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44-1・駅と河川敷の結界崩壊~退治屋混乱

-遡って・文架駅西口-


 B班リーダーの妖幻ファイター(甘利)が、離れた場所から、妖怪同士の人智を越えた戦いを見守る。

「上層部は妖怪と融合する技術を開発したの?」


 妖幻ファイター(甘利)には、眼前の現実が理解できない。


「大武COOの運転手が変身した妖怪は、周りの被害など考えずに戦っている。

 私達が市民を避難させなければ、確実の被害者が出ていたわ。」


 怪物に遭遇した市民は、退治屋先発隊B班の誘導で避難して、ひとけが無くなったロータリー広場で、魍紅葉軍の熊童子&星熊童子と、鬼神軍の八岐大蛇が交戦をしていた。

 星熊童子が、鬼の顔を模した鏃が付いた矢を3本召喚して、纏めて弓に番えて射る!更に、同じ行程を2回続け、計9本の矢が八岐大蛇の周りを自在に飛び回る!


「我が矢に死角無し。」


 9本の矢(親矢)が八岐大蛇を囲み、鬼鏃が口を開いて小さい矢(子矢)が発射され、一斉に八岐大蛇に飛んでいく!


「オロロ~~ン!これがどうした!?確かに死角は無えが、恐れぇ必要も無え!」


 八岐大蛇は、八つの口を開いて四方八方に毒液を撒き散らす!毒液は、子矢を消滅させ、縦横無尽に飛び回る親矢も狙い撃ちにして次々と解かした!


「これで終わりのワケがあるまい。」


 星熊童子は再び矢を召喚して次々と射る!次々と放たれた鬼鏃の親矢が八岐大蛇の周りを飛び回るが、片っ端から毒液で溶かされていく!


「飽きたぞ!他の技を見しぇろ!」

「オマエを楽しませる為に矢を射ているわけではない!」

「こげな児戯では、いつになっても、おらは倒しぇんぞ!」

「さぁ・・・それはどうかな?」


 矢を射続ける星熊童子。飛び回る矢を撃ち落とし続ける八岐大蛇。このままでは、奥義で妖力を消耗させている星熊童子が先に疲弊するのは確実だ・・・が。


「グロロロッ!上にばかり集中しすぎて、足元がお留守だぜ!」


 八岐大蛇の足元の舗装が砕け、地面から太い2本の腕が伸びてきて、八岐大蛇の胴体を掴んだ!


「オロロッ!?」


 地中から巨漢・熊童子が出現!八岐大蛇の胴を締め付けたまま、バックドロップを叩き付けた!星熊童子の矢は、八岐大蛇の八つ頭を全て上空に向けさせる為の揺動。本命の攻撃は、地中の潜って土を掻き分けながら、八岐大蛇の真下まで接近をした熊童子だ!


「言ったはずだ。我が矢に死角は無いとな!」


 星熊童子が残った鬼鏃の親矢に念を送ると、一斉に八岐大蛇に向かって飛んで着弾!更に、熊童子が背中のホルダーから大金棒を抜いて振り上げた!


「極限打撃っっ!!」


 鬼力が込められた大金棒が赤色に変化!熊童子が、渾身の力で振り下ろして、八岐大蛇に叩き付けた!八岐大蛇は悲鳴を上げる余裕も無く、無数の肉塊と化して周辺に飛び散る!だが、まだ全てが終わったわけではない!


〈おのれ・・・口惜しや・・・

 だが・・・死しても・・・目的は果たす。〉


 肉塊が闇霧化をしてロータリー中央の1ヶ所に集まった。そこは、封印の結界が施された位置。八岐大蛇は命と引き替えに呪いを発して、封印の結界を破壊。役割を終え、蒸発をして消えた。これで、4結界中の2つが喪失をする。


「グロロロッ!どうだ星熊!?儂の作戦、完璧だったろう!」

「どこが完璧な作戦だ?

 対象が動き回れば、いくら地中を掘り進んでも全く意味が無い。

 私が奴の動きを止める為にどれほどの苦労をしたのか、解っているのか?」

「グロロロッ!見事な連携と言うやつだな!」

「私の負担が大きすぎる!」

「気にするなっ!」


 鬼の四天王は、人間界を守る為に戦っているわけではない。熊童子と星熊童子は、結界の崩壊など気にせず、手柄自慢をしながら去って行く。




-同時刻・山頭野川東側河川敷-


 身長10mの大太郎法師が、仰向けに倒れた金熊童子を踏み付ける!金熊童子は、脱出を試みるが、押さえ付けられる力が強すぎて抗えず、地面にメリ込んでいく。


「ぐぇぇっ!ヤバいって!潰れるっ!!」

「金!しばらく、そのまま踏まれてろ!」


 大太郎法師は、金熊童子を踏み潰す為に動きを止めている。チャンスと判断した虎熊童子は、大太郎法師の手が届かない距離で日本刀を構え、深く呼吸をする。


「迅雷!」


 虎熊童子の全身が放電!電光石火のスピードを得た虎熊童子が、大太郎法師に突進をする!


「秘剣・・・・・」

「だららぁ~~~~!!!」


 向かってくる虎熊童子に対して、口から高エネルギー波=ダイダラ砲を吐き出す大太郎法師!


「なにっ!うわぁぁっっ!!」


 虎熊童子は、想定外の攻撃を避けきれずに弾き飛ばされた!


「俺、強い!オマエ等、弱い!」


 大太郎法師が、踏み付けていた足に力を込めると、悲鳴と潰れる音がして、金熊童子が闇を喀血する。


「クソォ・・・イバさん、姫様のことは頼んだぞ。

 やっぱ、退治屋の大武って奴は・・・怪しい。

 ただの人間が、大太郎法師みたいな上級妖怪を支配できるわけが無い。」


 力尽きて意識を失った金熊童子から、闇が湯気のように上がる。ダイダラ砲の直撃を受けた虎熊童子からも、闇が湯気のように上がっている。


「俺、強い!俺、勝ち!」


 呆然と戦況を眺めていた妖幻ファイター(七篠)とヘイシ達に向けてガッツポーズを決める大太郎法師。だが、「まだやることが有った」と思い出して、金熊童子と虎熊童子を拾い上げて封印結界へと歩む。


「忘れると、アマノザコに怒られる。」


 大太郎法師は、金熊童子と虎熊童子を封印結界に捧げるようにして握り潰した。贄にされた金熊童子と虎熊童子が闇霧となって封印結界を包み破壊をする。




-優麗高-


 駐車場は退治屋の専用車で占領され、グラウンドには幾つものテントが張られ、優麗高は退治屋の前線基地となっている。


「大武COOは何処に行ったんだ!?」

「破壊された結界がある河川敷に、様子を見に行きました。」

「上からの指示は!?」

「新しい指示はありません!

 反逆者の捕縛と、酒呑童子の一派の討伐・・・のみです。」

「反逆者の情報は?」

「ありません!」

「酒呑一派の情報は?」

「ありません!」

「茂部班が全滅したという情報は事実なのか?」

「未確認です!」


 文架駅と河川敷の結界まで破壊され、責任者も次席もいない前線基地で、退治屋達はパニックになっていた。その様子を粉木&砂影&有紀が眺める。


「やれやれ、酷い有様やの。」

「隊員だけが集められてぇ、指揮官が不在なんて、前代未聞ちゃ。」

「私が引退して離れている間に、随分と腐敗してしまったみたいね。」

「腐っとるんは、以前から変わらん。」

「従事者がそー言うてまお終いちゃ。」


 現状を情けなく感じる反面、統制が取れていないのなら、勝手に動き回っても誰も止める者がいない。

 大武COOほどの人物なら、リーダ不在の拙さを把握できないわけがない。だが、それよりも「別の何か」を優先させて、単独で動いている魂胆も気になる。


「ワシ等はワシ等で、勝手にさせてもらおう。」

「そうね。」


 相槌を打つ粉木と有紀。砂影が不安そうに2人を見詰める。


「勘平、有紀、今の気持ちに偽りは無いのね?」

「なんべんも言わさんといて。私情を挟む気はあれへん。」

「母親としての責任は取るつもりよ。」


 散々、仕事に私情を挟んできた粉木が、頑なに私情を拒んでいる。娘の対応をずっと先送りにしていた有紀が、責任を口にした。砂影には、2人の抱えている辛さが解る。


「なら、私が見届けてやるわ。」


 スカイラインに乗る粉木と砂影、バイクに跨がる有紀。独断で、優麗高(退治屋の前線基地)から出陣をする。




-文架大橋西詰-


 天邪鬼は、自身の希望を託して、燕真&雅仁&佑芽&麻由に見取られながら消滅をする。


「ありがとな、天野の爺さん。

 消えてしまったアンタには、もう聞こえないだろうけど言っておく。

 俺は、紅葉の討伐なんて、絶対に選ばない。」


 天邪鬼からは「気持ちで茨城童子に負けている」と指摘された。燕真には、気持ちで茨城童子に勝つ手段が、まだ解らない。だけど、救ってくれた天邪鬼の意思に答える為に、今は落ち込んでいる余裕など無い。


「この先(亜弥賀神社)にいるのは、COOの秘書(迫天音)だ。

 よく解んねーけど、妖怪化をしやがった。」

「・・・そうか。秘書までが。」


 燕真の報告を受け、雅仁の確信は更に強くなる。退治屋のトップに関係する者が妖怪ばかり。上層部に紛れ込んでいる妖怪が1人ならともかく、それ以上となると、気付かないのではなく、知って支配をしていると解釈するべきだろう。


「佐波木!使え!」


 雅仁はウエストポーチから銀塊を取り出して、燕真に投げて渡す。


「霊封をしてある。連戦になりそうだからな。

 消耗した妖幻システムのエネルギーを補充しておけ。」

「ああ、サンキュー!」


 燕真は、左腕のYウォッチと右手で握った銀塊を交互に眺め、雅仁&佑芽&麻由は、燕真を眺めながら待つ。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」×4


 1分ほどYウォッチと銀塊を眺め、燕真は申し訳無さそうに雅仁を見詰めた。


「ありがたいんだけどさ、どうやって補充するんだ?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」×3


 霊的スキル0点の燕真は、銀塊に込められた霊力の解放方法など習っていない。


「・・・よこせ、俺がやる。」

「す、すまん。」


 燕真は、恥ずかしそうにYウォッチと銀塊を雅仁に渡した。妖幻システムの充電時間を有効活用して、以後の方針を打ち合わせる。


「大武COOは黒で決定だな。」

「・・・だよな。どう考えても、今の退治屋はおかしい。」

「魂胆を暴けば、粉木さん達の協力を取り戻して、四面楚歌を脱却できますよね?」

「さすがは優等生の葛城さん。確かにその通りだ。」

「でも、どうするの?紅葉ちゃんのことは後回しにするの?」

「紅葉ちゃんのことは心配だが、

 退治屋を味方に付けて動きやすい状況を作るのが最優先だろうな。」

「大武COOはどこにいるんだろう?亜弥賀神社?優麗高?もっと別の場所?」

「所在が解らない大武COOを探し回るのは、リスクが高すぎる。

 確実に所在が解っている秘書を叩いて、大武の情報を得よう。

 ・・・それで良いな、佐波木?」

「うん。俺のワガママを押し通してられる状況じゃなさそうだもんな。」


 雅仁が、妖幻システムのエネルギー回復を終えて燕真に手渡した後、鎮守の森公園(亜弥賀神社)に向かう為に、それぞれのバイクに跨がった。


「ん?」 「え?」 「なに?」 

「どうした?」


 嫌なプレッシャーを感じて、動きを止める雅仁&佑芽&麻由。その直後に、文架駅の封印結界が砕けて、文架市街を支配する妖気が強くなる。更に十数秒の間を置いて東河川敷の封印結界も消えて、妖気の重圧が3人に重く伸し掛かる(霊感ゼロの燕真は気付かない)。


「4結界のうちの3本が喪失・・・。

 どのみち、残り一つの封印結界がある亜弥賀神社に向かわねばならないようだ。」


 大武COOが「妖怪に利用されているだけのマヌケ」ならば、生真面目に最後の結界の防衛に動く。「妖怪を操る黒幕」ならば、最後の結界を破壊する為に動く。そちらの線でも、鎮守の森公園(亜弥賀神社)に行けば、大武COOと接触できる可能性は高くなった。





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