幕間 カウラ
今回はカウラです。
「おぎゃー。おぎゃー」
この日、この村に大きな産声が響いた。
「おまえ、元気な女の子だぞ」
「よかったわ。私たちの愛の結晶ね」
「この子の名前は女の子だから・・・
ーーーカウラだな。」
この日,この世にカウラという少女が誕生した。
カウラは平民の生まれだ。
彼女の母親はミーシャ、父親がバアル。2人で農業をしていた。
幼いカウラはまさに純粋無垢。
聞き分けがよく村のみんなに愛されていた。
このころのカウラはまだ武の頭角を現してはいなかった。
その頭角を表すようになったのはあるできごとからだ。
その日、カウラは農業をしている父の手伝いをしていた。
カウラは同世代の子供よりは力もちであったので、その素直な性格も相まって父を手伝うのが大好きだった。
そしてカウラが麦を収穫していた時、急に
「魔物が出たぞー」
と言う声が聞こえてきた。
カウラの父のバアルは村でも力持ちだ。彼はそばにあった鍬を手に握ると,一気に駆け出す。
「ぱぱ,私は・・・」
幼いカウラは耐え切れずに聞く。
「家に入ってろ」
バアルはそうとだけ言うと,走っていった。
カウラはおとなしく家にこもる。
そばにはカウラの母親のミーシャが座っている。
外からは魔物のうめき声,大人の男の怒鳴り声,そして鈍器で何かを殴るような鈍い音がひっきりなしにしていた。
「おかあさん,こわいよう」
「大丈夫よ。だって,お父さんはこの村で最強なのよ」
カウラはただじっと待つ。
嫌な予感をぬぐえないまま・・・。
数分か,あるいは数十分,数時間が経っただろうか。
外の音がピタッと止まった。
「収まったかしら」
カウラの母がつぶやく。
おもむろに立ち上がるとドアを開けた。
そこにはオークがいた。
「え?」
カウラにはそこからがコマ送りに見えた。
オークの手が振り下ろされる。
その手はミーシャに振り下ろされるか,と思われた。
だがオークとミーシャの間に割り入るものがあった。
「どけ,ミーシャ」
バアルだ。
バアルはミーシャを突き飛ばす。
そして,オークの腕がバアルに振り下ろされた。
ゴシャ。
鈍い音がした。
バアルは地面にたたきつけられる。
そして,動かなくなった。
(ぱぱ・・・)
幼いカウラには父親の死,というものは大きすぎる。
カウラは固まった。
(ぱぱ,死んじゃった? そんなはずはない。さっきまで元気だった。死ぬはずがない)
カウラは立ち上がる。
(なんで? なんで? 私が悪かったの? ぱぱは最強じゃないの?)
そしてカウラはオークの姿を,父を殺した者の存在を認識する。
(あいつだ。あいつがパパを殺した)
(にくい。にくい。あいつさえいなければ・・・)
(あいつはママも殺す。殺すに決まってる。ゆるさない。あいつ,殺す)
その瞬間,カウラを黄金のオーラが纏う。
そのちからはまさに勇者だった。
(この力,すごい。豚,殺せる)
そしてカウラはオークに一気に接近した。
そして思いっきり殴る。
彼女の憎しみを載せて。
オークは吹っ飛ばされた。
遠くの地面にたたきつけられ,何バウンドかした後止まる。
オークは死んだ。
カウラは外に出る。
そこには数匹のオークと村人が戦っていた。
カウラはもう手加減などない。
(あいつら,ママを殺すかも。殺す)
カウラは手始めに近くにいたオークに近づくと,ジャンプしてその頭を叩き落とした。
(一匹)
カウラは他の個体に近づく。
そして,頭を殴った。
それだけでオークは脳震盪を起こし,ふらつく。
オークの頭がはじけた。
(二匹)
カウラは容赦などしない。
(三匹)
すべては母を守るため。
(四匹)
父を殺された恨みを晴らすため。
(五匹)
そしてオークは最後の一体になった。
カウラは歩む。
(負けない)
そのオークは先ほどどカウラが戦た個体と比べれば一回り大きい。
それもそのはずだ。そのオークはハイオークだったのだから。
だがそんなことをカウラが知る由もない。
たとえ知っていたとしても歩みを止めたりはしなかっただろう。
カウラは近くまでよる。
だが本能でそのハイオークの強さを感じ取っていたのか,すぐには戦わない。
最初に攻撃をしたのはハイオークだった。
その全体重を乗せたこぶしで殴る。
カウラは間一髪のところで避けた。
そして反撃を始める。
一気にハイオークよりも高く跳躍すると,蹴りの構えを取った。
狙う先はもちろん頭だ。
そしてその足が振り下ろされる。
ズドン。
大方人間の足から発さられることのない音が出る。
「つよい」
だがその攻撃ですらハイオークの頭を落としきれていない。
それほどまでにハイオークという魔物は強者であった。
だが,攻撃が通らないからと言ってす?素直に負けを認めるほどカウラは弱者ではなかった。
地面に降りると,次の攻撃に備える。
そして,ハイオークのパンチが来ると,それを紙一重で避け,その腕めがけて殴りかかった。
「これでどう」
だが結果は変わらず,多少はダメージが入っているのかも知れないが,大ダメージではないようだ。
そしてハイオークが迫る。
ハイオークが思いっきりジャンプをした。
どうやらその体重を生かして,押しつぶしに来たようだ。
「これは,まずいかも」
カウラはそう呟くと,一気に駆ける。
そして,ぎりぎりハイオークの攻撃範囲から逃げ出した。
だがその自由落下運動の二次効果である爆風はくらってしまう。
カウラは思いっきり吹っ飛ばされた。
カウラはたぐいまれなる戦闘能力を持っていたとしても,しょせんは子どもである。
痛みにも慣れていないければ,特別な戦闘技術などない。
カウラは地面との衝撃に備えて,必死に防御をする。
カウラが地面に衝突した。
カウラのまわりには小さいクレーターができてしまっている。
カウラはそれでも大ダメージを受けてしまう。
「くぅぅ」
口からそんな声が漏れてしまった。
そんなカウラにむかってハイオークが近寄ってくる。
どうやら確実に殺しに来ているようだ。
(私もここまで,か)
痛みでぼやけた世界でカウラは一人そんなことをおもう。
(でも,できるなら,村のみんなを守りたかった)
そんな時だった。
ーーー絶剣 明けの明星ーーー
ハイオークが粉々に砕ける。
「ふむ。これはどういうことなんだ」
カウラの耳にはここまでしか聞こえない。
だがそこに立っていたのは剣神と称される女だった。
そしてこの出会いが彼らの運命を大きく変えることになる。
だがカウラと剣神の出会いはまた別の話。こんど時間があるときにゆっくりとしよう。
本編もだいぶ書きあがってきたので更新を再開しようと思います。
ながらくお待たせしてしまい申し訳ありませんでした。




