↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/122

46話 下山

  曲がりくねった道を進み、雪の重みで平らになった氷結した路面の下を通っている大きな川の上を渡ると俺達は小さな広場に出た。本当に小さな広場だ。ベンチが設置してあるものの、座ったら今にも崩れそうなほどベンチの木は朽ちてしまっていた。


『↑公園センター 1.7キロメートル』


  うん。あと少しだ。


 今俺達は二つの大きな尾根に挟まれている。ここはまるで渓谷の様だ。左右の尾根から分岐した小さな尾根。その間々に存在する谷。そこから俺達が今いる場所に向かって水が滴り落ちる。その為、足場はかなり悪く、ズボンの裾は既に水浸しである。


  だが、流れて来ている水は川の上流から流れて来たものや、雪解け水が殆どの為、透明度はかなり高く、水は透き通っていた。地面に落ちて跳ねる水飛沫は銀色に美しく輝き俺達を照らし、地面と水を交互に反芻する反射光は俺達の目に鋭く突き刺さった。俺達が全員美少女であったならば、エロゲやアニメに出てくる理想郷になっていたのかもしれない。だが、生憎俺達は全員男だ。それに一部を除いて美少年でも無い。……自分で言っておいて何だが、なんかこの一言で一気に悲しくなって来たな。さらば、青春。


 これだけ見た目は綺麗な水。それでも飲用には向かない。綺麗に見えてもこの水には山から流れ出てくる豊富な栄養分を餌に繁殖したプランクトンなどの微生物や細菌が大量に潜んでいる。そんな物を飲んでしまったら即病院行きだ。それでもこの水を飲みたいと言うならば、煮沸してから飲むことをおすすめする。


 広場を過ぎ、下山ルートに入ると俺達は地面が一部コンクリートで舗装された場所に出た。既にここら付近になると積雪は一切積もっていない。それも当然だ。コンクリートがある場所は気温が上がる。アスファルトやコンクリートは太陽光から受けた放射熱を吸収し、放出する。都会が熱い原因の一つだ。少し話は脱線するが、アスファルトなどに水を撒いているのを見た事があるだろうか?あれは単に水の温度でアスファルトの温度を下げているのでは無い。潜熱と言う、元々物質に潜んでいると見なせる熱の吸熱反応を利用している。所謂エアコンと同じ原理である。


 コンクリートの路面は凍結すると非常に滑る。凍結した路面に関してはコンクリートに限った話では無いが細心の注意が必要だろう。


  吸熱反応とはまた話が変わるのだが、コンクリート路面には冬季は大抵、凍結防止剤が撒かれているだろう。だが、凍結防止剤は木場山では使えない。氷を溶かす凍結防止剤の主成分は塩化カルシウムだ。塩化カルシウムは草木を枯らしてしまったり、鉄を溶かしてしまったりして構造物の劣化を招いてしまう。その為、山岳地域ではあまりコンクリート路面舗装は出来ない。コンクリート舗装を行う主な目的としては歩きやすさの上昇や、草木が地面から生えてくるのを防いだり、崩壊しそうな地面の補強や、洪水時などに水の流れを管理する役目を担っていたり、土石流の防止などにも使われている。今回は登山道の補強だと思われる。コンクリートの舗装道路の下には川が流れており、地盤は少し不安定だ。その為補強する必要があったのだろつ。


  土石流の防止といえば砂防ダムだ。今回木場山では出てこなかったが、山には大抵砂防ダムが設置してある。地図記号も独特な為一目で分かるだろう。砂防ダムは普通のダムと違い、貯水機能は無い。コンクリートや鉄で出来た無骨な身体は土石流を防ぐためにあるのだ。土石流などの災害が起こった場合大きな礫や、倒木はダムの基礎である部分に溜まる。それで土砂は堰き止められ小さな砂などから順に下に落下していく。砂防ダムは山が一気に崩壊するのを防ぐ大事な物なのである。


  話が逸れに逸れまくった……。


  コンクリートで舗装された道路から七ノ原まではほぼ直線だった。川が流れる音を聞きながら俺達は早足で緩い下り道を流れる様に歩く。七ノ原に近づくにつれ、ミズナラなどの木々が周囲に見え始め、視界が開けた。





  砂利道を俺達は下る。俺達の視界には七ノ原手前の広場と体育館の姿が目に映った。やっと着いた!時刻は二時半。悦原越からは俺達にしてはそれなりに速く歩いた。それだけに俺達が予想していたよりも早く着いた。


「お疲れ様。流石に疲れたでしょ?バス停まで向かうよ」


  野原先生は笑顔で俺達を祝福した。疲れたけど良い経験だった。今は登っている時程嫌な感じはしない。寧ろ清々しい気分だ。辛いのは登っている時だけなのだ。


  バス停は初日の登山道の終点の近くだ。県民の森管理センターのすぐ側に大きな駐車場がある。管理センターの横には川が流れており、高校生の先輩達は既にそこにいた。


「お、来た来た。道具も洗い終わったし帰るか!」


 先輩達は勢いよく木のベンチから立ち上がった。あれだけハードな動きしておいて良く元気な物だ。先輩達は既にテントを干し終わり、ペグなども川で洗ってしまった様でウキウキ気分に見えた。


  当然、コッフェルなどはゴミが出る為、川で

  洗う事は出来ない。だが、ペグなどは土が付着しているだけの為川で洗う事は可能であった。コッフェル以外全部洗い、テントが完全に乾いて収納出来たって事は先輩達……何十分前にここに辿り着いたんだ!?


  あの人達やっぱり怖い。俺は思わず先輩達が近づくにつれ、後に下がった。そして、バスに乗るタイミングで俺はトンデモナイ事に気付いてしまう。それはこの二日間の中で一番と言っていい程の絶望だった。


「どうしよ。土日の宿題全く終わってない!」

「!?」


  俺のその絶望の叫びに対して周りの複数人が反応したのは決して気のせい……ではなさそうだった。


砂防ダム……貯水機能は無い。土石流などを防ぐ為のダム。


山の天然水……基本飲んだら腹壊します。飲める場所は大抵看板などがあります。


舗装道路……コンクリートで舗装された道路。先輩達は気が抜けているこのタイミングで読図出されてましたが、主人公は知りません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。