54話 天気図講習会 4
「さぁて、天気図講習会もそろそろ終盤だ。ここからが重要だから良く聞いててね」
何でそんなに嬉しそうなんだよ。俺達はもう疲れたっての。為にはなるが、無駄な説明が多いからか俺達は完全に飽きてしまっていた。手引書に全部書いてあるんだから後でそれ見ててね。はい解散でいいじゃないか。俺はそんな適当な事まで考える様になっていた。
「等圧線の前にちょっとごめんね。大事な事言うの忘れてた。予報円とその中心……つまり、真ん中に×印を描く奴が読まれた場合は何時間後のものかを明記の上で、該当気圧の現在の中心からの軌跡を含めて必ず記入しなければいけない。この時に予報円を描く位置に関してなんだけど、これは緯線の間隔を利用して書いてね。世界地図が、ユニバーサル横メルカトル図法なのは小学校の時塾です習っただろうからみんなは当然知ってるよね?」
大分知識的には忘れているが覚えている。確か、この図法だと高緯度帯の面積と赤道付近の地形の面積が大きく違ったりするんだっけ?あと方位も東が真横では無かったりすんだっけ?だけど、その角度は等角航路……つまり多少遠回りではあるが、経線の方向に対して、決まった角度で地図通り真っ直ぐ進めば目的地に着く事が出来る。地球が丸い。それ故に地図を作るのも面倒なのだ。
「だけど、天気図で使われてる図法はポーラーステレオ図法……別名平射方位図法って言ってね、地球に接する平面の反対側に光を置いて投影する図法なんだ。要するにステレオ図法の一種だね」
成る程。分からん。俺が受験の時習ったのはサンソン図法、モルワイデ図法、グード図法、メルカトル図法、正距方位図法。この5つ位だ。ポーラーステレオ図法なんて物は知らない。
「難しく考えなくて良いよ。これも正角図法の一種だからメルカトルとほぼ一緒と考えて貰って良いよ。この地図は角度が正しいから衛生地図などにも使われているね。オレ達が使っている地図は日本中心だから、正しくはポーラーステレオ図法では無いんだけどそこら辺は気にしなくても良いよ。だから覚えるのはこの天気図記録用紙の緯度間隔が二度間隔だからこれを目安にして予報円を書けば良い。何時間で何度動くみたいな時間の計算位は流石に自分で出来るよね?経線間隔は場所によって違うからアテにしちゃダメだよ」
地球は一日で三百六十度回転する。その為、一時間隔で地球は十五度回る。これ位の計算は流石に余裕である。他の言っている事は全く分からないが、余計な話という事なので聞く必要は無いのだろう。
「予報円についてだけど、色の指定は無いから何色でも良いよ。ニュースとかで良く見る台風の暴風域に関してだけど、あれは放送された場合は欄外にデータを記入しておくだけで良いよ。霧の海域とか強風の海域もしばしば放送されているけどそれに限っては記入する必要無いから聞き流してしまってオーケーだ」
一気に情報を喋った国背先輩は一息ついてから大きく息を吸った。やっとか。
「そして、今からお待ちかねの等圧線の書き方について説明しよう」
誰も待っていない。とは言わないが一年生が誰も待っていないのは確かである。
「等圧線は鉛筆又はシャープペンシルで書いてね。等圧線を描く間隔はオレ達の中では2hPa毎に描く様にしてる。登山の大会の基準がそれだからね。普通は4hPa毎に描くことが多いよ。放送の最後に基準等圧線って呼ばれる物があるんだけどね、それが最重要項目だ。これ聞き逃したら終わり。と言っても過言じゃ無いね」
基準等圧線?何が聞いたことある単語だ。
「基準等圧線ってのが何かと言うとその天気図を描くにあたって基準になる等圧線の事で、これを元にして周囲の等圧線の形を考えて行く目安になる線の事だ。別に1013hPaの標準大気圧を示している訳では無いからね。これは最後に放送するって言う関係性もあってラジオの放送時間の残り時間の関係でアナウンサーが早口で読む事がある。だから慣れてても位置を欄外にメモして放送終了してから地図にアタリの点を取ってから描く事をお勧めするよ」
俺はそこでハッとした。そうか。ラジオの放送って生放送なのか。その日の情報を出来るだけ早く伝達しなくてはいけないんだからそれもそうか。
「次にやるのはメモした基準等圧線の位置通りに点を鉛筆で滑らかに結びつける。この時に最初に記入した地形の気圧の数値があるでしょ?あれと矛盾を起こさない様に結ぶ。この次に高気圧と低気圧の中心気圧を示す等圧線を引く。高気圧と低気圧は必ずその中心気圧お同じ値の閉じた等圧線に囲まれているから丸で囲むイメージだね。高気圧は少し広め、低気圧は少し狭めに囲ってあげてくれ。そして、ここからが一番難しい所だよ。ここは慣れてても本当に難しくてオレでも上手く線を引けない」
俺達は固唾を飲んだ。もうすぐ天気図講習会が終わるって事も要因の一つなのだろう。だが、それ以上に国背先輩でも難しいという要素が純粋に気になっていた。
「各地のデータと照らし合わせながら、基準等圧線や、先程引いた線を元にして用紙全体のすべての等圧線の位置を2hPa置きに等分して推定する。これがめちゃくちゃ難しい。この作業は絶対に行き当たりバッタリで適当に線を引いてはいけない。等圧線の間隔は基本的に等間隔が原則だけど、高気圧に近い場所を間隔広め、低気圧に近い場所を間隔狭めに描くとより現実に近い天気図の様な見た目になるよ」
国背先輩は地図を照らし合わせながら自分で書いた地点の気圧を読み取り線のアタリをつけて行く。もうどれがどの線だか分からなくなりそうだ。俺が目を回している中国背先輩は笑顔で授業を進める。まだ天気図の話は続くのか。俺は話の途中にも関わらず頭を痛めた。
あと少しで終わります。すみません。
予報円(地図図法の話は省きます)……何時間後かを記入後、現在の中心からの軌跡を含めて必ず記入。緯度を頼りにして描く(十五度で一時間)。色は何色でも可。
等圧線の記入……基準等圧線は確実にメモ。それを滑らかに地点の気圧と矛盾がない様に結びつける。
↓
高気圧と低気圧を囲む。
↓
上記の情報を元に図中のすべての等圧線を地点の気圧などから推測して等分して描く。決して適当に書いてはいけない。




