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100話 ビンゴ大会

  宿に到着して、すぐ俺達は大部屋に入った。この大部屋は二十人程人が入っても余裕で生活できる程の広さがあった。コンセントもちゃんと準備してある。先に着いた先輩達は既に風呂に入っていた。


  風呂は前の様な個人風呂では無く少し大きめの風呂であった。宿自体を貸し切っている為、他の宿泊客はいない。民宿だと思っていたが、正式な宿では無いのだろうか?その場所はどこか公民館の様な雰囲気が漂っていた。風呂は銭湯ほど広くは無いものの五人位は入れる石風呂である。ただ、18時からは夕食とクリスマス会の準備がある。今先輩達は車で近くのコンビニなどを回ってチキンを買い集めている。


  本当は風呂でゆっくり足の裏などを揉んでゆっくりしたかったのだが、生憎時間がない。急いで風呂から出た俺達は先輩達が帰って来る前に弁当の準備を進めた。弁当は事前に注文していたものだ。弁当箱とインスタントの味噌汁が入った段ボールを抱え、俺達は食堂へと脚を運ぶ。


  足が痛い。膝は真っ直ぐ伸びなくなっていた。だが、後輩である俺達は先に先輩達の配膳の準備をしなければならない。食堂でコンロのスイッチを入れ、お湯を沸かす係の者、コップを配膳する者、湧いたお湯をやかんに移し替える者、弁当を配膳する者など、役割を分担してテキパキと俺達は仕事をこなした。


  時刻は18時手前。買い出しに行った先輩達が丁度帰ってきた。先輩達はコンビニで買ってきたチキンを配膳する。そして、少し買い過ぎてしまったのか余ったチキンを真ん中に置いた。


「今日のクリスマス会ではビンゴ大会を行います。ビンゴ代では景品を用意していますので、楽しみにしておいて下さい。そして、一番最初にビンゴを当てた人にはこのチキンを追加でプレゼントします」


  幹事である国背先輩が述べた。ほう、ビンゴ大会か。ビンゴをするのは久しぶりだな。俺達の席にはビンゴカードが一枚ずつ配られて行く。俺達も先輩のコップにお茶を淹れ、18時15分。食事の準備は整った。景品はダンボール箱の中に入っており、まだ中身は分からない。


  先輩達の足元には景品とは別に色んな物が置かれていた。これは先輩達が勝手にやっている変なもの持ってこれるか選手権の物である。その中でも一際目立っていたのは松村先輩の持ち物だった。


  松村先輩が足元に置いているものは大き過ぎて全く隠しきれていなかった。間違いなくこれは彼が優勝だろう。彼は取り外し出来るタイプのセラミック製のトイレの便座を持って来ていた。セラミック製のトイレの便座は重い。それこそ長距離歩くような企画で持ってくる物では無いだろう。


  その他、他の人はペンライトや、被り物などバラエティーグッズが中心である。間違いなく優勝はセラミック便座だが、一番使い道が無い上、持ち運びが大変なのもセラミック便座だろうな。


  ビンゴ大会は食事中に始まった。ビンゴ大会も盛り上がり、盛り上がりが最高潮に達した頃だった。ガラス張りの扉が勢い良く開いた。


「すまない!少し遅れた!」

「「え!?」」


  俺達はそこに立っていた人物を見て驚きの声をあげる。驚いていたのは俺だけでは無い。高校生の先輩以外の全員。教員すら驚きの表情を浮かべていた。


 そこには国背先輩の兄。エースが立っていた。


「尾道からチャリ飛ばして来たんですよ。サプライズしようと思いましてね」


  エースはパッと言い放った。兄が来る事は国背先輩もこのサプライズは知らなかったらしく何で来てるんだ!?って言う表情をしていた。


「それで、コレはプレゼント!チキン……」


  国背先輩は意気揚々と部屋を出て荷物を取りに下に降りると一つのダンボール箱を抱え、机の上にドンと置いた。だが、俺達の机にあるコンビニのチキンを見てエースは固まった。


「えーと、ケ◯タッキーのフライドチキンだから、コンビニのとは少し違うと思うよ!」


  明らかにエースは動揺していた。どうやらサプライズとして自腹でチキンを箱買いして来たそうだ。荷物は直接メインザックを背負ってチャリを漕いできたのか、箱の中のチキンは少し崩れてしまっていた。


「おい、優木ゆうき……。話が違うぞ」

「すみません。メールするのを忘れてました」

「許す。後でオレには大役があるんだ」


  優木先輩は高校二年生の先輩で、常に和かな笑みを浮かべている先輩だ。大きな身体で普段からのっぺりとしている印象を俺は持っている。どうやら、優木先輩とエースは事前に打ち合わせをしていた様だった。


「国背。今日はこの後どうするの?」

「あ、オレはこれ終わったらまたチャリで帰ります」

「フェリーの時刻大丈夫か?」

「ええ、22時20分までですので、急げば間に合います」

「無理はするなよ。事故でも起こしたら大問題だからな」


  かなり無茶なスケジュールだ。俺は内山先生とエースの会話を聞いて驚愕した。ロードバイクとは言え、ここから向島ドッグまでの距離は実に50キロ以上。現在時刻は18時30分。しまなみ海道がいくらサイクリングに適した道路になっているとは言え、夜道は危険だ。


 



  そして、弁当を食べ終わり、ビンゴ大会も全てのくじを引ききり終焉となった頃。余興は始まった。ビンゴ大会の景品は大半がお菓子や、バラエティーグッズだ。これは後で部屋で楽しませてもらうとしよう。


  そして、余興ではエースと松村先輩が出た。


「野球す〜るなら!こーゆー具合にしやしゃんせ!アウト!セーフ!よよいのよい!」


  そこで始まったのは野球拳であった。


 


トイレのセラミック便座を持ってきた話は実話です。長距離歩く系の企画をやっている際に同じような大会を開いた所、セラミック製の取り外し出来るタイプの便座をメインザックに入れて持って来られた猛者がいらっしゃいました。

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