92話 情報共有
2日目。朝は6時起床だ。流石はワンゲル部と言うべきか、朝起きた時には既に荷造りは済んでいた。全員前日の夜の内にパッキングなどを全て終わらせてしまったのである。枕元に置いてあるのは夜スマホやゲーム機などを弄る為の充電ケーブルと、小腹が空いた時様の軽食、そして、それを仕舞う予定のフリーザーバッグが置いてある。
これならば宿を出る直前までゲームなどをしていても、フリーザーバッグに詰め込んでザックに仕舞う事で、再度忘れ物の確認が出来る上、ゲーム機もフリーザーバッグに仕舞うだけなので手間取る事も無い。俺もだが、俺達ワンゲル部は既にフリーザーバッグ教に支配されてしまっていた。一度フリーザーバッグの便利さを知ってしまったら最後。フリーザーバッグを日常生活でも使ってしまうのだ。
フリーザーバッグに物を入れておくとフリーザーバッグ自体が透明な為、外からでも何が入っているか一目瞭然。高い方のフリーザーバッグであれば、そっとやちょっとで破れず、長期使用可能。コンパクトに荷物を纏められる。雨に晒されても中の物が一切濡れない。こんな便利なものを手放せる訳が無かった。
朝起きてすぐ敷布団を畳み、朝食を宿で頂く。
やはり、テントと違って寝起きはかなり良い。何よりも足を伸ばして寝れると言うのは最高だった。だが、何故か昨日よりも俺の脹脛は張っていた。仕方なく足に湿布を貼り、タイツで上から湿布を固定する。タイツはこう言う長期移動の際に筋肉を冷やさない効果がある上、行動をあまり阻害しない為便利だ。中には締めて、スポーツアシストを行えるタイプのタイツもあるが、俺はあの締め付け感があまり好きでは無い為、高山を登る時の温度補助用のタイツを使っている。このタイツは高山などで長ズボンの内側に履いて使う。
朝食は海苔とご飯。卵焼き、焼き魚、お味噌汁などの和食で朝あまり食べられない俺にとっても優しい食事だった。どちらかと言えば俺は朝はパン派なのだが、手作りの温かいご飯が自分達は配膳をするだけで食べられると言うのは幸せ以外の他には無い。
頂きますの挨拶は松村先輩が務めた。朝から下ネタを言って大滑りしていたのは言うまでも無いだろう。
そして、朝食を食べ終わり、俺達は出発の準備を始める。第一陣の出発予定時刻は7時。もうすぐだった。最初にアイス屋さんに輸送されるのは足の遅い一年生だ。移動速度の速い上級生は後で輸送される。
とは言え、今日は美術館鑑賞が義務付けられている為、美術館鑑賞を行ってから商店街で再び集合する事になるだろう。そして、歩くチームは昨日歩いた感じで大体固定化されていた。俺は山田と濱内の三人である。
今日の行動予定は生口島で美術館鑑賞を行い、そこからは自由行動で商店街を抜けて、しまなみ海道サイクリングルートである海岸線に出てそのルートをひたすら歩き、大三島、伯方島を通り大島で宿泊する。
俺達は先にアイス屋さん付近に輸送され、歩き始めた。時刻は7時10分。まだ、気温は肌寒く、日差しも弱い。美術館までの道のりは約2.5キロメートル。俺達の足でも歩いて30分程度の場所にある。道中にオーゾンや、カミリーマートがあるが、美術館は当然飲食物持ち込み禁止の為我慢するしかない。飲み物はその先にある商店街に自販機があるのでそこで購入すれば良いだろう。そもそも、先ほど飯を食ったばかりなのだ。軽食は必要無かった。
朝の俺はテンションが低い。それは横の二人も同じであった。特に、山田は寝起きがあまり良く無い様子で目を眠そうに擦っていた。俺達がしばらく歩き始めてから後方から騒がしい声が俺達の耳に届く。
先輩達は朝から信じられないくらいハイテンションであった。朝から下ネタや、海水浴や、今日のお楽しみ会、釣りなどの話などが飛び交っており、みんなでワイワイしている様子が離れていても伝わる。
……って海水浴!?話を聞く限り、伯方島辺りにビーチがあるみたいだが、山中先輩はこの真冬の海に飛び込むつもりらしい。当然今はオフシーズンであり、海水浴場は開かれていない。そして、ある先輩は泳ぐ山中先輩の隣で魚釣りを行う予定であった。
そして、当然今回のしまなみ海道縦断にそんな時間があるとは思えない。それ故に彼らは美術館を抜けてすぐ走る必要があった。今日の歩行予定距離は約25キロメートル。昨日より少ない上、登山行動も無く、朝出る時間も早い為、時間には余裕はあるものの遊ぶのに十分な時間があるとは言えなかった。
それに寒中水泳をするとなったら服も濡れるし、後始末も大変だ。今の季節更衣室などを開放している場所もない。外でパンツを脱いで着替えられる場所が無いのに彼はどうするつもりなのだろうか……。俺はそれがただ単に気になった。
今日の行動は途中からかなり団体がバラけると予想された。それ故に参与二人だけでは場所を把握出来ない。その為、俺達はケータイで一連絡を定期的に取り合う事にした。チームに一人はスマホを使える人がいる事は前提であるが、その条件はほぼ全てのグループが満たしていた。スマホにあるグループチャットにそれぞれが位置情報を投稿する事で場所が随時把握出来るのである。
そして、その情報は定期的に上級生の先輩が文字で纏めて参与の携帯電話に転送する。これで教員も位置を把握出来る。山で行なったトランシーバーによる連携。俺はこれに近いものを感じた。
スマホのLINEなどのグループ機能を使って位置情報を定期的に共有する事で安全性が高まります。




