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第2話 マジックバッグ

ちょっと切ないエピソード。終りはほっこり。

 ミミが冒険者時代に使っていたマジックバッグの中身を取り出して整理しているのを、魔道人形(ドール)のカーラが面白そうに見ていた。

「ミミ、この変な形の置物は何?」

「えーっと、確か依頼を受けた時の報酬でもらったものだったかしら?そうそう、寒村でね。高そうなのがそれしかないって言われちゃって、断れなかったのよね」

 カーラが見ていたのは、子供が粘土で作ったような不格好な置物でカーラの背丈よりずっと大きく、置き場に困るような品だ。ただし、素材は紫檀である。

「ところで、どうして中身出してるの?」

「ほら、あの子が一人前の冒険者になったからそのお祝いにマジックバッグをあげようと思ってね」

 ミミの孫はこの前見習いを終えて一人前の冒険者になったばかりだった。ミミが嬉しそうに言うのを見ると、カーラは、

「じゃあ、私も何かお祝いに送るわ!」

と言って、ぎこちない動きで下げていた人形用のバッグをひっくり返した。ガラガラと驚くほど大量の中身がミミのバッグの中身とまじりあって、小山を作った。

「……カーラ?」

「あー……ごめん、ミミ。こんなに入ってるなんて思わなかったわ」

「カーラもバッグの中身を整理しましょうね?」

ミミが苦笑してそう言うと、カーラはちょっとうつむき加減でミミをチラリと見上げた。ミミが「ね?」と念を押すと、カーラは諦めたようにうなずいた。カーラは整理するのが苦手でマジックバッグに何でも放り込んでおく癖があるのだ。

 ミミは大きな籠を持ってきて、まずはカーラのものと自分のものを分けることにした。ミミもだいぶ昔に入れた切りで忘れているものもあって、二人で頭をひねるものもあった。

「カーラ、これって……」

ミミが手にしているのは、素晴らしい細工がされたロケットペンダントだった。表面にはどこかの家の紋章が彫られ、カーラの瞳の色と一緒の宝石があしらわれている。裏を返すと、だいぶ薄くなってしまって読めないが名前が彫られている。かろうじて"カーラ"なのは分かった。

「あー、これね。懐かしいわ」

 カーラの憂いを少し含んだ声に、ミミが少し首を傾げてカーラを見ると、カーラは安心させるように笑って、語りだした。



 これはね、お兄様から貰ったものなの。ふふ、そうよ、私にはお兄様がいたの。

 ほら、開けてみるわね?これがお兄様よ。素敵でしょ?私と違って銀髪なの。こっちは······恥ずかしいわ。私よ。4、5歳の頃かしら?

 お兄様はお父様によく似ていたの。私はお母様にそっくりで―――嫌だったわ。

 私はね、お母様に対して良くない()だったわ。でも、お兄様は事情を知っていたから、私を責めなかったし、最大限守ってくれたの。

 このロケットも、こんな風になった私に持たせてくれたのよ。忘れないでって。何時でも、どんな時もカーラの兄でいさせて欲しいって言ってくれたの。



「とっても大切な思い出の品なのね」

「そうなの。ずっと身につけていたから、裏にあった私とお兄様の名前が薄くなっちゃったのよ」

 ミミは優しく笑って、

「じゃあ、キチンと大切にしまいましょうね?」

と言って、まだ半分ほど残っている小山をちらりと見ると、カーラはぎごちない動作で自分のバッグをかかげると、

「時間停止もついてるのよ、このバッグ。······お母様が作った特別なものなの」

「仲直り出来たのね?」

「仲直りする前に逝ってしまったわ。だけど、こんな風になって、お母様はこんな私でもちゃんと愛してくれてたって分かったから、もう大丈夫」

 カーラはちょっと寂しげな笑い声を上げてから、

「だから、全部また仕舞っていいでしょう?」

「ダメよ。ちゃんと整理しましょうね」

とミミに言われて、カーラは項垂れたのだった。


 

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