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91話 サプライズパーティー

  飯を食った後俺達は三人ずつ風呂に入った。浴場はあまり広くない。一般家庭の風呂より少し広い位だ。風呂にはレモンが浮かんおり、風呂の扉を開けるのと同時にレモンの良い香りが鼻を刺激する。


  だが、先に入った茂木とかが、レモンを握りつぶした影響で風呂の湯船には種子などが大量に浮かんでおり、汚い。ふざけんな。数十人が入る湯船の為、基本は最初に体を流してから湯に浸かる。


「ふぁ……気持ちいい」


  蕩けそうだ。しまなみ海道は比較的暖かいとは言え、真冬に道路を歩き続けたのだ。身体はかなり冷えてしまっていた。それ故に湯船に浸かると同時に俺の口から声が漏れた。


「湯の温度上げて良い?」

「勿論。と言うか上げて欲しい」


  膝を抱えて湯船に浸かっている山田が蛇口を捻る。それと同時に熱いお湯が湯船に注がれた。暖けえ。身体の芯から温まる様だ。湯船の温度が上がり、レモンの香りがぽわっと周囲に漂う。俺が感慨に浸っていると洗い場で身体を洗い終わった濱内がシャワーを止める。その刹那。彼を覆い隠していた湯気が剥がれ、彼の巨大なブツが姿を現した。Oh……。デカい。何がとは言わないが、あれがデカい。そう言えば、夏合宿終わってから濱内のブツがデカいって言う噂があったな。あまり気にしてなかったが、実際に見てみると壮観だ。


  男として競うつもりは無いのだが、彼のがあそこまでデカいとこちらが自信を失いそうである。全員童貞で尚且つ、男子校である故に中々使う機会は無いとは言え、男は何かと大きさでマウントを取りたがるものだ。本人も気にしてそうなので口には出さなかったが、若干悔しかった。


「次誰洗う?」

「ああ、俺行くわ」


  湯船には三人入る事が厳しい。その為、一人は洗い場で身体を洗っている必要がある。俺は最後にゆっくりと湯船に浸かりたい為、次に身体を洗う事を宣言した。


  身体を洗い終わり、俺は再び湯船に浸かる。山田が身体を洗い終わると山田は二人いる湯船に足を突っ込んだ。ゑ?お前マジ?


「え、入れる?」

「体操座りで何とか」


  次の風呂組が後ろに控えている為、長風呂は出来ない。だから少しでも長く湯船に浸かっておきたかった。体操座りで湯船に浸かる俺達はもどかしくなって笑う。肌を密着させている影響か、湯船の温度はかなり下がり、温くなってしまっていた。


「もうそろそろ出るか」

「そうだな」


  湯冷めしても良く無いので俺達は湯船から上がる。そして、部屋に戻った。


  部屋では殆どの人が布団を広げて携帯型ゲーム機などを使って遊んでいた。今の時代、携帯型のゲーム機を持っていない人は少数派である。携帯型のゲーム機が無くても、スマホゲームだってできる。トランプなどを持って来ている人も居た。そんな中、速瀬が持って来て居たのは簡易麻雀台だった。俺はルールや役を知らない為、分からないが数人は普通に打っていた。


  あんな遊びもあるのか、俺は新たな世界を見た気がした。


  そして、天咲と山猫、雲井などが風呂に行った瞬間、青空が口に人指し指を当てた状態で俺達を集めた。


「今日って確か天咲の誕生日だろ?だからサプライズケーキ持って来たんだ」

「おお!?」

「これで天咲祝って、みんなで食べようと思うんだけどどう?」

「良いな、それ」


  何と青空は天咲の為にサプライズを用意していた。これは青空、雲井、速瀬、山猫達で計画した事だそうでお金を出し合って買ったそうだ。そうか、だから速瀬お前メインザックで来ていたのか……そりゃ、麻雀台とホールケーキ入れてたらサブザックじゃ入らんわな。例え、入ったとしてもホールケーキはぐちゃぐちゃになるのが見えている。ドMとか言って悪かったな。


「速瀬、ケーキは無事か?」

「すまん。半分死んでる」

「まぁ、食えればオーケー」


  速瀬はカバンから小さめのホールケーキを取り出した。ホワイトベースの一般的なイチゴのケーキ。そのケーキのスポンジは半分傾き、イチゴは箱の中に落ちていた。中にドライアイスを仕込んでいた事や、季節が冬と言う事もあってケーキ自体は腐ってはいない。形は悪いが食べれたら大丈夫だろう。


  ケーキを机の上に広げ、俺達は天咲が風呂から上がるのを待つ。



  十分程が経過すると若干不機嫌そうな天咲が姿を見せた。どうせ山猫に風呂で何かイタズラされたのだろう。懲りない奴だ。だが、今から君のその感情は喜びに変わるだろう。何故ならば……。


「天咲!誕生日おめでとう!」

「え?」


  青空達はどこから持って来たか分からないクラッカーの紐を引いて天咲を祝福した。それに対して天咲は何が起こったか分かっていないと言う状態で固まった。


「さっきは悪かったな。俺のみかんやるから元気出せよ」


  山猫は天咲をケーキの正面にアプローチしつつ、直売所で購入したみかんを手渡す。


「ありがとう!」


  そこでやっと状況を把握した天咲は思いっきり笑った。その笑顔はこの合宿の中で一番の笑顔だった。


「良し、カップのお皿とジュースは買って来てるからみんなで切り分けよう」


  速瀬は近くのオーゾンで2リットルの炭酸飲料と非炭酸飲料を購入していた。合計4リットルの荷重込みでも一切疲れた様子が無いのは流石の速瀬と言った所だろうか?


「あ、それ卵使ってる?」

「うん……」

「ま、まぁ、そう落ち込むなって。ミカンやるからさ」


  ケーキは購入から冷蔵庫に入れたりして少し時間が経っていた為、固くなっていたがサプライズパーティーは大成功に終わった。だが、卵アレルギーの茂木だけケーキを食べる事が出来ずにひもじい思いをし、慰めに山猫から貰ったミカンを頬張る羽目になったのであった。

 


柚子風呂などは有名ですが、レモン風呂も中々良いですよ。


ケーキなどをサプライズで使う場合には宅配便に予め輸送して貰うのが良いかもしれませんね。

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