74話 出題意図
道はほぼ直線で迷う事は無い。傾斜はかなりキツく、岩がゴツゴツしているもののペースが今回はゆっくりの為か不思議とキツさは感じなかった。道中赤いがくが特徴的である植物の臭木などが目に入るも、季節的にも植物の数はあまり多くは無い。
登山道を登り始めてから約一時間。俺達は顕現寺山山頂に到着した。道中では既に読図ポイントがいくつか出題されており、その問題を解いた。斜面の途中に仕掛けられている読図ポイントは少なく鞍部にポイントが仕掛けてある事が多い傾向を俺は掴んだ。
傾斜がある場所よりも傾斜の無い場所の方がポイントを掴みにくいのは当たり前だった。とは言いつつも当然、斜面にも読図ポイントは存在した。斜面は斜面でも、緩急が無い場所ではポイントを絞りにくい為だろう。だが、出題者は意図無しでは読図ポイントは出さない。必ずどこかにポイントがあるのだ。今回の日帰り登山は中学生に於いては、今いる地点を当てる!って言うよりは読図ポイントの出題傾向、出題意図を掴む為の登山である。
出来れば現在地もしっかり当てて行きたいが、今回に限って言えば練習なので、読図ポイントの出題意図が掴めていれば良しなのだ。案外それが俺みたいな素人には分からないものなのだが、そこを鍛えてこそなんぼである。これに関しては1日、2日で習得できるものでは無い為、気楽に考えた方が良さそうだ。
顕現寺山を抜けた俺達は一旦、山を越え、反対側に出てゴルフ場沿いに車道を通った。こちらの下山ルートに入ると生い茂っていた植物達は一気に数を減らし、展望は拓けた。まだギリギリ紅葉の季節だ。落葉広葉樹達は落ちそうな葉っぱを必死に幹や枝に付けていた。ピークは既に過ぎたのだろう。葉の色は既に黄色や赤というよりかは褐色に近かった。
そして、車道に出た俺達は再び峠を登る。このルートは再び顕現寺山に戻るルートである。顕現寺山を中心に二つのルートを使い、ぐるっと回る。これが今回の登山ルートだ。道を引き返してから一時間。再び俺達は顕現寺山山頂に降り立った。
時刻は12時。丁度飯の時間だ。山頂からの展望はあまり良く無い。周囲には五百メートル級の山が沢山あり、それが見て取れる。市内方面は山の垣根などが邪魔して良く見えない。言うて標高も五百メートルの為、町の家々もそれなりにはっきり見えた。風もあまり吹いておらず、山というよりかは茂み。と言う印象である。
飯を食い終わった俺達はまた別のルートで下山する。こちらのルートは行きに来たルートの方向に帰る。つまり、俺達は今元来た駅に向かっているのだ。だが、道は全く違う。最初のルートは竹林が周りを覆っている尾根を登るルートだったのに対して今から俺達が進むルートは顕現寺山から少し下るまでは尾根を進むのだが、途中でトラバースを行い、谷に切り替わる。俺はそこのポイントに印を付けた。
間違いなくここは読図ポイントとして出題される。俺は確信を持っていた。
俺の予想は見事に的中した。読図ポイントとして出されたのはトラバースから谷に切り替わる場所だった。谷を下ると周囲には田畑が広がっている。田畑を越えて車道に出るとあとは線路沿いに駅まで戻るだけである。
読図ポイントは結局20ポイント出された。ルート行程の短さの割には詰め込んだものである。そのお陰か、出題意図が読み取れない無理矢理な読図ポイントはいくつかあった。だが、今回の主な目的とは違うが、読図技術はどこであっても自分がどこに居るか分かる様にする為の技術である為本来であれば、それも分からなくてはならない。
しかし、俺でも半分……いや、三分の一位は当てる事が出来た為、少し自信を持っていた。そんな中、高校生の先輩達の採点と講評会が行われた。高校生の先輩達は班を組んで読図バトルを行った。勿論他班との情報交換は禁止、顧問などの途中解説、ヒントは無しである。一問0.5点で10点満点だ。
その結果トップのチームは10点満点の得点を叩き出し、最下位のチームでも16点と言う高得点だった。それでも講評会では顧問にボコボコに言葉で叩かれ、厳しい評価を食らっていた事から俺がたったの3割しか正解出来ていないのに胸を張っていた事が恥ずかしくなった。
だが、確実に前よりかは成長している。俺はそう思いたかった。
講評会が終わった後、現地解散になった。時刻は15時前。かなり早かった。俺は脚をさする。これくらいなら全然大丈夫だ。でも楽しいかって言われたらそうでは無いな。展望もあまり良くなかったし、読図も疲れる。ただ次の合宿は絶対行きたい。俺は『しまなみ海道縦断』と書いてある紙を持って頬を緩ませた。
この合宿はその名の通り中国地方と四国地方を繋ぐしまなみ海道を歩いて渡る合宿だ。全歩行距離は80キロメートルと長いが、渡されたプリントに映っている去年の先輩達は最高の笑顔をしていた。この合宿の参加には申し込み用紙が必要だった。
この申し込み用紙の提出期限は第2回定期テストの前。その為、俺が合宿に行くのを禁止になる前だった。合宿をキャンセルするのは部活に迷惑をかけてしまう。それ故に流石の親でも禁止する事は出来ないだろう。ただどっちにしろ、冬休み手前に第3回テストがある。これでいい点取ればいい話なのだ。俺はそう思い、電車の中でガラケーを開き、メモ欄を取り出す。
「よし、今度のテスト内容纏めるか」
俺はカバンの中に忍ばせておいた小さな教材を取り出し、編集作業を始めた。
キャンプサイトでは無く、集団で宿を取ったり食事をする場合はキャンプ場よりも予約に日数が必要になります。宿泊場所などの予約は早めにするのがオススメです。




