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「これで良いでしょ?」


 枕元にお兄ちゃんの写真を置いて見せると、ヒイラギは満足したようだ。三人一緒に寝たかったのだろうか。電気を消し、ヒイラギにしっかり掛け布団をかけてあげて、さあ寝ようと言う時だ。


「…………」

「ん?」


 ヒイラギが突然私に身を寄せ、顔を近づけてくる。ねえヒイラギ、まさかとは思うんだけど……そんな事、考えている訳ないよね? 心臓がやたらとうるさくなる。そんな事も知らないヒイラギは私の予想通り頬にキスをした。柔らかい唇の感触が唇を離れた今でも残っている。当の本人はおやすみなさいのキスだと思ってやっているんだろうけれど、私にとってはヒイラギ自らがやるキスなんて滅多にないから、そうだとは思えなかった。手の甲にしてくれた事はあった。でも頬にしてくれた事はない。

 これがある意味初めてという事になる。どうしよう、眠れなくなっちゃった……。キスをして満足だったのか、ヒイラギは私の胸の中ですやすやと気持ち良さそうな寝息を立てて眠りだしている。ひ、人の気も知らないで……! 眠気、早くやって来て。目を閉じてじっと耐える事恐らく二時間。やっと眠りに就く事が出来た。こんな日々がまだ当分続くのかな?



「……で、もう五日か」


 ヒイラギが小さくなって早いもので五日が過ぎた。相変わらず彼は小さいまま、相変わらず倉山とサトルには触ろうとすると警戒心をむき出しにし、私やお兄ちゃんにはよく懐いている。そんな当の話の中心人物である本人は私の膝の上でクッキーを一生懸命頬張っている。現在地喫茶店。時間は既に放課後の事である。

 授業の間、ヒイラギはお兄ちゃんが面倒を見て、放課後になって倉山達が彼を連れて来たのだ。そして夜は私の部屋で過ごす日々。お母さん達に怪しまれないようにか、ヒイラギはお兄ちゃんか誰かに教わったのか死神状態になれるようになったみたいで、私と二人きりか自分一人だけの時以外は死神になってくれているようになった。これはありがたい事だ。お母さん達に見つかって“その子誰”って、言われても上手く言い訳出来る自信がなかったから。でも助かっているのはそこだけ。


「岩代、いつもより少し元気ないように見えるのは気のせいか?」

「体育の授業あったの?」

「平気だし、今日体育の授業なかったから」


 倉山達が心配してくるけれど、精神面が平気じゃない。だって夜寝る時必ずヒイラギは頬にキスしてくるんだもの。それだけじゃない。お兄ちゃんに預かってもらう為、倉山かサトルにヒイラギを引き渡す前だってしてくるのだ。とんだキス魔だ。

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