタにトドメを刺したあと、

 砂影さんも叩き切れば、全ては丸く収まりますよね。」

「信虎っっ!」


 滋子が戦場に踏み込んだことで、アデスは進退が窮まった。精神的には、今まで以上に追い詰められる。自分が殺されて終わりにはならない。次に滋子が殺される。

 勝利を確信し、アデスにトドメを刺す為にゆっくりと近付いてくるブロント。もう、アデスに迷っている暇も、死を受け入れる余裕も無かった。


《マキュリー!!》


 アデスは残された力を振り絞って立ち上がり、パワーアップのカードを翳す!


「おぉぉぉっっっっっっ!!!」


 アデス・マキュリーへとパワーアップをして、ブロント目掛けて突進をしながら必殺技のカードを翳す!マキュリーバット(使役モンスター)が出現をして並走!アデス・マキュリーが飛び乗ると、マキュリーバットはバイクに変形!ブロント目掛けて突っ込む!


「フン!この程度か?」


 一方のブロントは、鉤爪に白メダルをセット!鉤爪から、これまでとは比較にならない雷が迸る!奥義・ライトニングクローを発動!ブロントは、迎撃の体勢で構える!


「バイクによる特攻など、恐れるに足らない!」


 アデスマキュリーが駆るバイクに向けて突進をするブロント!バイクから発射された竜巻がブロントを覆い、動きを封じる!


「チィ・・・こんな子供だましが!!」


 僅かに驚いたブロントだったが、竜巻の拘束を振り解くことなど容易い。縛めを弾き飛ばす為に、丹田に力を込める。


「スマン・・・真っ当に導いてやれんくてスマン、信虎。」

「なにっ?」


 涙混じりの声が聞こえた。師から謝罪の言葉を聞くのは初めてだった。それは、ブロントが一秒ほど動きを止めるには、充分すぎる言葉だった。

 次の瞬間、アデスが駆るバイクが突っ込んできて、尖ったカウルが、ブロントの腹を貫く!


「信虎ぁぁっっっ!!!」


 アデス(勘平)は、これまでは、愚かな弟子を立ち止まらせるつもりで戦っていた。弟子に不始末の責任で、自分が命を落としても仕方が無いと思っていた。だが、今は、この戦いで初めて、敵に対する殺意を向けていた。同時に、殺意を向けなければならない弟子に、謝罪をしていた。


「ぐはぁぁぁぁぁっっっ!!」


 腹を抉られたまま、壁に叩き付けるブロント。苦しそうに呼吸をして、マスクの下で喀血をする。致命傷なのは明らかだった。


「・・・信虎」


 このままでは、かつての弟子が、あまりにも哀れすぎる。アデスは、バイクを後退させ、ブロントの腹から先端を引き抜く。ブロントは、致命傷の腹を押さえ、再びマスクの下で喀血し・・・だがそれでも両足を踏ん張らせて立ち続け・・・最後の力を振り絞って、鉤爪を振り上げ、アデス目掛けて振り下ろす。


「粉木ぃぃぃっっ!!」

「この・・・大バカもんがっ!!」


 咄嗟に抜刀をしてサーベルを振り切るアデス。如何にブロントが最強とは言え、既に瀕死の刃である。ブロントの切っ先はアデスに届かず、アデスのサーベルはブロントの腹に打ち込まれた。苦しませずに殺してやること、弟子だった男に対する最後の決断だった。


「自慢の愛弟子やった。殺したくはなかった。

 退治屋の歴史に・・・汚名やなしに勇名を刻むと信じとった。」


 師は、かつての弟子を、殺すことでしか、終わらせられなかった。


「粉木ぃぃっ!!」


 ブロントは膝から崩れ落ち、変身が解除されて日向信虎に戻り、俯せに倒れる。最後の力を振り絞り、「これは誰にも渡さない」と叫ぶような表情で、床に落ちている銀色メダルに手を伸ばす。

 血の涙を流し、憎しみに満ちた眼でアデスを睨み、呪いの言葉を吐き捨てる信虎。端正だったその顔は、炎によって焼け爛れていく。


「ア・・・アンタが憎い!・・・アンタさえいなければ・・・俺は・・・」


 それが、日向雅虎の最期の言葉となった。「俺は」の続きを発すること無く、信虎は事切れる。

 振り返ろうともせず、背中で一身に恨みを背負い続けるアデス。弟子が哀れすぎて、直視をできなかった。


 変身を解除した勘平は、炎の中で表面が焦げたメダルを拾い上げて、直ぐに理解をした。勘平のみに向けられた呪いは「勘平が触れて苦しむこと」のみを喜び、他の者が触れることを拒む。


「・・・勘平。」


 勘平の背後には、滋子が立っていた。だが、勘平は、何も言わず、振り返りもせず、その場から立ち去っていく。滋子は、勘平が泣いていることに気付いていた。だからこそ、何も言わずに見送るしかなかった。




-社屋の外-


 炎上する工場から勘平が出てくると、喜田常務と、生き残った退治屋達が、中の様子を確認しつつ待機をしていた。精も根も尽きていた勘平は、「この状況で様子見か?」と呆れたが、悪態を言葉にする気力も失せていた。


「首謀者は始末した・・・あとは、オマン等に任すで。」

「日向信虎を・・・弟子を・・・自分自身の手で?」

「あぁ・・・そうや。」


 反乱のリーダー格が倒れたという報を聞いた退治屋達は士気が上がる。その場から立ち去っていく勘平には、喜田常務達が喜ぶ理由が、全く理解できなかった。

 勘平の介入が、反乱鎮圧のキッカケになったのだが、功労など少しも嬉しくなかった。彼の心には「弟子殺しの師」と言う大きな傷だけが残った。


「本条・・・芽高・・・スマンな。死に損なっててしもうた。

 ワシは、もうしばらくは、オマエ等の所には行かれへんようや。」


 首謀者を失った反乱軍は、急激に士気を低下させ、喜田常務を中心にして一丸となった退治屋達によって、その日のうちに鎮圧をされた。数人は抗って戦死をして、大半が捕縛された。

 数日後、捕縛者のうち数名は‘協力者’の手引きで逃亡をする。夜野圭子は、幼い娘を連れて、西洋に本拠地を持つ『大魔会』を頼って落ち延びた。


 銀色のメダルは、呪いに染まった1枚以外は回収されて処分をされる。こうして、銀色メダルは組織の汚点とされて記録を抹消された。この凄惨な事件は、新社長に就任した喜田の指示で「ただの火災」として処理をされ、民間人どころか、狗塚家や地方の退治屋すら真相を知らない。





-文架市-


 勘平が帰宅をすると、家の前で、源川有紀が携帯型ゲームを弄りながら待っていた。勘平は、バックミラーを見て、疲れ果てた表情を穏やかな顔に戻してから、愛車から降りる。


「なんや、お嬢?何か用か??」

「もうっ!今日は、学校が終わったら、護符作りを教えてくれるって約束でしょ!

 だから待っていたんですよ!」

「お~~・・・そう言えばそうやったか?スマンスマン、忘れとった。」


 約束のことを忘却するほどの騒動に巻き込まれていたのだが、あえて何も言わず、とぼけた対応をして、空を見上げた。


「本条・・・芽高・・・スマンな。この娘を育てたいんや。

 ワシは、もうしばらくは、オマエ等の所には行かへん。」


 源川有紀は、偶然の出会いが無ければ、地方に埋もれたまま、その才能を見出されなかった原石。勘平は、有紀の才能を日向信虎と同等と見立てている。

 有紀の才能、及び、封印妖怪と使用者の相性で、勘平が理想とした「銀色メダル使用を上廻る成果」が偶発的に実証されるのは、もう少し先の話。


 この文架市で紡がれていくストーリーは、もう始まっている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ