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31話 炊事

  ただ皿に装う順序的に見た目が悲惨になってしまうのはどうも避けられない。鬼登先輩だけは左右に具材と米を分けて入れている為、綺麗に盛れていたのだが……。


  器に米と具材を盛り付けた鬼登先輩はスマホを取り出し、写真を撮っていた。イ◯スタにでも上げるのだろうか?この辺は学校の方針もあってかなり寛容である。スマホを持ち込むのも可能だし、合宿で使用するのも別に問題は無い。スマホゲームなどに関しては学校行事中などはやってはいけない事になっているのだが、そこら辺は暗黙の了解である。


  割と放課後などはスマホゲームなどをしていても黙認されている。そう、あくまで黙認なのである。承認では無い事を履き違えてはいけない。その為、先生によっては処罰を受ける事がある。


「よし、じゃあ食うか」

「はい」


  時刻は既に十九時を回っており、辺りは暗闇に包まれていた。山は静かで耳に聞こえるのは虫のさざめきと、俺達宿泊者の超えだけだ。街中と違って、街灯も少ない為、近くに管理センターがあるとは言え、ヘッドライト無しではまともに歩けないほどの暗さである。


「美味い」


  俺は一口飯を食べて呟いた。空腹に飢え、縮んだ胃に入る暖かい食べ物……幸せだった。口の中にトマトのほんのり甘い風味と香りがじわりと広がる。普段であれば猛スピードで駆け込んでしまうただの食事も長い時間に感じた。鬼登先輩の味付けが上手いのもあるのだろうが、山で食べる飯も悪くはない。


「当たり前だ。俺が作ったんだ。不味い訳がないだろ?」


  鬼登先輩は上着を羽織った。


  上着……?そう言われて見れば少し肌寒い様な気がする。だが、上着はカバンの中だ。


「あ、寒くなって来たのでちょっと上着取って来ます」

「え、お前上着事前に出してなかったのか?張り綱に足かけんなよ?」

「分かりました」


  山の気温は一気に変化する。それは夏でも一緒だ。年間を通しての気温の年較差は地上に比べるとかなり小さいが、一日あたりの気温差は大きい。標高千メートル程度の低山でも夏でも冬用の上着が必要になる程に。


  あと夜に注意しなければならないのはテントの張り綱だ。これは自分のテントだけでは無い。他の人のテントにも言える事で、夜は足元が良く見えない。その為張り綱に引っかかりやすい。張り綱に足を引っ掛けてしまうとテントフライを痛めてしまったり、ペグが抜けたり、転倒の危険がある。


  特に転倒した際には地面から飛び出たペグなどで歯を強打して歯を折ったなどという例もある位なので細心の注意を払う必要があるだろう。


  俺はその辺のポイントに注意しつつ、テントの中に収納した自分のザックを漁り、上着を羽織った。


 


 しばらく飯を食っていると、幾つかの光がこちらに近づいて来ていた。光がこちらに近づくと人影が露わになった。


「鬼登さん……飯どうっすか?」

「おお、渡図とずか、どうした?やっぱり菓子で飯は食えなかったか?」

「はい。一先ず鬼登さんの所の飯だったらハズレは無いと思いまして、おかずを少し分けてくれないっすか?」


  渡図先輩は鬼登先輩と同じ中学三年生で、今回の行山の一班の班長だ。髪は長めで、優しそうな雰囲気を放っている先輩だ。だが、どこか抜けている所もあると言う印象を俺は抱いている。そしてその印象は強ち間違っていなかった。


「お、それめっちゃ美味そうじゃん!俺達の班のもやるからくれよー」


  第一班に所属している青空が俺に気付き、手を合わせる。そんな懇願しなくてもやるから……。第一班には青空と雲井が配属されている。合宿の飯タイムはメニューの共有が可能だ。それこそ、班同士の飯だけでなく、先生の飯も言えば食わせて貰える。これは山での醍醐味と言っても良いイベントである。



 先生は車で割と大きめの調理器具などを持って来て酒盛りをしていた。え、部活の業務中に酒盛りってやって良いの?え、ダメなの?これもう分かんねえな。俺は若干困惑していたが、良いのだろう。そう言う事にしとこう。とは言っても酒を飲んだ状態での登山も冷静な判断が難しくなったりする為、推奨はされない。寧ろダメだろう。ただアレもコレもって制限してしまうと、娯楽が娯楽でなくなってしまう為、これくらいは許容範囲だ。


 話を戻すが、青空達が所属している第一班の晩飯のメニューはチョコレートフォンデュだ。これはデザートでは無く、メインである。どうやったらこれで飯が食えると思ったのか不思議である。


  作り方としては至って単純で、チョコレートを湯煎してそれにバナナなどの果物に付けて食べる。それだけだ。やっぱりデザートじゃねえか。ただ、使い終わった後の鍋の処理が地獄なのでフリーザーバッグなどの使い捨て容器にチョコを移して使うなどの工夫はちゃんとしている様だ。


  そこには頭が回るのに何故、重要な所に気が付かないのか……そこが渡図先輩が抜けていると俺が感じた要因の一つである。


「ありがとな!」


  青空は俺の班からラタトゥイユを貰い、ご飯を口に駆け込んだ。その瞬間頬が緩むのが目に見て取れた。鬼登先輩の料理は美味いからな。そうなるのも当然だ。今回多めに飯炊いてて正解だった。


  そして、俺もデザートにバナナをチョコレートに付けて食べる。うん。油分が若干分離して変な風味にはなっているものの不味くは無い。だが、少し普通のチョコよりかは甘ったるく喉に残る。こりゃ、これを主食にご飯を食べようなんて無理だわな。


  俺は少し一班に同情した。


 


山での食事……キャンプメンバーと食事を共有するのも良いですね。他の登山団体の方とこれで仲良くなる事もあります。ただメニューはちゃんと考えましょう。計画する時にその時のノリでメニューを決めると悲惨な事になります。

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