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040話 頂上決戦を見た話


 もしかして今ここにいる龍は,もしかして風竜王と地竜王なのか? だとしたら,今から始まる戦いは,何だ。



 連は彼らの正体について,正解にたどり着いた。ふと地竜王の方を見ると俺の方をみており顔をくっとあげた。


 もしかして俺たちに逃げろと言っているのか。じゃあ速くここから逃げないと。だがなぜ俺に。


 そう思って連が周りを見渡すとその理由が分かった。


 つまり,俺以外は龍の圧にやられて正気ではなくなっているからか。つまり俺以外今動ける人はいないっ。


「ヒィィィ」

中にはパニックになっている騎士もいるようだ。


 これは早く指示を出さないと。

「みんな急いでこの場を離れろ。戦闘の巻き添えを食らうぞ」


 そういわれると戦場にいた騎士や冒険者は目が覚めたように動き出した。急いで町の中に走っていく。



 そして全員が町の中へ避難したとき二体の龍が動き始めた。


 はじめに動いたのは地竜王だった。地竜王が地面から大量の土の槍を発射する。風竜王はそれを華麗に避けると,お返しとばかりに風のブレスを発射する。だがそれは地竜王の作った土の壁によって地竜王には届くことはない。


 そんな攻防が龍同士で行われていた。文字に書くと大したことないように思えるが、これを行っているのはこの世界の最強の一角同士だ。当然その規模も威力もすさまじいことになっている。現に今も風竜王の放った風魔法が遠くの山にあたりその山頂が削れていた。もしこのブレスが町にあたったら町は文字通りなくなるだろう。


 これが竜王,龍に置いて最強の存在。龍とはこんなにすさまじい存在だったのか。これはダメだ。こいつらの前では俺ら人間はどれだけ強くなろうと無駄だ。俺たちは一瞬で死ねる。


 そんなことを考えながらふと地竜王の足元を見るとそこには俺たちと先ほど戦っていた魔物がいた。それは白虎だ。おそらく逃げようとしたのだろうが巻き添えを食らったようだ。他にもスタンビートで発生していたたくさんの魔物も風竜王のブレスや地竜王の魔法で消滅したようだ。さすがは龍王だ。


 俺の前ではまだ龍同士の争いが行われていた。どうやら地竜王はこの街を守りながら戦っているようだ。対して風竜王は気ままに攻撃してきている。この状況で地竜王が町を守り切れているのはひとえに地竜王の実力が高いからだろう。


 だがそんな異次元の戦いにも終わりが来る。初めて攻撃が当たったのだ。最初に当てたのは地竜王だった。地竜王の放った岩石魔法が風竜王の翼を貫く。そして地竜王は追撃とばかりに連続で土の槍で攻撃する。その一撃でバランスを崩した風竜王は避けられなかったようでそのすべてを受けてしまった。


 大ダメージを受けてしまった風竜王は大きく羽ばたくと逃げようとしている。どうやら形勢不利と見たようだ。


 風竜王はあっという間に見えなくなった。


 それを見ていた人は一人残らず茫然としていた。それも無理もない。本来の人間の寿命なら地竜王や風竜王などお目にかかることなどないのだ。それが今目の前にいて異次元の戦いを見せられている。


 それを知ってか知らずかはわからないが地竜王は背中の大きな羽を広げた。そのまま飛んでいくつもりのようだ。俺はそれを見ていることしかできなかった。


 俺はこのまま地竜王と別れてしまっていいのか。これは強くなるチャンスじゃないのか。

だが連は地竜王にコンタクトを取ることができない。もし攻撃されたらと思うと怖いのだ。


 くそ,もし俺がこんな怪物に襲われたら何もできずに死ぬ。俺は,俺は何も守れずに死ぬ。俺はもっと強くならないといけない。なんとしても強くなってやる。そして,強くなるにはせっかく目の前に強者がいるこのチャンスを見逃すわけにはいかない!


 俺が地竜王に話しかけようとした,その時だった。


(小さきものよ。我が分かるか)

俺の脳内に声が響いてきたのだ。

(あ,あなたはもしかして地竜王ですか)

(そうじゃ。我は地竜王。そなたこの世界の人間ではないな)

(はい。この世界に少し前に召喚されました)

(そうか召喚か。まあ良い。それより貴様強くなりたいんじゃな)

心の中を見透かされたようで驚く弘樹であったが持ち直す。

(はい,そうです)

(では問う。貴様はなぜ強くなりたいんじゃ)


 俺はそう言われて少しうろたえる。もしこの答えでダメだったらと思うと,自分の意見を言うのが怖いのだ。だが意を決して地竜王に言う。


(俺は,俺は仲間を守りたいから強くなりたいんです。もし仲間がピンチになったときに俺が何もできなかったら俺は絶対に後悔すると思います。だから強くなりたいんです。)

それを聞いた地竜王は笑った,ような気がした。

(そうか。満点ではない。じゃが悪くない答じゃ。強くなりたい若者を導くのも強きものの仕事か。貴様は人であろう。ならば精霊と契約するがいい。精霊はいたるところにいる。その精霊をつかまえ己と契約させるのだ。)


 これは俺にとって初耳だった。

(この世に精霊がいるんですね。分かりました。それでは精霊を見つけ契約します)

(うむ。契約したらこの国で冒険者をしている精霊を連れた少年を探せ。おそらくエンラとかいう街にいるであろう。そやつならばきっと精霊の扱い方を知っておるはずじゃ)

(わかりました。では精霊と契約したらその少年を探します)

(それでよい。それではさらばじゃ。それと我と話したことは内緒じゃぞ)

(わかりました。あ,ありがとうございます)


 そういうと地竜王は飛び立ち空の彼方へ行ってしまった。周りを見るとみな呆然としたままだった。そこで俺が声をかける。

「みんな,何ボーとしてんだよ。俺たち勝ったんだぞ」

そういうと何人かは正気を取り戻したようでハッとなっていた。だが次第に活気が戻ってくる。


「私たち勝ったのか」

「勝った,勝ったぞ」

「すげえ。ほんとに勝っちゃった」

そんな声がいたるところから聞こえてきた。連の周りには連の仲間たちが寄ってきた。

「やったね連」

「お前また強くなったな」

「とりあえずは解決かな」

「スゴイデース」

 こいつらうるせーな。だけど,今はこのうるささが,気持ちいいかもな。



これにて第二章完結です。明日から三章が始まっていきます。これからもお楽しみに。

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