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40話 ランチタイム

 十時。日出雲峠に戻った俺達は飯タイムへと突入した。


「何ですか……?」

「いや、何でもない」


  ムスッとした表情の鬼登先輩の手には可愛いキャラクターが印刷されたパンが握られていた。可愛い。鬼登先輩は若干殺意の篭った目で倉尾先輩を睨むが倉尾先輩は知らんぷりだ。


  俺達は普通の菓子パンではあるものの、荷物に押し潰されたパンの見た目は悲惨であった。クッキー系のものや、蒸しパンは粉々に粉砕し、食べるのも一苦労である。カレーパンなどのパンも中の具が噴出してしまっていた。菓子パンは砂糖類を使っているものが多い為、直にパンを掴むと溶けた砂糖が付着し、手が汚れる。それ故に袋の上から掴んで食べるのが良いだろう。


「ん。美味い」


  五時間半振りに食べる飯は美味かった。ずっと朝から歩き続けているのだ。腹も減るだろう。今日のコースは全体で見ると累積上昇高度八百メートルと言うコースだ。今回のコースは悦原越から下山ルートに入るがそこから一つ山を跨いで、昨日横に見た立煮干山の真横を通るルートを通った場合の累積上昇高度は約千メートルとなる。この山域はただ回るだけでも時間がかかるのだ。


  今回二日で主要地点はいくつか確認したが、木場山の山域にはまだまだ主要地点は多い。全てを回るとなると二日では物足りないだろう。俺は周りたいとは思わないが。


  山で食うパンでオススメなのはピザパンや、ラ◯チパックの様な潰れないパンだ。あれは手もベトベトしないし味も中々いける。そんな事を考えながらパンを頬張っていると俺の目に異常な光景が飛び込んだ。


「それ美味いのか……?」

「いや、不味い」


  また茂木班である。茂木は食パンを食っていた。それも味付け無しで。


 ねえ、バカなの?


  茂木は卵アレルギーを抱えている為、普通の菓子パンは食えない。とは言ってもアレルギーなどの人が食べられる様なパンは現在沢山販売されている。それにも関わらず茂木は食パンを食べていた。


  いや、茂木だけでは無い。茂木の班員全員のパンが食パンなのだ。てっきり俺は茂木だけがアレルギーで普通の菓子パンが食べられない。それが可愛そう。そう言う理由で全員食パンになったのだと思っていた。いや、それでも食パンを食う理由にはならないと思うが。


「食パンって一枚切りの薄パン無いよな」


  ねえ、本当にバカなの?それ買う前に気付くよね!?


  材木の言葉に俺は思わず転びかけた。


  材木はまだしも何で先輩達止めなかった!?鶏肉のタピオカ漬け饅頭はちゃんと却下しましたよね……?まぁ、他の班だから別に良いけど。


  材木はふざけた事を平気で提案するが、材木はきちんと後処理をするし、同意は得る。何故同意が得れたのかは謎だが、そこは良いところだ。悪ふざけで料理を考案し、その上後処理もしないとなれば本当にバカだ。先輩達は気の毒だが、他の班から見てみれば必死に死んだ顔で食パン食ってる絵面は面白いし、ネタにはなるだろう。





  飯を食い終わった俺達はベンチに深く腰をかけた。何か水が美味く感じて来たな。俺はスポーツドリンクが切れた為水筒の水を口に含んで思った。登山開始前に飲んだ水はあまり美味しく感じなかった。少し石灰が溶けているのか水は白く濁っており、あまり飲みたくは無かった。


  実際若干苦味を感じ、飲みにくかった為、ここの水は硬水寄りなのだろう。しかし、登山を続けて飲んでみると少し甘く感じて来たのだ。汗と共に塩分が体外に流れ出た事によって味が変わった様に感じるのだろうか?ここら辺は謎である。

  休憩時間が終わりザックを背負った俺達は次の目的地を目指す。次の目的地は煮干山だ。山頂の標高は1225メートルで、山頂には方位盤が設置されている為、そこから周囲を見渡せば木場山連峰の山々の位置関係が良く分かるとの事だ。煮干山の南東には俺達が煮干山の次に目指す木場山御陵がある。


  山頂には特徴的な巨石がある。その岩は流紋岩であり。特徴的な溝が風化によって刻まれているとガイドブックに書いてあった気がする。流紋岩も花崗岩の一種の為、その事からこの一帯は花崗岩を母岩としている事が分かる。それ故に砂鉄の産地でもあったのだ。


 そして特徴的なのは植生と尾根だ。日出雲峠と煮干山の中間あたりにはそこから日出雲峠を経由し、七ノ原まで流れる川の水源となる二重尾根がある。これから俺達はその一方の尾根を迂回して水源直下を渡渉する事になるのだ。因みにその流れている川は日出雲峠から六ノ原へと下山するルートから確認する事が出来る。


 植生についてだが、ここから煮干山へと続く道はヒノキの人工林が覆っている。完全な陰樹林である。ここまでの数を植樹する事を考えたら気の遠くなる作業だ。これも生態系を守る為にやむを得ないのだ。逆にこの森は木場山御陵を中心に聖域として畏れ敬われ、大切にされているからこそ近くに大規模な砂鉄採取場があり、人の出入りが比較的多かったにも関わらず雄大な自然が未だに残っている。


 それがこの木場山一帯を代表するブナの純林である。煮干山付近にはブナの巨木などが見られるらしい。展望殿地にもあったが、俺はあまり興味が無かった為覚えていなかった。


 さて、事前情報は沢山読まされているのだ。後は自分の目で見るのみ。正直俺は事前情報だけでお腹一杯ではあるのだが、そうも行かないだろう。登山行動はまだ続いているのだ。




集団登山する際はメンバーのアレルギーなどを確認して、食品を選びましょう。酷いアレルギーの場合死に至る事もあります。

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