28-2・粉木の覚悟~ザムシード敗北
-YOUKAIミュージアム駐車場-
妖幻ファイターブロントが、25年前に事切れる直前の憎しみに満ちた眼で、粉木を睨み付けている。まるで、25年前に終わったはずの舞台が、現代にタイムスリップしてきたようだ。
「・・・下がれ、狗塚。
アレが用があるんは、ワシだけや。オマン等には、何の害もあらへん。」
「・・・で、ですが」
「ええから下がれ!これは命令や!!」
粉木は「部外者は入ってくるな」と眼で訴えながら、腕でガルダを押し戻すようにして前に出る。
過去の弟子は、怨念と成ってまで粉木勘平の死を求めている。こんな危険な物と、若い奴等を対峙させたくない。怨念を晴らす最も簡単な方法は、自分が怨念に殺されること。たったそれだけで全て終わる。
「なぁ、信虎・・・オマン、そんなにワシが憎いんか!?」
「あぁ!憎い!!」
「・・・そうか、解った。」
50年前に親友を失った。25年前に愛弟子を失った。粉木勘平は、常に死に遅れて生きてきた。もしかしたら、25年前のあの日、共に死ぬべきだったのかもしれない。粉木勘平の人生は、あの時に終わったのかもしれない。それならば、25年前の亡霊に連れて行かれるのも道理である。
粉木は、怨念の責任を自分の命で償おうとしていた。・・・だが!
「そんな命令、聞けね~よっ!よく解んね~けど、ジジイがヤバいんだろうに!」
ザムシードが粉木の前に飛び込んで、妖刀ホエマルを振り上げ、ブロント目掛けて振り下ろした!ブロントがカギ爪で妖刀を受け止める!
「退け!俺はオマエなど興味は無い!」
「いきなり出て来て何なんだ!?何でジジイを狙う!?何者なんだ!?」
「俺は・・・其処にいる粉木さんの弟子・・・日向信虎!」
「・・・弟子?」
ブロンドのカギ爪が放電をして、交わっている妖刀を伝わり、ザムシードに流れ込んだ!全身が麻痺をして動けなくなるザムシード!息つく暇も無く、電気を帯びたブロンドの強烈な蹴りが、ザムシードを弾き飛ばす!ザムシードは地面を転がり、首を横に振って正気を保ちながら立ち上がった!その間にガルダがザムシードのカバーに入って、ブロントの追撃を封じる!
「ジジイの弟子・・・ジジイが嫌い・・・銀色のメダル・・・
理屈はよく解んね~けど、やっと理解できた!
要は、念の隠った依り代で面倒臭いもんが実体化した!
・・・何が下がれだ、ジジイ!?普通に退治屋の範疇の仕事じゃね~か!!」
「佐波木・・・本当に解っているのか!?これは、妖怪とは全く別の・・・」
「よく解んね~って言ったろ狗塚!あとで詳しく教えろっ!!
とにかく、ジジイがヤバイってのだけは事実なんだろうが!!」
再びブロント目掛けて突進をするザムシード!妖刀とカギ爪が交わる!鍔迫り合いをしながら睨み合うザムシードとブロント!
「オマエ、本当に退治屋なのか!?」
「退治屋だ!!ジジイの今の弟子だよ!!文句あるか!!」
「退治屋の職務は妖怪退治だ!!」
「知ってるよ!だからなんだ!!」
「オマエは粉木さんを助けると言った。だが、人助けは退治屋の範疇ではない!!」
「知ってるよ!
妖怪退治以外のことばっかりをして、マイナス査定されるからな!
オマエに言われる前から、ジジイや狗塚に、散々、嫌味を言われている!
それがどうしたっ!?」
「話にならん!!」
再びブロントのカギ爪が放電をする!今度は、鍔迫り合いを止めて後退をするザムシード!「ブロントから離れれば感電をせずに済む」と考えたのだが甘かった!電気はカギ爪から掌に集まって、雷球と成ってザムシードに放たれる!ザムシードは、再び痺れて全身が動かない!
ブロントは、妖刀ホエマルの倍も長さのある大太刀を装備して、刀身に電気を通し、ザムシード目掛けて振り下ろす!麻痺中のザムシードは、何1つ対処できずに、鋭い剣閃を叩き込まれ、再び感電をして地面に両膝を落とした!
「トドメだ!!」
大太刀の切っ先を空に向けるブロント!蓄積されていた電撃が閃光と成って天を突き、幾つもの稲妻となって、上空からザムシード目掛けて降り注いだ!
「うわぁぁぁっっっっっっ!!!」
落雷の直撃を喰らい、全身から火花を上げながら仰向けに倒れ、変身が解除されて燕真の姿に戻って意識を失う!
ザムシードは、一発も攻撃を当てることなく、ブロントに倒された!圧倒的な力の差だ!銀色のメダル、増幅された闇、復讐の強い意志、完成された逸材、全てがザムシードを凌駕していた!
「なんだ、この未熟者は!?」
邪魔者を退けたブロントは、燕真を見下ろした後、粉木に視線を移す。
「これで妖幻ファイター!?この出来損ないが、粉木さんの弟子!?
まぁいい・・・出来が悪くても、コイツが弟子ならばっ!!」
ブロントは刀身を下に向け、燕真の心臓目掛けて切っ先を突き降ろす!上空から蝙蝠型のモンスターが出現して、ブロントに体当たりをして燕真へのトドメを妨害する!
ホルダを翳し、ブロントを睨み付けながら構える粉木!
「オマンが用があるんはワシだけやろ!?燕真は関係無いはずや!!」
「それは、コイツがアンタの弟子と知る前の話。
俺は、アンタの生きた証を全否定したいんだ!
だから・・・コイツも否定する!!」
「それは・・・ワシを倒してからにせい!!」
「ようやく・・・その気になってくれたか!」
「・・・あぁ」
粉木の全身から、悲しみと悔しさが吐き気のように込み上げてくる。自分は同じ弟子を二度も殺さなければならないのか?一度だけでも、心を締め付ける傷になってしまったのに・・・。
だがそれでも、背負わなければなならない。25年前に、砂影滋子を殺させない為に、死に場所を失ったように、今度は、佐波木燕真が守る為には、自分が殺されるわけにはいかない。
粉木は、腹を括り、サマナーホルダを翳す!
「変・・・」
「危ないっ、勘平!!」
粉木が構えた瞬間、ブロントの大太刀が粉木目掛けて素早く振り降ろされた!砂影の喚起の大声が上がる!
「・・・なっ!?」
肩から血を流し、驚きの眼でブロントを見つめる粉木!ブロントが持つ大太刀の切っ先は、粉木の肩を掠めた鮮血で塗られ、粉木の眼前で、ガルダの構えた妖槍と切っ先を交えている!ブロントの不意打ちを察知したガルダが、辛うじて狂剣を止めたのだ!
「何のつもりだ!!オマエ、粉木さんが変身をする前を狙ったな!!」
「フン!誰が雌雄を決すると言った!?俺は、粉木さん命が欲しいんだ!
変身をした異獣サマナーと戦いたいわけではない!!」
「・・・なんてヤツだ!」
「オマエは!?オマエも粉木さんの弟子!?
いや、違うな、その姿は天狗、狗塚の当主か!先ほどの素人とは違うわけだ!」
ブロントは、ザムシードを退けた時と同様に、大太刀に電気を帯びさせている。しかし、切っ先を交差させているガルダは感電をしていない。ガルダは霊術により、妖槍に風の属性を帯びさせていた。妖槍の周りにある風が防御壁となり、ブロントの電気を相殺しているのだ!
「流石は名門・・・利口だな!
だが、部外者は退け!そっちに転がっている弟子はともかく、狗塚に用は無い!」
粉木は、傷付いた肩を手で押さえて数歩後退をする。砂影の声で反射的に身を退かなければ・・・ガルダが割って入らなければ・・・粉木は今の一撃で斬殺をされていた。
「・・・信虎・・・オマン、其処までワシを?」
「言っただろう!
俺は、アンタを全否定する!!アンタの生き様を全・・・・・・・」
「さっきから、うるせぇぇっっ!!」
意識を取り戻した燕真が猛然と飛び込んで、ブロント顔面に拳を叩き込んだ!
想定外の攻撃を受け、ガルダとの斬り結びから離れて、2歩ほど後退するブロント!ガルダは想定外すぎる燕真の行動に唖然とする!
「いってぇ~~!
やっぱ、妖幻ファイターの顔面て、素手で殴るもんじゃないな・・・。」
燕真は手首を振って拳の痛みを和らげつつ、ブロントを睨み付けた!
「・・・出来損ないがっ!!」
「確かに今は出来損ないかもしんね~!だけど今に見てろよ!!
いつかは必ず、オマエ以上の有能な弟子になって、
独り立ちしてやるからなっ!!」
「・・・・佐波木、それは絶対に無理だ!」
「・・・それでは、一生、独り立ちできんわね!」
「オマンがなれるわけないやろ!」
「うっせ~ぞ、イヌ、ババア、ジジイ!!
冷めたツッコミ入れるシーンじゃないだろう!!
良い感じのこと言ったんだから、少しは感動しろっ!!」
-YOUKAIミュージアム・事務所内-
紅葉が、ひとけの無い室内を覗き込む。本棚の奧の金庫に中から、何かの気配が漏れている。近付いて中を覗くと、水晶のメダルが淡い光を放っていた。
「なんで?・・・今ゎ、誰も触ってぃなぃのに・・・」
穴の中に手を入れ、水晶メダルを取り出す。不思議な感覚だ。まるで、メダルが脈を打っているように感じられる。そして、以前と同じように、紅葉の気持ちを高揚させ、霊力を欲している。
「どぅなってるの?」
メダルにも興味はあるが、今は駐車場の戦いの方が気になる。紅葉は、メダルを握り締めたまま、事務所から飛び出し、喫茶店内を通過して駐車場に駆けていく。
その後ろ姿を見つめる司録&司命。
「エクストラに必要な物・・・
その1つは、能力を底上げされたザムシードに、食わせる妖力・・・
ザムシード(閻魔大王)と同種の妖力・・・」
「手段は2つ・・・。
1つは、人間の霊力を、ザムシードに近い妖力に変換をして与える・・・。
もう1つは、最も簡単な手段・・・地獄の住人が妖力を与える・・・。」
「・・・大王様本人、わし等書記官・・・・そして、鬼。」
「エクストラの力に、満たされるという概念は無い・・・
決して満タンにはならない。」
「だが、妖力が封じられていれば、起動はする・・・
内包妖力は、エクストラの稼働時間に作用する。」
「奴等が気付いておらぬだけで、答えは最初から手の中にある・・・。」




