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第121話 ミミズ少女の焦り

「ほい! ほい! ほいいいい!!!」


 アダマスの森の奥地にある湖の畔では、連日に渡り奇妙な叫び声が響き渡っていた。

 ドーラはライムと約束をした報酬の金貨を手に入れるため、レイスである従魔のレイビィにパンツを見せる作業をしているのだ。

 いつも以上に気合いの入りまくっているドーラのことを、フィーネは離れた場所で膝を抱えながら無言で眺めている。

 若干冷めた表情をしているフィーネは、となりで一緒にお座りをしているダイフクへと声をかける。


「……今日のドーラちゃんは一段とやる気があるみたいね。もしかして、何かあったの?」


「ワン」


 ダイフクは嬉しそうに尻尾を振りながら、フィーネの疑問に答えた。


「え? 最近出番が少なかったから、サービスシーンを多めにしているらしい? 人気を獲得するにはお色気が一番手っ取り早い? ちょっと何を言っているのかわからないわ」


 テイマーとしての素質を開花させたフィーネは、心を通わせていないダイフクとも会話が出来るまでになっていた。

 フィーネが不思議そうに作業を見つめていると、ドーラは作業の手を止めて何やら悩みはじめる。


「だ、駄目だ…… これじゃあインパクトが弱すぎる……」


 ドーラはディメンションワームで黒い靄を出すと、靄の中に手を突っ込んで何かを探している。


「あれ、無いな…… 何処に閉まったっけ?」


 ドーラが靄の中から手を戻して考えていると、靄の中から何かを持った女性の手が飛び出してきた。


 ヒョイ


「あ、そうそう、それです。ありがとうございます」


 その様子をフィーネは驚いた顔をして見ている。


「え? その手は誰なのドーラちゃん?」


「ドキィィィ! だ、だ、誰でもありませんよ! この中に人なんていませんよ!」


 慌ててドーラが差し出された物を受けとると、女性の手は親指を立てながら引っ込んでいった。

 取り乱しているドーラを見たフィーネは、深く追及はせずに話を進める。


「ま、まあ話したくないのなら無理には聞かないわよ…… ところで、彼女からは何を受け取ったの?」


 意図的なのかは不明だが、自然な流れでフィーネは話を誘導している。


「これはペンです。日用品とかのよく使いそうなものは、色々とディメンションワームの中に収納をしています。私が適当に中に放り込むと、彼女が中で整理をしてくれるんです」


「へー、その中の管理人さんみたいな人かな?」


「ドキィィィ!!! こ、この中に人なんていませんよ!」


 ドーラは隠し事が苦手なのであった。

 苦笑いを浮かべながらフィーネは話を続ける。


「え、ええ、そうね…… 私の見間違えだったみたいね。それで、そのペンで何をするの?」


「ふひひひ、こうするんですよ」


 ドーラはおもむろにパンツを脱ぎ出した。


「ド、ドーラちゃん! いったい何をしてるの!」


 ドーラは脱いだパンツを地面に置いて、ペンで何かを書き始めた。


「分かりやすいように大きめにっと…… うん、これで良し!」


 ドーラは再びパンツを履きなおした。


「見てくださいフィーネさん! これが完成形の『ほい』です! ほい!」


 フィーネはめくられたドーラのスカートの中を凝視する。


「こ、これは…… ドーラちゃんの名前が書いてある……」


「そうです! これなら初めて作業を見た人にも、私が誰だか一発で分かってもらえます!」


「で、でも、ここには私たちしか居ないから、初めてほいを見る人なんて何処にも居ないわよ?」


「居るかもしれません! いえ、きっと居るはずです! ダイフクもそう思うよね?」


「ワン」


 ダイフクは嬉しそうに尻尾を振っている。


「ほら、ダイフクも同意をしているじゃないですか! これが正解なんですよ! ダイフクの言うことに間違いはないんです!」


「そ、そうなんだ…… まあ、ドーラちゃん自身が納得をしているのなら、私は別にいいんだけど……」


「はい、それじゃあフィーネさんもパンツを脱いでください。名前を書きますので」


「は? 何で私まで?」


「フィーネさん! おっぱいが大きいからといって、調子にのっていちゃ駄目ですよ! 人とは常に新しい刺激を求めているんです! 好感を得るのは簡単ではありませんが、失うのは一瞬なんですよ!」


「え…… そ、そうなの? そんな風に強く言われると、何故かそれが正解のように思えてくるわ…… わかったわ! パンツを脱げば良いのね!」


 この日のフィーネはスカートではなくズボン姿であった。

 角付きに乗って移動するには、スカートよりズボンの方が乗りやすいためである。

 しかし、ズボンの場合はスカートとは違って、パンツを脱ぐには下半身の服を全て脱がなければならない。

 普段であれば絶対にやらないような行動であったが、迷いのないドーラの理不尽な言葉を聞いたフィーネは、雰囲気に流され躊躇なく自身の下半身をあらわにしてパンツを脱いだ。


「はい、ドーラちゃん。パンツを脱いだわよ」


 フィーネは脱いだパンツをドーラに手渡した。


「え? あ、有り難うございます…… フィーネさんって意外と大胆なんですね? あまりそう言うことを気にしない私でも、そこまで思いきった行動は出来ないです。あれ、そう言えば、何でフィーネさんは今日ズボン姿なんですか? もしかして、作業をボイコットするつもりだったんですか? ミーシャさんも作業を手伝うからって着いてきたくせに、スカートなんか履きたくないって言ってすぐに帰っちゃうし…… 悲しいですよ、真面目に作業をしているのは私だけなんですね……」


 ミーシャはアダマスの森に来て早々、ドーラからスカートを渡されてすぐに逃げ出したようだ。


「え、ち、違うわよ…… 角付きさんに乗って移動するのには、スカート姿だと不便だし…… そ、それにほら! 別に作業は下だけでなく、上でも出来るんじゃない? ほい、ほい、なんちゃって」


 フィーネは両手で自身の豊満な胸を持ち上げた。


「フィーネさん…… もしかして、調子に乗ってます?」


「ご、誤解よ。そ、それに、ドーラちゃんやダイフクちゃんに裸を見られても、私は全然恥ずかしくなんてないわよ。レイビィさんも見た目は人族の男性だけど、実際は魔物のレイスなんだしね。ラトちゃんが言っていたように、私も冒険者なんだから魔物に裸を見られたくらいでいちいち動揺なんてしてられないわよ」


「まあ、フィーネさんがそれで良いのなら私は何も言いません。ただし、レイビィはメチャメチャ男目線のいやらしい顔で、フィーネさんのことを見ていますよ?」


 レイヴィは鼻の下を伸ばしながらフィーネを見ている。

 賢者の悪意に侵される前のドルビィは、巨乳好きのおっぱい星人なのであった。


「え? そ、そう言う風に言われると、何か恥ずかしくなってくるわね…… って、こら! あなたたちまで何いやらしい事を考えているのよ!」


 フィーネは両手で下半身を隠しながら後ろを振り返った。


「ギャフン……」


「フゴフゴ……」


 フィーネの視線の先では、鼻から血を流した角付きと赤毛がひっくり返っている。


「まったくもう…… そう言うよこしまな事を考えているのなら、あなたたちとの従魔契約の件は無かったことにするわよ?」


「ギャン!」


「フゴ!」


 角付きと赤毛は起き上がってピンと背筋を伸ばしている。

 二匹との正式な従魔契約はまだだが、すでにフィーネに対しての忠誠心が出来ているようだ。

 そうこうしている間に、ドーラはフィーネのパンツに文字を書き終えた。


 「これで良し、フィーネさん急いでパンツを履いてください! その姿のフィーネさんはインパクトが強すぎです! 私の今までの努力が一瞬で無駄になっています!」


「え、わ、わかったわ!」


 フィーネは大急ぎで渡されたパンツを履いた。


「フィーネさんのパンツには、お尻の部分に名前を書きました。スカートを履いていないフィーネさんは、後ろ向きで両手でお尻を隠しながら作業をして下さい」


「なるほど、ほいのタイミングでお尻の文字を見せれば良いのね」


「そうです、それでは作業をはじめますよ。ほい!」


「ほほほい、ほほほい、ほほほいほい!」


 ドーラがスカートをたくしあげる横で、フィーネはサンバのリズムでお尻を隠している両手を広げた。

 あらわになったフィーネのお尻には、『ダイナマイトボディ漆黒』と書かれている。


「どんどんいきますよ! ほい! ほい!」


「ほほほい、ほほほい、ほほほいほい!」


 その光景を見ているレイビィは、幸せそうな表情で微笑んでいる。


「クックック、まるでここは天国のようですねえ」

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