34話 二日目
「……」
「……流石に冗談だ」
鬼登先輩……目が笑ってないですよ。
だって、どうせ食えなかったら捨てられないんだから俺のゴミ袋に入るんですよね!?どう考えても冗談で言ってる様に見えないんですが!?
「しょうがない。最終兵器を使うか」
「?」
鬼登先輩はスッと立ち上がった。そして、何処かへと歩いて行った。トイレか?俺はそう思ったが、こんなに急にトイレに行くとは考えにくい。それにトイレならトイレと言う筈だ。しばらくすると鬼登先輩は水筒に水をいっぱいに詰めて戻って来た。
「薄めるから飲め」
強引だ!?
そう思ったが、それは本人も分かっての事だろう。正直スープを薄めれば飲めない事は無い。だが、考えても見て欲しい。五人分のラーメンのスープだ。それを薄めるとなるとそのスープの量はかなりエゲツない量になる。
結局俺達は全員と他の班も協力して、スープを飲み干した。他の班は朝メシもパンの所が多かった。だから、奴らテントから出てこなかったのか……。俺的に良いと思ったのがサンドウィッチを作っていたグループだ。野菜やハム、チーズなどの具材はカット野菜で袋で密閉されている為、保存も効き、調理の手間もかからない。即席スープの素などもあったらスペースも取らないし楽で良いだろう。あれらはベストアイデアだ。
次から俺も朝メシはパンにしよう。いや、サンドウィッチを作ろう。俺はそう心に決めた。次からこの辛い登山合宿に参加するかどうか微妙ではあるが。
飯を食い終わり、荷物を一通り纏めた俺達はザックの上に座った。現在時刻は五時二十分。教員車に荷物を積めるのは五時半からなのでまだ少し時間があった。
「んんん!」
俺は肩を回し、腕を伸ばす。空気が冷たくて気持ちが良い。目覚めと朝飯以外は最高だろう。やっぱり、俺は普通のキャンプがしたい。登山なんて懲り懲りだ。これからまた山を登る事を考えると憂鬱な気持ちになる。
俺の足の小指には靴擦れによって傷が出来ており、太ももと腰、脹脛は筋肉痛で今にも攣りそうだ。今日は山に登りたくない。俺はそう思いながら地図を開いて俺は溜息を吐いた。
「昨日よりもルートの高低差が激しいな……」
「お、ちゃんと地図読めてるじゃないか。偉いぞ」
「そうすっね。少しは読めるようになりましたよ」
鬼先輩から謎の煽りを受けつつも俺は荷物を担ぎ、教員車に乗せた。今日のコースは、幕営地から出て幕営地に帰ってくるコースの為、ここにある教員車に荷物を預けても何の問題も無い。荷物を預けたからと言って下山後にまた教員車がある場所まで歩く……とか言う事はしなくていいのだ。
登山開始時刻は六時十分からだ。高校生達は今日も朝からタイムレースを行う様で、忙しく荷物を量りに乗せて重さを量っていた。朝からタイムレースなんて、絶対吐くわ。季節は春だが、気温は冬場の様に冷え切っていた。それにも関わらず、高校生の先輩達は上着を脱いで、身体を念入りに動かして温めている。
当然、量りで量る重量はカバンに入っている重さだ。山を走って登る訳だから上着はザックの中に収納する。そうでもしないと暑いだろう。それに、走ってる際に汗でザックの重量は上がる。その為、それを考慮して衣服の重さなどを考え、重量を調整しているのだ。
まぁ、俺には関係の無い話だがな。そう思っていた矢先だ。
「お前も上着、フリースは脱いどけ」
「え?」
鬼登先輩が呟いた。まだ気温は冬場の様な気温だ。春だからか太陽は飯を食っていた時に登って来ていたものの、まだ上着を脱ぐには寒かった。
「長袖の上着があるだろ?高校生の様に半袖になれとは言わんが、せめて着るならそれにしとけ、すぐに暑くなる」
「分かりました」
俺はフリースを脱いで、フリーザーバッグの中に圧縮して収納し、薄めの上着を羽織った。
「今日はタイムレース二本やるみたいだぜ。高校生達はよ」
「え?」
鬼登先輩は俺のしんどそうな動きを見て笑っていた。いや、意味がわからない。普通に登山しただけで身体はクタクタになる。それ以上に負担がかかるタイムレースを二本?正気では無い。
俺達は荷物を纏めるとタイムレース出発前の高校生達の後ろを辿る。今日は俺達第六班が最前列スタートの為、俺達は高校生のすぐ後ろに付いていた。勿論、中学生の引率は野原先生である。先生達はやはり、量や体調には気をつけているのか前日酒を飲んでいるにも関わらず元気だ。
俺達が宿泊したキャンプ場、幕営地を登るとそこに登山道はある。今日俺達が登るルートは苛立山、毛ヶ死山、日出雲峠、煮干山、木場山御陵、悦原越、七ノ原と言う総計十一キロのルートを回る。
七ノ原は俺達が泊まったキャンプ場の直ぐ横に隣接してある、七角形の屋根の建物が目印の場所だ。キャンプ場を下った場所にある。煮干山は立煮干山とは全くの別物である。名前は似ているが場所などはかなり異なっている。
今日行く場所は、風が強いらしく、キャップキーパーをきちんと確認しているおいてくれ、と全体を通して通達が出ていた。それならばさぞかし気持ちが良い事だろう。俺はそう無理やり登山したくない気持ちを落ち着かせた。
俺が今日の行山ルートを確認している内に時刻は六時になった。
「「ファイトォォ!」」
そして、辺り一面にけたたましい雄叫びが響いた。まだ六時……。登山道の入り口は少しキャンプ場から離れているとは言え、近所迷惑なのでは無いだろうか?俺は他のキャンプ客を若干気の毒に思った。
袋に密閉されてるタイプの食べ物は一日、二日位なら持つので便利です。
身体のケアはきちんとしておきましょう。準備運動は大切です。




