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そんなヒイラギに和んでいると、突然携帯の着信音が響き渡った。軽快なリズム音のそれは私の物ではない。そうなると倉山かサトルのどちらかの物と言う事になるけれど……。
「あ。俺のだ」
倉山だった。誰からの物かを確認すると、その表情はみるみる変わって行くのが私でも分かる。それは驚きと喜びが隠せないような表情で。まさかとは思うけれど……。
「岩代、喜べ! 玲さん見付けたって」
向こうの世界とこっちでも連絡が取り合えるんだ、と言う事を初めて知った驚きよりもヒイラギが元に戻るって言う喜びの方が大きい。
「一体どうやれば戻るっていうの? 早く教えて!」
「まあ、焦るなって。ちょっと待てよ…………え?」
半ば興奮気味の私を焦らすかのような倉山の素振りに少しいらつきながらも、その次の言葉を待っていた私に、倉山はそのメールの文面を見てまた変な顔になった。まさか時間の経過と共に戻る物、じゃないでしょうね? だとしたら一体いつまで待てば良いと言うの?
「……何々、“キスをすれば元に戻るよ”?」
なかなか言えずにいる倉山を見兼ねてか、隣にいたサトルがそのメールを代読した。……何だって? キス? それじゃあまるで何処かの童話みたいじゃない。愛するお姫様や王子様がキスをすれば呪いが解けるって話? 結局それになる訳?
「良かったじゃない。キスをすれば戻るって。さっさとやれば良いじゃん」
「そ、そんな簡単に言わないでよね!」
相変わらずサトルは適当な感じがする。私の気持ちも知らないでそんな事を軽々と言わないで、ってば。倉山は多分それで言えずにいたのだろう。つまり少しは私を気遣っている。弟であるサトルも少しはそれ位の気遣いを持てば良いのに。双子でも似ない所は似ないんだね。
「玲さんからによると、呪いとかそういった類に詳しい人に何人にも聞いてみたら、大半の人が“呪われた子に好きな人がいるなら、その人にキスしてもらえば?” って、言ったらしい。それからこの原因不明の呪い(?)は一度解けても月に一度、短くても一日は小さくなる事が続く事も分かったみたいだ」
絶対その詳しい人、適当に言っているに違いない。キスして貰えば良いなんてそんな軽々と言えるのだから。お兄ちゃんも何でそんなの信じるのかなぁ……。