24-4・雅仁の罠~チャージ三連~アサシン執行
-今に至る-
「何故、俺達の作戦が解った!?
使い魔が監視していたのがバレていたのか!?里夢の手引きか!?」
「使い魔?・・・そうか、やはり、あの烏が!」
ガルダは、大魔会の技術は知らないが、使い魔という存在は知っている。最近はプライバシーが優先されて、あまり用いられないが、陰陽道には‘使い魔’と似た‘式神’と言う技術がある。
「大魔会は、未だに、他人のプライバシーを無視した技術が一般的なんだな!
もう一つ教えろ!富運寺の妖怪は、オマエ達の仕業か!?
俺があちらに行けば判断できるが、佐波木では気付けないだろうからな!
まぁ・・・その答えも、さっき聞いたような物だがな!」
「ぐぅぅぅ・・・クソォ!」
妖怪には関係が無いはずの大魔会(離反者)が、妖怪の発生を知っていた。ゴブリンは、「2人は出掛けたはず」ではなく「妖怪退治に向かったはず」と口を滑らせたのだ。
陰陽道にも妖怪を召還する技術はある。古では多用された技術だが、近年では外法として禁じられており、雅仁や彼の父も、知識として知っているだけで使ったことはない。特に妖幻システムの開発以降は、使う理由も無くなった。
「野蛮な連中めっ!」
立ち上がり、ガルダを睨んで構えるゴブリン!一方のガルダも、銀塊によるエネルギーチャージを終えて構える!
-富運寺周辺の町-
馬に乗った妖怪相手に攻め倦ね、攻撃を受けて弾き飛ばされて、地面を転がるザムシード!気が付くと、戦場は狭い住宅街ではなく、広い公道に移っていた!
「ここなら・・・行ける!」
ザムシードは、Yウォッチから『朧』と書かれたメダルを抜いて空きスロットに装填!背後の時空が歪んでマシンOBOROが出現をする!
シートに跨がり、妖刀を構え、アクセルを空吹かして、夜行を睨み付ける!クラッチを繋げ、夜行目掛けて急発進!対する夜行も、槍を構え、ザムシード目掛けて首の無い馬を走らせる!
「はぁぁっっっ!!!」
擦れ違い様に振り切られる2つの刃!一瞬の交錯を経て、マシンOBOROを走らせるザムシード!その背後で、夜行が落馬をして爆発炎上!
バイクを駐め、爆煙と四散する闇を見るザムシード。妖刀に嵌め込まれた白メダルに闇の霧が吸収され、『行』という文字が浮かび上がる。
「任務完了っ!」
少し離れた物陰では、堀田とクロムがザムシードと夜行の戦いを眺めている。
「乱入しようぜ、クロム!血祭りだ!!」
「いや・・・引き上げよう、堀田。作戦は失敗したようだ。」
「・・・なに!?」
「退治屋は1人しかいない。」
「ぬぅぅぅっ!そう言えば!!
だが、それが何だってんだ!?
アイツ(ザムシード)を潰すことに問題はあるまい!」
「解らないのか?俺達の作戦は読まれ、もう1人は、アジトに残ったのだ。
夜野里夢が手引きしたのか、俺達が何かの要素を見落として作戦がばれたのか?
どちらにせよ、アジトが防衛されているからには、ロバートは襲撃に手間取り、
夜野里夢に感知をされることになる。
闇雲に盲進するより、撤退して作戦を練り直すべきだ。」
「・・・ク、クソォ!」
彼等は、退治屋のアジトに出入りをしている少女の何気無い一言が、作戦を破綻させてしまったことを知らない。
「・・・大魔会の離反者?・・・それともただの見物人?」
ザムシードは、戦闘の最中ずっと自分を観察している視線を感じていた。一定の警戒はしていたが、今はその視線を感じない。念の為に、彼等が身を潜めていた物陰に視線を移すと、もうその場所に、監視人達は存在していなかった。
-YOUKAIミュージアム駐車場-
ゴブリンは一定のダメージを受けているが、ガルダは気を抜く気は無い。どんな技があって、どうのように形勢を逆転されるか読めない以上、大技で一気に決めるつもりだ。
「おぉぉぉっっ!!!アカシックッッ!!アタッッッッーーーークッッッ!!!」
「ぐぉぉぉぉぉぉっっっっっっっっっ!!!!!」
流星と化したガルダが、ゴブリンに体当たりをする!身を低くして踏ん張り、両腕をクロスさせて防御するゴブリン!
「フン!何度も同じ手を食うかよっ!昨日は汚ぇ不意打ちにやられただけだっ!!」
流星のように伸びる光の尾が徐々に短くなる!それは、ガルダのエネルギー放出量が底を尽き掛けていることを意味していた!このままでは、奥義はゴブリンに完全に凌がれ、ガルダはエネルギー切れを起こして変身が解除されてしまう!
「はっはっは!衝突力が弱まってるぜ!
不意打ちじゃなきゃ、こんなもん屁でもない!!」
「解っているさ!だからこそ、オマエには有効なんだっ!!」
「なんだとぉっ!」
「オーン!霊力開放!!エネルギー充填!!」
次の瞬間、ガルダの両拳が輝き、霊力が放出されて、ガルダの全身に流れ込む!ガルダはパワーダウンを見込んで、予め掌に幾つもの銀塊を握り締めておき、霊力の供給をしたのだ!
エネルギーがフルチャージされたガルダは、再び、光の尾を流星のように長く伸ばし、衝突力を爆発的に増大させた!
「ぐぅぅぅ・・・ぐぉぉぉぉっっっっっ!!!」
「オマエは一度、アカシックアタックを喰らっている!
そして俺は、通常のアカシックアタックでは、
オマエのシステムを破壊できないことを学んだ!
ならば、昨日以上のパワーを、オマエに叩き付けるまでだ!!」
流星の威力がゴブリンを押し、両腕のガードでは押さえ込めなくなり、両足が後退をする!
「今だ!!オーン!霊力開放!!エネルギー充填!!」
「なにぃっ!!?」
今度は、ガルダのベルトに縛り付けられていた腰袋が輝き、中にある銀塊から霊力が開放されて、エネルギーがチャージされる!
「ぐぅぅ・・・うわぁぁぁぁぁぁっっっっっっっっっっっっっっっっっっ!!!!」
パワーを最大限に高めたアカシックアタックが、ゴブリンを弾き飛ばす!
瞬間的に弾いただけの昨日とは違い、今回は昨日以上のアカシックアタックのパワーを受け止め続けたのだ!ゴブリンのプロテクターは限界まで消耗して、あちこちに亀裂が入って破壊をされる!
ゴブリンは、宙を飛ばされながら変身が解除されて地面に墜落!続けて、変身アイテムと、数枚のAKURYOUメダルが地面に落ちた!
「くそっ!」
一方、パワーを使い切ったガルダは脱力して片膝を付き、強制的に変身が解除されて雅仁の姿に戻る。僅か数十秒で、ガルダ3回分の霊力のコントロールしてエネルギーチャージを繰り返すのは辛い。だが、確実な手応えを感じた。雅仁は、肩で息をしながら、倒れているゴブリンの変身者を見る。
「フン!パワー切れか?息巻いているクセに脆弱だな!」
マスクドシステムを拾い、再度、変身をしようとするロバート。しかし、彼のマスクドシステムは、幾つもの亀裂が入っており、煙を上げて完全に機能を停止させた。
「これでもう、オマエには戦う術は無い!」
「バ、バカなっ!
有り得ない!有り得ない!何かの間違いだ!!
格下の退治屋に負けるなんて、有り得ない!!
俺のマスクドシステムが破壊されたなんて、有り得ない!!」
「だが・・・それが現実だ!」
「覚えてやがれっ!!この仇は、きっと堀田達がっ!!」
捨て台詞を吐き、その場から逃走をするロバート。雅仁は、追い掛けようとして立ち上がるが、全身に力が入らず、その場に崩れ落ちて、地面に片膝と片手を付いた。
「くそっ!無茶をしすぎか?・・・体が言うことを聞いてくれないっ!」
「無理すんな、上出来やで!」
粉木が雅仁の隣に立って労う。
-本陣町の住宅街(YOUKAIミュージアムの隣町)-
ロバートは、走りながら何度も背後を振り返る。退治屋が追ってくる気配は無い。公園を見付け、水飲み場に駆け寄って水道の蛇口を捻り、ガブガブと水を飲んで乾ききった喉の潤いと落ち着きを取り戻す。
「クソォ!クソォ!クソォ!」
何処でミスをしたのか?答えは簡単だ。揺動作戦を読まれていることに気付かず、退治屋の罠に掛かってしまった。離反者達は、退治屋とアサシンの行動パターンは完全に掌握していた。
ならば、何故、作戦が読まれたのか?今にして思えば、少女が使い魔を見て騒いでいた時に「退治屋の中に、魔術を認識できる者が存在したこと」に気付くべきだった。 「退治屋に出入りをする少女」という、たった1つの未確認要素に、作戦の根底を崩された。
「堀田達に伝えなければっ!先ずは、あのガキ(紅葉)を潰すべきだと!!」
立ち上がり、周囲を見回すロバート。土地勘がない為に、この場所と、身を潜めていた廃ホテルの位置関係が解らない。
「クソォ!同じような汚い家ばかり並べやがって!!」
ロバートは、とりあえず、広い道路を探して、適当に歩き始める。・・・その時。
「フン!かつては、栄誉ある大魔会に所属していた者が、随分と無様ね!」
冷たい声と共に、瞑い気配が周辺に立ち込め、ロバートに影が差す!
電信柱の上・・・複眼を輝かせて大きな翼を広げ、細身に不釣り合いなデスサイズを構えた死神=マスクドウォーリア・リリスが立っている!
「ア、アサシン・・・リリス!!」
「退治屋を観察する為に、もう少し泳がせておくつもりだったけど・・・
戦闘能力を失ったアナタでは、泳がせる価値も無いわね。
そろそろ、本部に、裏切り者を仕留めた報告をしたいと思っていたの。
・・・だから、死になさい!!」
「ひぃぃ・・・ひぃぃぃぃっっっっっっ!!!」
青ざめ、眼に涙を浮かべ、恐怖に引きつった表情で、リリスから逃げるロバート! リリスは電信柱上から飛び降り、両翼で空中を滑るように低空に身を降ろし、みるみるロバートの背後に迫る!そして、デスサイズを振り上げ、マスクの下で表情1つ変えずに振り下ろした!
斬っ!!
「ぐはぁぁっっっ!!」
悲鳴を上げ、両膝を着いて俯せに崩れ落ちるロバート。それは、物言えぬ骸になっていた。
「フンッ・・・ゴミ屑が。」
リリスは、両足を揃えて、静かに地面に着地をして、足下に転がる裏切り者を一瞥すると、背後に振り返り、敗者が逃げてきた方向に視線を向ける。
「歴然とした戦闘能力の差を、気転で埋めたのね・・・。
やはり、表面的な戦力だけでは、判断できないようね。」
リリスは、変身を解除して里夢に戻り、たった今切り捨てたロバートに一見もくれず、その場から立ち去る。
-YOUKAIミュージアム駐車場-
粉木に肩を借りて立ち上がる雅仁。バイク音が近付いて来て、ホンダVFR1200Fを駆る燕真が戻ってきた。
「アイツは元気そうやな!」
「マスクドウォーリアとの交戦は無かったようですね。
彼は解ってるのだろうか?今回は薄氷を踏むような戦いだったことを・・・?」
「さぁな、だが、知ってても知らんでも、アイツらしいんちゃうか?」
残る離反者は2人、まだ不安な要素は山積みだが、今回の防衛戦は成功を収めた。




