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60話 成績不振

  時は過ぎて六月も中頃に差し掛かる頃。俺は頭を抱えていた。


  終わった。完全に終わった。国背先輩の兄率いる志道学園A隊は県総体を優勝で飾り、和かな表情を浮かべていたが、それとは対照的に俺の顔は完全に死んでいた。


「お、お前もか、俺もセミナー確定だわ。ははは」

「お前何位やった?」

「下から3位」

「そうか。俺は下から40位だ」

「お、仲間じゃん」


  前の席の安田が和かに笑いながら気にするなとでも言うように俺の肩を叩く。やめてくれよ。お前と一緒にするんじゃない。定期テストの平均点は七割五分。それに対して俺の点数は六割五分を少し割る位の点数であった。前回月例テストの時に言っていた次挽回すれば良いとは何だったのか……。俺は屈辱に自身の唇を噛みしめる。


  それに妙に安田が気に落ちていないのも無性に腹が立った。ただの八つ当たりである。


「あー。入学した時はそこそこだったのにな」


  嘘である。いや、強ち嘘では無いのだが、嘘である。この学校には補欠入学者がそれなりにいる。だが、俺は正規入学者だった。だから最下層では無い。だが、だからと言って上位でも無い。真実は分からないが多分下層だろう。社会科一つ吹き飛ばしているのだ。下層でない訳が無かった。


「そうだな。俺も岡山の青陵せいりょう学園に通ってたんだけどな」

「え、マジで?」


  嘘だろ?安田があの青陵学園にか?俄かには信じられない。青陵学園は岡山県の中高一貫の偏差値73を誇る超進学校だ。安田は福山に住んでいる為、岡山県の青陵学園は近い。だが、安田はこちらの学校に魅力を感じた為こちらに来たという。何でこっちに来たんだよ!と言うかお前地頭は良いのな。


  確かに安田は地頭は良かった。頭の回転率などを見てみるとクラスの中でもトップクラスに偉い。だが、中身は割とトチ狂っており、何をしでかすか分からない性格だった。普段はニコニコしているが、怒らすと本当に何をされるか分からない。そんな奴だ。この前も安田は学校にメリケンサックと果物ナイフを持って来ており、学校から注意を受けている。


  家庭科の時間にシャーペンの芯をコンセントに突き刺して発火させたり、音楽の時間にいきなりダンベルが入った筆箱で頭を殴ってくるなど異常な行動は周りから見てもかなり浮いていると言える。普段はおちゃらけていて可愛い性格なんだけどなぁ……。スイッチが入るとまるで狂犬と化す。


「だけど、ここに入ってから勉強殆どしてないからな。今は全然成績伸びないな」


  それだよ!お前のテスト悪い原因全部それだよ!何でだろうなって顔してるけどそれしか無いから!それに対して俺は周りより勉強をしているかと言われたらしていないが全くやっていない訳では無い。安田は毎日宿題をやっておらず居残りさせられていた。部活は文芸部しか所属していない分、放課後居残りした所で本人としては大した問題にはならないのだろう。


  文芸部も忙しそうに見えるが志道学園の文芸部は廃部寸前であり、今年俺達の学年で10人近く人が入った為、何とか部の廃部を免れている。ただ上も人数がいない上、学生文芸コンテストには応募していない為、文化祭位しか出し物をしない。その為周りからはジャグリング同好会と同じ様に遊んでいる様に見えるのだ。実情は知らないが。勿論ジャグリング同好会にもガチで大会を目指している人もいる為全員がそうとは限らないが、ジャグリング同好会も既に三分の一が幽霊部員となっている故に俺は安田の性格と照らし合わせて勝手にそう思ってしまったのだ。


  彼も家が遠いのに良くやる事だ。彼の家は俺よりも遠い。毎日新幹線通学である。片道二時間、往復で合わせて四時間の道のりであった。


「土曜学習会嫌だなぁ。移動時間だけで三時間だぜ」

「分かる。それだけが苦痛だわ」


  その為、移動時間の話では安田と俺は話が合う。ここは大きな共感のポイントであった。





  六月末のワンゲルのミニ合宿。俺は親に成績の事で咎められながらもお金を何とか出して貰い、合宿に行く事が出来た。目的地は琴敷山ことしきやま。島根県にある山だ。気温は暑くなっていたものの、体力が前より付いた影響か、以前登った木場山よりかはしんどく感じなかった。登山コースも木場山程長く無く、スキー場から見える景色は絶景であった。


  湿度は夏にしては木場山と比べて低く登りやすい印象を受けた。そこで俺は基礎体力は大事だと悟った。少し体力が付くだけで登っている時の俺の顔には若干ではあるが笑みが溢れていた。山を楽しむ為には身体の余裕が必要なのだ。


  だが、しんどい事には変わりはない。出来れば俺は休みの日はゲームでもして家でゴロゴロしておきたい。そんなタイプの人間だ。それでもたまには山へ出向いてみても良いかも知れない。俺は2回目の山合宿を通じて学んだ。飯担当はチームメンバーがコメ職人では無かった為、前ほど上手く炊けなかったが不味くは無かった。


  今回の合宿は一年生の体力面も考えられて作られている様で、日曜日は学校に早めに着いた。その影響で後片付けは全部その日の内に終わらせる事が出来た。次の合宿は夏合宿。当然。俺は行けない為、帰りの電車で登山の予定表を見て肩をがくりと落とした。


想定以上に一年編が長引いて中々大会編には入れないので代わり映えなさそうな合宿はダイジェストで省かせて頂きます。次主人公がいくワンゲル行事は合宿では無く、日帰りで行う沢登りの予定です。


補足ですが、元にした学校の偏差値などは中高一貫校の為、高校データを元にしています。ネットでのデータですので、単純にああ、このレベルの所ね。程度で流し見して下さい。一応仮名を使ってますが、存在しない団体や山と言う設定ですので……。


※地名は実在する場所を使っている場合もあります。ご了承下さい。

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