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#2

その晩になる。トルテはアパートの自室にて、夕飯を食べながらラジオを聴いていた。夕飯はコンビニのカツ丼。それにはトルテオリジナルのタレを使用していた


『緊急ニュースです。シャロ王国がスウィートと名乗る組織に乗っ取られました。それに伴い、シャロ王国への輸入輸出及び、立ち入りが禁止されます。また、シャロ王を含む、シャロ家全員の身元が不明です』


王家には悪いことをしたが、国民が王依存なんだ。これは必要な死だ


チャイムが鳴る。トルテは無視して食べ続ける。すると、更に何度もチャイムが鳴る。食べている最中、チャイムは鳴り続けた。食べ終わると、トルテは扉の覗き口から外の様子を確認する


なんでこいつらが……


ケーキとティラミスが外で立っていた。ティラミスは手を振り、楽しそうだった。トルテは扉を強く開け、ケーキの顔面に思い切りぶつけた。ティラミスは楽しそうに話す


「お、トルちゃんの家だ!」


「一旦落ち着け。なぜお前らがいる」


ケーキは不満そうに目を細めた


「その前に、なぜチャイムを鳴らしても出ない?そして、なぜ人がいるのに扉を思い切り開いた?理解ができない」


「別に理解は求めてないけどな」


面倒な女だ


「それで、何か用か?」


そもそもなんで家を知ってる


「緊急の新しい指示を伝えに来ただけだから、そんなに怒らないで!ね?」


トルテは溜息を吐いた


「そうか、なら上がれ。話は中で聞く」


家に上げた。二人の椅子はなく、座布団を一枚用意し、もう一人用にタオルを床に敷いた。タオルの方は当然のようにケーキだった


「何か扱いの差が激しくないか?」


「私は座り場を用意しただけだ。座る位置の指定はしてない。位置についてはティラミスに訊いてくれ。一人暮らしだからな、基本どれも一つしか揃えてない。悪く思うな」 


「ティラミス、話をしよう」


「当然でしょ!女の子の柔らかいお尻で硬い所に座らせる気?」


ティラミスは大声で言う


器の広い俺もキレそうだ


「なんで俺がお前の尻に気を遣わなければならない?というか、柔らかいのなら硬い場所に座って鍛えればいい」


「ケーキくんひっど!女の子にその発言?」


トルテは呆れた様子で言う


「たったと話せ。それと夜中に大声を出すな。壁の薄いアパートだからな」


「それより、なんか美味しそうな匂いする」  


「カツ丼。早く本題を話せ」


「そうだよね、明太子」


ティラミスは床に地図を広げた。ヲーライツ王国の地図だった。スウィートの拠点もそこにあり、今居るその場所もその国だった。ティラミスは地図の右側を指差す


「ヲーライツ博物館にマトリッツ王が向かってるらしい。現在進行形で!スウィートのフルメンバーで国を乗っ取れって命令」


確か刀の博物館だ。なぜ王が、こんな夜中にそんな場所へ向かったんだ?それに……


「ここは大国だ。強い敵もシャロ王国とは比にならない量だ。それに、シャロ王国と違って王族を殺すことは勝利条件に含まれない。何を考えて今のタイミングなんだ?」


ケーキが答える


「簡単に言えば、シャロ王国を襲撃した犯人の顔を、ヲーライツ王国はまだ知らない。その情報がどう漏れるかなんて分からないからな。奇襲の刺さる最後のチャンスと考えるべきだ」


トルテは納得した様子だった


「それで、作戦は?」


「今回は四つのチームに別れる。ここの三人は王とその護衛が相手。エクレアとプリンの二人には、国の北部から広範囲能力で国全体を破壊してもらう。敵は危険度から考えて多くの戦力を送るはずだから、みんなが動きやすくなると思う」


シャロ王国の時と似たような先手だな。それに、自分の生まれ育った国を攻撃か……少しやりにくいな


「カステラとタルトの二人は、国中央に位置する敵の本拠地。城も養成所も現役の能力者も全てが揃ってる。けど、主戦力は王の護衛に回ってるし、他に戦力を割くと考えると、二人でも分のいい戦いになるはず」


「ショコラは?」


「単独で左側。つまり西で雑に暴れてもらう。これで敵は西にも東にも北にも、そして中央にも戦力が欲しくなる」


向こうはこちらの戦力を把握していない。どう戦力を割り振ればいいか分からないはずだ。更にこちらの能力が分からない以上、どの能力者が誰に有利かすらも分からない


「勝算は高いな。決行は?」


「十分後でね。ほんとにさ、呑気に茶番してたけどさ……もう出ないとやばい!タスケテ……」


三人は慌てて走っていた。しかし三人が本気で走れば、異常な速さだと明らかに怪しまれる。故に常識的な速度で走っていた。夜道だが、大都市に加え帰宅の時間帯であることから、人の賑わいは相変わらずだった。その頃、エクレアとプリンは建物の屋上で会話をしていた


「僕らは広範囲能力で相手の戦力をこっちに割かせるのが目的。周りのチームと同時に動いてしまうと、ヲーライツは僕たちを後回しにせざるを得なくなる」


「ほんなら、作戦より早く決行するんか?」


「その通り」


プリンは携帯を見せる


「ほら、ボスからのメール」


「お前の作戦やないんかい」


そんな二人よりも早く、ショコラは一人暴れていた。死体を引きずり、優雅で楽しそうに歩いていた。誰もが避難をしようとしていた。その瞬間、場の全員が重力により押しつぶされ地に倒れる


「助けて」


「この化け物が」


ショコラはそんな声を他所に、一人、また一人と、次から次へと人々の身体に触れていく。触れる部位に法則性はなかった。しかし、ショコラの触れた人間は次から次へと力が抜けていく


「そこで何をしている!」


何人もの兵士が剣を構え立っていた


「あ?遊んでんだよ。見りゃ分かるだろ」


ショコラに触れられた民衆は、その兵士の方へ走り襲いかかる。完全に洗脳されていた


「ここには無限に駒がある。歯向かった人間以外を殺すなとは言われてるが、他人に殺させるなとは言われてねえからな……さて、兵士は国民を切れるかな?」


兵士たちは簡単に取り押さえられていた。国民を切れなかったのだろう。ショコラは少し不満そうに舌打ちをする


「何をする?離せ!」


「こんな事をして許されると思ってるのか?」


「所詮下っ端だな」


その頃、中央に位置する城。王と面会をするのは、長く橙色の髪をした女。嘗て伝説の能力者たちと渡り合えるとも言われた女であり、国の最高戦力だった


「フラティア。国西部から応援要請が入った。隠れて見ていた兵が言うには、そいつの能力で国民が次々と洗脳されてるらしい」


「そいつは意味もなく暴れているんですか?」


「現状はそうとしか言えない。それか、シャロを襲った連中かもしれん。つまり何かをする為の囮ってやつだ」


「スウィートでしたっけ」


マントを付ける、髭の生えた若い王だった。名はオワノーズ。真の王であり、マトリッツは自分を隠す為の偽りの王だ。王自らが策略を立て実行に移すのがヲーライツ王国のやり方だった


「シャロとは隣国なんだ。奴らの次の標的が此処という可能性も考えられる。だとすれば、相手はあのレファンチに勝った奴らだ。国全ての戦力が必要になるかもしれん」


「そいつが愉快犯という可能性もありますが、もしスウィートの連中ならば、マトリッツの護衛がシーサイドだけは少なすぎますね」


「故に七割の兵をそこに向かわせる。そして、洗脳の奴にはボルティーヌを向かわせる。あいつなら簡単には負けない」


カステラとタルトは二人で本部近くを歩いていた。下見と敵の行動を見張る為だ


「タルトは全く話さんからのう。退屈じゃ」


その瞬間、国中に強風が巻き起こる。シャロ王国を襲ったような、軽い物だけが飛ぶレベルだ。しかし、この程度でヲーライツ王国の家は壊れなかった


「始まったのう」


プリンは自身とエクレアを透過し、二人で屋上から国全体を見渡していた。都会の夜景はとても美しかった


「この程度の風だとダメか」


軽い騒ぎになっている程度だった。プリンは人のいない場所を狙い、銃のようにその風を国中に放つ。それが振り注ぎ、国には幾つもの強風が降り注いでいた。当たれば普通の人間は即死、電柱くらいなら破壊するレベルの威力があった


「ほんなら俺もやるで」


その瞬間、エクレアを震源地に、国中を大地震が襲う。その部屋を出ていこうとしたフラティア。しかし、その揺れが起こると王の方へ顔を向ける


「どうしますか?洗脳に大地震……これは何かの悪夢でしょうか?」


「洗脳も揺れも全て、囮だと考えることができる。となれば狙いは中央だ。ここから戦力は動かしたくはないが、放置できるほど甘い攻撃ではないようだ。となれば、地震の奴は化け物に頼んでみるとしようか」


王は携帯で素早く文字を打っていた


「面倒事は新人に任せとけばいい。フラティアはここを守護しろ。先のある若い能力者が何人もいる。それに、国を直接動かすような権力者だって多い」


「守護ですね。任せてください」


部下へと指示を送っていた。名義はマトリッツだ。その指示を受け取ったのは、剣を腰に掛ける、青く跳ねた髪をした男だった。名はフォラインと言い、国でも屈指の強さを誇る能力者だった


「地震の犯人を捕らえろか」


《追伸:震源地は北部。地震と同時に起こっている強風使いも同所に居る。ノーフォートを連れていけ》


メールと共に、詳細な位置の記された地図が画像で送信された。フォラインは納得した様子だった


「ノーフォートか。ノーフォートねえ……」


そして、まだ未熟な兵士の若い女は、その山へと訪れた。フォラインと同時に受け取った命令であり、その女の名はアカリア。上手く説得しろと、それだけだった


荷が重い……ヒカリノって、昔あった最強チームのメンバーだったよね?なんで一年目の私が


アカリアは全身が震えていた


よ、夜の寒さが襲ってくる……


山を登っていくと、小さな小屋が見えた。王の命令通りならば、そこがヒカリノの家だった


「ボロすぎ」


ドアをノックする。見ると、人が生活しているような跡は全くない。ただ、灯りも付いてないその小屋からは、ただならぬオーラが出ていた。ドアが開いた。その中には、若い女がいた。長い髪をポニーテールにした、体つきのいい女。背は高く、目は鋭くも優しかった。そして、白シャツに短パンとラフだった


「えっと、こんにちは」


「ボロくて悪かったな」


聞かれてた……終わった。ヒカリノに殺されるか、ヒカリノを怒らせたことで関係が悪化して王に処刑されるかの二択。どうにか言い訳しないと


「そ、その、今のは冗談です……あはは」


これしか言葉が出てこない!


「別に事実だ。それより、茶でも飲んでくか?客なんて二カ月ぶりだからな。ゆっくりしていけ!」


嬉しそうだった


「いや、その、戦ってほしくて」


「私とか?果たし状ってやつか」


状ではなくない?


「って、いや、私とじゃなくて……」


ヒカリノは木刀を向ける


声が小さすぎた……終わった!


アカリアは首を横に大きく振った


「冗談だ。王に私を呼ぶよう言われたんだろ?この揺れやら風の奴を倒してくれって」


「そうです!お願いします!」


「すまんが、私は現役を降りた。もう昔のようには戦えないし、そもそも国に従う義理がない。元より、私たちは国営チームじゃなかったしな」


「え……断るんですか」


王の頼みなのに……この人どんだけ凄い人なの?もしかして王とタメだったりして。そんなことより、説得しないと私の立場がヤバい


「そうだ!大金!大金と一生タダ飯!どうですか?それと温泉旅行券!それと……」


「今更それ如きで私は動かんと言うか、今の私には望む物がないからな。強いて望むのなら、ずっとこうしてぐったりとな。何もする気が起きない」


うつ病みたいなやつかな?って、それだと困るんだけど……どうしたら戦ってくれるかな

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