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「…………」


 ヒイラギは何を思ったのか、自分の食べかけのおにぎりを差し出した。何故そうするのか、すぐには分からなかった。けど……。


「慰めてくれているの?」


 すると照れくさかったのか顔を少しだけ赤くして、もじもじしているようにも見える。どうやら正解のようだ。食べかけのおにぎりは受け取れないけれど、慰めようとするその優しさはありがたく受け取ろう。


「そのおにぎりはヒイラギのだから、ヒイラギが食べちゃって良いよ。カレーはもう良いの?」


 正直これで諦めていないと言われたらもう勝手にして、っていう気分だったけれどカレーはどうやら諦めた様子で、ただ黙々とおにぎりを食べていた。また何時までこの状態かは分からないけれど、長引くようだったら甘口のカレーでも作ってあげようかな。心配かけちゃったお詫びにね。


「あ、食べちゃった? まだ二つあるけれど、食べる?」


 さっきまでの変な空気(と言うか、私が勝手に作ってしまったけれど)はもうそこにはなかった。何時もとは全く違った夕ご飯を渡しは思う存分に楽しんだ。ヒイラギがご飯粒を頬につけていたら取ってあげたりするのも、滅多にない事だからちょっと楽しい。



 版ご飯も食べ終え、あまり面白そうなテレビ番組もやっていなかったから、私達はお兄ちゃんのいる和室で時間を共にした。バッグの中にはやはりお兄ちゃんが用意してくれたのだろう。ミニカーやぬいぐるみ、お絵描きセットまで入っていた。準備が良すぎるじゃないか。


「…………」


 ヒイラギはクマのぬいぐるみを抱えて、お絵描きに夢中になり出した。何を描いているのか見てみても何を描いているのかが良く分からない。人間が三人……かな? もしかして私とお兄ちゃんと自分かな? ピンクの服が私で、青い服がお兄ちゃんで、一番小さいのがヒイラギ自身。太陽の下で三人とも笑顔で立っていた。それを描き終えると今度は倉山とサトルと思わしき二人に、ヒイラギが殴っている絵。ヒイラギの横にはピンクの服の女の子が……もしかしなくとも恐らく私だろう。まさかこの絵、倉山達の手から私を守っている絵じゃないよね?


「ヒイラギ……いい加減警戒心なくせばいいのに」


 何時までも警戒心むき出しだと、あまりにも倉山達が不憫に思う。ヒイラギがそんな私の思いも知らず、お絵描きをめいっぱい楽しんでいた。その絵は殆どが自分と私、それからお兄ちゃんの絵。スケッチブックの最後までそれは続き、全部使い切ると今度はミニカーで遊びだした……壁に思い切り投げつけると言う、間違った遊び方で。

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