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25-1・最強のセイテン~廃屋の離反者~犯行予告

-東京都-


 妖怪出現!妖幻ファイタータイリンと、モブの妖幻ファイター1人、サポートのヘイシトルーパー達が現場に駆け付けた!

 都心の支部には複数の妖幻ファイターが所属をしている。それは、1つの事件に複数のチームで対応できるメリットと同時に、地方とは違って人口密度が高い都心では、被害を拡大させない為に事件の早期解決が必須であることを意図していた。


「囲めっ!」


 隊列を整えた退治屋が、攻撃を開始する!


「一斉射撃で足を止めろ!」


 一斉に放たれた光弾は回避され、妖怪が放った妖気弾が退治屋の戦士達に着弾する!辛うじて耐えたタイリンが飛び掛かるが、動きの速い妖怪を捉えることができない!


「くそっ!」


 低層ビルの屋上に、体格の良い男が立つ。


「苦戦してるっすねぇ・・・俺の管轄外だから助けちゃマズいかな?

 早期解決をする為に、大目に見てくれるかな?」


 男は雲を模したバックルのベルトを腰に到着して、左腕のYウォッチからYメダルを抜いて雲型バックルに装填!


「幻装っ!」 《QITIAN!!》


 全身が輝き、鎧を着た猿人のような戦士=妖幻ファイターセイテンが出現!低層ビルから飛び降りて、タイリンと妖怪の間に軽やかに着地!威勢良く、専用武器の・妖棍・如意棒を振り回す!


「助太刀するっすよ!」


 タイリンが頷いて応じる。許可を得たセイテンは、頭上で妖棍を振り回しながら妖怪に突進!妖怪は飛び上がって回避をするが、セイテンが構えた妖棍が伸びて、先端が妖怪に炸裂!セイテンは妖棍を振り下ろして、先端で捉えたままの妖怪を地面に叩き付ける!


「今だっ!!!」


 悶える妖怪に向かって、左肩に装備された車輪ブーメランを投げるタイリン!妖怪は辛うじて回避をするが、その間に、セイテンが突進をしていた!


「ナイス牽制っす!」

「牽制じゃなくて、必殺のつもりだったんだが・・・。」


 セイテンは、走りながら妖棍の柄の窪みに属性メダル『閃』を装填!逃げようとする妖怪目掛けて、離れた場所から刺突を放った!先端から閃光が発せられて妖怪に着弾!更に、妖棍の柄の窪みに属性メダル『斬』を装填!妖怪との間合いを詰めて、先端に鋭利な刃を纏った妖棍を叩き込んだ!


「手柄は担当部署に譲るっすよ!」


 動けなくなった妖怪に対して、タイリンが、白メダルを装填した車輪ブーメランを投げる!妖力バースト発動!妖怪は両断されて闇霧となり、車輪ブーメランに填められた白メダルに吸収される!

 封印メダルを回収したタイリンが、変身を解除して田井弥壱の姿に戻り、セイテンを見詰めた。


「帰ってきたんですか、猿飛さん?」

「ちょっと、本部に呼ばれたっす。」


 セイテンが変身を解除すると、背が高くて筋肉質な、やや厚顔の青年が現れる。


「事後処理は、担当のオマエ等に任せるっすよ。

 あとで、オマエの部署に遊びに行くからヨロシクっす!」

「あぁ・・・いえ・・・

 猿飛さんは忙しいんでしょうから、遊びに来なくても・・・。」

「はははっ!忙しくても、その程度の時間は作れるっすよ。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


 田井弥壱は「遊びに来ないでくれ」と遠回しに断ったつもりなのだが、彼は気付いていない。愛車のスズキ・GSX-R1000-L3に跨がり、軽く手を振って颯爽と去って行く。


「あの人、無駄話が長いし、来ると騒がしくなるんだよな・・・。」


 見送る田井弥壱の周りに、モブの隊員達が寄ってきた。


「彼、強いですな。本部の人ですか?」

「本部所属で、全国各地を廻る猿飛空吾さんだ。

 おそらく、今の退治屋で最強の妖幻ファイターは、あの人だろうな。」


 猿飛空吾は「本部に呼ばれた」と言っていた。それは、つまり、本部から内密の辞令が発せられることを意味している。田井は、日本の何処かで、自分には関与できない熾烈な戦いが始まることを想像した。




-郊外の廃ホテル-


「クソォッ!!」


 隠れ家に戻った堀田は、怒りを顕わにして拳を壁に叩き付けた。強襲作戦は失敗に終わり、仲間の1人を失ったのだ。ロバートは、脅えた表情をして、血を一滴も流さずに死んでいた。その様な「謎の死」を与えたのが何者なのか、離反者達は知っている。リリスのデスサイズ。アサシンに命を狩られたのである。


「作戦が失敗をした理由は、里夢が退治屋の後ろ盾になっていたからか?」


 クロムは、作戦が破綻した理由を冷静に考える。大魔会が退治屋のバックアップに入ったとすれば、もはや、退治屋が所有する‘銀色のメダル’に拘るのは危険。一日でも長生きがしたいのなら、銀色のメダルからは手を引き、何処かに雲隠れをするべきだ。


「これ以上、この地に留まるのは危険だ!」


 マスクドウォーリアの剥奪が決まった時、堀田が反発をして、クロムとロバートに離反を持ちかけた。噂に聞く「退治屋の銀色メダル」があれば、追っ手を退けられると聞き、堀田の話に乗った。

 更迭をされて剥奪者に落ちても、生きる術はあったのだろう。だが、今更後悔しても何も始まらない。


「逃げよう、堀田!」


 クロムは弱気に正論を発するが、堀田は応じる素振りを見せない。


「いや、まだだ、クロム!逃げて脅えて暮らすなんて、俺はゴメンだぜ!

 後が無いと割り切り、体裁なんて棄てれば、まだ、打つ手はあるはずだ!!」

「体裁を棄てる・・・か。

 確かに、アサシンに狩られるカウントダウンが始まっているなら、

 秘密裏に動くのも、派手に暴れ回るのも、さほど変わらないのだろうな。

 いや・・・事が派手になれば、困るのはむしろ里夢か・・・。」

「そう言う事だ!追っ手は、夜野里夢だけ!

 総帥の情婦ごとき、逃げ隠れせずに叩き潰してやろうぜ!」

「解った・・・ロバートの弔いも兼ねて、久しぶりに派手にやってやろう!」


 魔術師は、生命力を魔力に変換する。多くの生命力を集めるほど、強大な魔力を使用できるようになる。それは、茨城童子が施した八卦先天図でも、魔術師が施す魔方陣でも違いは無い。妖力か、魔力か、それだけの違いだ。


 約1ヶ月前、彼等は、強大な悪魔を倒す為に多くの生命力を集めた。その手段は他の魔術師も状況次第で使う手段なので、生命力を奪われる者の同意があれば問題にはならない。だが、彼等は、同意の無いまま無関係の者達から生命力の搾取を強行した。その結果、十数人の市民が動けなくなって逃げ遅れ、戦いに巻き込まれて犠牲になった。

 大魔会上層部が彼等の暴走を諫めたが、彼等は反省をしなかった。それどころか、「子飼いにばかり強いシステムを渡して、自分達は性能の低いシステムを与えられている」「自分達が実績を高める為には、多少の犠牲は仕方がない」と開き直った。

 彼等には、一般市民を守るという正義感は無い。一般人は持っていない力を見せ付けて崇拝されることを目的にしている。


「ガッハッハッハッハ!その意気だぜ、クロム!やるなら、何処が良い!?」

「そうだな・・・新鮮で生命力溢れる生け贄が多く存在する場所・・・。」


 離脱者の2人は、文架市の地図を見入る。彼等が言う「新鮮で生命力溢れる生け贄が多く存在する場所」とは学校のこと。小学校では生命力が小さすぎ、大学では魂は汚れ始めている。中学校か高校が理想的なのだ。


「だが・・・行動を起こす前に、里夢に読まれる可能性は高いな。」

「ならどうする!?」

「フッ・・・。学校を狙うばかりが、手段ではあるまい。

 純度は落ちてしまうが、里夢の裏をかくのであれば仕方はあるまい。

 狙うのは・・・ここだ!」


 クロムが地図上で指をさし、堀田と顔を見合わせて、邪悪な笑みを浮かべる!




-YOUKAIミュージアム-


プルルルルルルルッ!プルルルルルルルッ!

「はい、YOUKAIミュージアム!」


 茶店のカウンターに待機をしていた燕真が、固定電話の受話器を取った。


「・・・オマエは?」

〈退治屋の若僧か?・・・ジジイはいないのか?

 まぁイイ、伝えておけ!1週間以内に派手に事件を起こす!〉

「・・・なに?」

〈それが嫌なら、銀色メダルを用意しろ!〉

「・・・事件って!?」

〈・・・また連絡をする!〉

「あっ、おいっ!!」

プツン・・・ツーー・・・ツーー・・・


 犯行予告だけを述べて一方的に切られてしまった。燕真が受話器に向かって声を荒げて呼ぶが、何の反応も返ってこない。

 相手は名乗らなかったが、燕真は「声の主が何者なのか?」が直ぐに解った。粉木に判断を仰ぐまでもなく、到底、受け入れない内容だ。


「・・・クソッ!奴等、何をするってんだ!?

 紅葉っ!店番を頼むっ!!」

「んぇぇ?どした、燕真?」


 燕真は、紅葉に店を任せて事務所に駆け込み、粉木と雅仁に今の内容を捲し立てるように説明する。


「なんやて!?」

「野蛮な連中め!これでは、鬼と変わらない!」

「俺は、何か異常が無いか、町を見て回る!」


 一方的に言い切って事務所を飛び出し、バイクを駆って走り出す燕真。「1週間以内に事件を起こす」だけでは、何一つ対策が打てない。燕真の行動には何の根拠も無く、無駄足に終わる可能性が高い。しかし、脅えて待っていても何も始まらない。


「俺もパトロールに出ます!粉木さんは待機をお願いします!

 クソッ!奴等がこんな暴挙に出るなんて考えていなかった!」

「あぁ!気を付けや!」

「場合によっては、俺と佐波木がパトロールに出て、

 此処がガラ空きになることが奴等の作戦かもしれません。

 異常があれば、直ぐに連絡を下さい!」


 雅仁は、深呼吸をして冷静さを心掛け、事務所のパソコンで文架市の地図を確認する。奴等を発見するのが最善だ。偽名でも使って、悠々と宿泊施設を陣取っているのか?それとも、足が付くので宿泊ができず、適当な廃墟で雨風を凌いでいるのか?


「粉木さん・・・各宿泊施設の利用者を調べてもらえますか?

 大柄な日本人と外国籍の男・・・比較的搾りやすいと思います。」

「あぁ!本部に手を回して、やってみるで!」

「この都市で、浮浪者が寄りそうな場所は?」

「そやな・・・西区の此処と此処・・・鈴梅市との境になる此処・・・

 東側開発区の此処ら一帯は、ちょっと前に浮浪者の退居対策がされたはずや!」

「解りました!」


 まだ文架市に土地勘の薄い雅仁は、パソコン画面の地図をスマホ画面の地図と見比べて確認して、事務所を出てバイクで走り出す。


「ァレ?ァタシゎ抜け者?」


 喫茶店内では、慌ただしく出て行った燕真と雅仁を、紅葉がキョトンとした眼で眺めている。

 問答無用で置いてけぼりにされた。苦情を言う為にスマホを引っ張り出して燕真に電話をする。なかなか電話に出てくれないが、しぶとくコールを続けていたら、ようやく応じてくれた。


「燕真っ!ァタシを連れ・・・・」

〈ワリィ!後にしてくれ!〉

プツン・・・


 だが、一方的に切られてしまう。


「店員さぁ~ん!チーズドリアお願いしま~す!!」

「今、忙しぃっ!!ドリア無いっ!!チーズ売り切れたっ!!帰れっ!!」

「アイスコーヒーくださぁ~い!」

「ぅるさぃっ!!飲みたきゃ自販機で買ぇっっ!!」


 紅葉は、客の注文を一喝すると、持っていたトレイをテーブルに叩き付け、カウンター奧のイスに座って、何度も何度も燕真の携帯に電話をかけ続ける。

 学校で面倒臭いことがあったり、雅仁と大喧嘩をした直後でも、店では意識コントロールをして笑顔を作る紅葉だが、燕真から「ぃぢゎる」をされた場合の意識コントロールはできない。


「燕真ムカ付くっ!!」


 イライラしながら窓の外を見たら、黒猫が塀の上でこちらを眺めていた。紅葉には、黒猫ではなくケバいオバサンに見える。ムカッとしたので、窓を開けて「なに見てんだょ!」って意味を込めて、猫語で「ギニヤァァァッッッ!!!」と威嚇をしたら、ケバいオバサンみたいな猫は尻尾を巻いて逃げて行った。




-ビジネスホテルの一室-


 里夢は、パソコンで文架市内の学校を検索していた。


 追い詰められた離反者達が、次のどう動くのか?一定の予想はできる。「窮鼠猫を噛む」の如く、彼等は、後先考えずに行動を起こす可能性が高い。以前、奴等は安易に魔力を得る為に、ハイスクールに魔方陣を張って生徒達の生命力を搾り取ろうとした。

 退治屋と離反者の間で軋轢が起こる分には、気付かぬフリをして退治屋の能力を傍観していたが、世間を巻き込むなら話が変わってくる。奴等が一般社会に被害を出す前に仕留めなければ、大魔会が恥をかいてしまう。


「文架市の中学校と高校を合わせて、約50校・・・」


 もうしばらくは離反者を泳がせて退治屋の動きを見るつもりだが、奴等の動きを把握して、暴走の可能性があれば即座に処刑をしなければならない。その為には、奴等が仕掛ける可能性が高い場所には、複数の使い魔を放つ必要がある。


「各地に3匹程度送るとして、全部で150~200匹・・・。」


 文架市に来た翌朝から離反者の暴挙に備えて、100程度の使い魔は放っているが、追加をするべきだろう。


「・・・あら?」


 ノートパソコンを眺めていると、YOUKAIミュージアムを担当する斥候が、通信機に「異常発生」のアラームを送ってきた。内容を確認すると、「屋敷内の猛獣が怖いので偵察が出来ない」という物だ。


「猛獣?・・・あの屋敷に獰猛な番犬なんて飼われていたかしら?」


 里夢は覚えのない報告に対して、訝しげに首を傾げる。

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