↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
59/122

58話 半運動部

 金曜日 今日は曖昧な空模様であった。


「うわー。何が雨降りそうだな……」


  雨が降った場合ワンゲル部の練習は基本的に中止となる。自主練なども無い。この前天気図講習会を受けたとは言え今の俺では流石に雲を見ただけでは今後の天気は予想できなかった。


「明道……どう思う?」

「一応行ってみようよ。練習中止だったら引き返せば良い事だし」

「それもそうか」


  俺は渋々制服のカッターシャツのボタンを外し、体操服へと着替える。それに対して明道は着替えるのが速い。


「先行っとくよ」

「うん。すぐ追いつく」


  明道の奴……彼はまだワンゲル部の練習に嫌気は差してないみたいだ。そもそも元々彼は運動が嫌いそうでは無いし、それも妥当か?俺は部活に入部して三週間程度しか経過していないにも関わらず、既に嫌気が差していた。どうせなら雨が降って練習が中止になって欲しい。そんな俺の想いとは裏腹に彼はそんな事は微塵も考えては居ないだろう。


  例え部活があったとしても最寄りの公園でサッカー。これならば俺は嬉しい。そんな淡い期待を抱きながら服を着替えいつもの集合場所へと俺は出向いた。


  時刻は4時半過ぎ、いつもの集合場所には殆どの中学生が集まっていた。当然、湖穴の姿はここには無かった。奴はミーティングに数回参加しただけで、最初以降部活に来ていない。孤島は前回合宿には来なかったものの練習にはちゃんと参加していた。もう既に脱落者が出るとはな……次の脱落者が出るのも時間の問題だろうな……って今思ったが湖穴の奴練習も最初のサッカーだけだし、登山合宿来てないし、どこで嫌気感じたんだ!?


  もう少し来てから判断しろよ!もう既に嫌気が差して来ている俺が言うのもアレだが湖穴の行動は俄かには信じがたかった。最初から変な雰囲気を放つ奴だとは思っていたが想像以上だ。ワンゲル部なのに登山合宿にすら一度も参加していないのに止めるなど何を求めて入部したんだ?って話だ。彼は説明書を読まないタイプなのか?俺は露骨に彼の事が気になったが、俺も人の事をとやかく言える立場では無い為ここら辺で意識を落ち着けた。


「うーん。雨降りそうだね。じゃあ今日は吉島の公園でサッカーしようか」

「……?」


  どうやら今日は練習があるみたいだ。それに新しい場所だ。そこは志道学園から距離にして850メートルの場所にある近場の公園だ。川沿いをこの前宇品に行った時とは反対の向きに向かって俺達は走る。


  そこに着いたのは五分後だった。かなり距離は近い。最寄りの公園などと違って人通りは少なく駐車場なども無い為、車にボールをぶつける可能性も無さそうなその場所には野球用と思われる金属フェンスまで設置してあった。


  へー。サッカーをするのには中々良さそうな場所じゃん。俺はそう思った。最寄りの公園は地元の少年サッカーチームなどが使っている事が多く、俺達は主に裏の広大な駐車場でサッカーをしている。それ故にいつもボールが車に当たらない様に細心の注意を払う必要があった。当然駐車場の為、そこは最寄りの道路に直接繋がっており、ボールが転がっていくと道路にハミ出る危険性も含んでいた。普通に俺達が普段やっている事は迷惑である。


  それに比べて今回の吉島の公園はフェンスが全面に敷き詰められており、人も少なく車が入れない場所の為、安全と言えた。サッカーゴールの代わりとなるのは金網である。金網の脇のポールとポールの間をゴールと定め、サッカーを行うのだ。高さも金網のポールを参考にする。最寄りの公園でやっていた時は丁度良い場所に杉の巨木が二つ立っている為、それをゴールに見立ててサッカーを行なっていた。高さは目測である。


  俺達がゴールに入ったと言い張ればゴールなのだ。






  俺達がサッカーをし始めてから一時間。雨が降り始め、俺達は公園から撤退する事になる。雨でびしょびしょになりつつも学校に避難した俺達は解散の指示を受けて解散した。現在時刻は五時四十分過ぎ、まだ時間は十二分にあった。


  俺は濡れた体操服を袋に押し込み、近藤を探す為に中庭へと向かった。


「……どこだ?」

「ああ!山川君こっちこっち!」


 俺が中庭付近でウロついていると偶然、飲み物を自販機に買いに来たジャグリングの先輩と鉢合わせた。先輩は俺が近藤を探している事に気が付いたのか、俺を第一化学室へと案内した。


 当然雨の為、中庭では練習は出来なかったものの、顧問の先生が代わりに化学室を貸してくれたお陰で雨の日でも練習が可能だった。化学室が借りれない時はいつも中庭付近の廊下下などで練習しているらしい。


「ここ天井低いから特にディアボロはぶつけないでね」

「分かりました」


  当然ながら派手な技は室内では出来ない。コントロール能力があるならまだしも俺にはまだ無理だ。


「お、山川今日は雨だから練習無かったのか?」

「まぁな。と言うかこの髪見たら分かるだろ」


  俺の髪は雨に打たれ、見て分かる程にしっとりと濡れていた。


「という事は途中までは行ってたのか。運動部は大変だな」

「まぁね。でもサッカー部とか野球部は雨降ってても走り込みとか基礎体力トレーニング続けてるからまだこちらは甘い方だよ」


  そうなのだ。まだ甘い方なのだ。サッカー部や野球部は雨が降っていても屋外で練習、バスケ部などは雨が降っていてもいなくても屋内で関係無いので練習。運動部に普通休みは無いのだ。彼らは土日すら練習に己を費やしている。それに比べれば……ワンゲルはまだ運動部と言うには微妙なポジションであった。俺はそれを考えた時、ワンゲル部の練習に対する嫌気が少し褪せた様な気がした。


登山部は参加校が少ない事や競技知名度の低さから大会とかでもサッカー部とか野球部と比べられて舐められがちですね。弱いチームはお遊び登山のレベルで本当にやる気無いので強ち間違ってないのですが、ここら辺の皮肉は大会編でちゃんと書きます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。