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#1

長い黒髪の少女、トルテは『スウィート』という組織に属している。十七歳、その若さで。組織の名前も、メンバーの名前も全て、トルテを起点にスイーツで考えられた物だった。メンバー全員がその会議室に集い、統括含む九人で話をしていた


「ほんで、国は取引に応じんのか?」


スキンヘッドの男だ。鍛えられた肉体と、巨大な身体をしている。名はエクレア。トルテの本名とは違い、コードネームみたいな物だ。八人全員に共通しているのは服装。全身何を着ても良いが、色は全身白である必要がある。エクレアは白いシャツに、白い短パンを履き、タバコを吸おうとしていた


「室内で吸うとか何考えてんの?」


そう話す少女の名はティラミス。トルテよりも少し年上だ。長い金髪をしており、頭には白い魔女帽子、服装は白いロングコートに白い箒と、明らかに魔女を意識していた


「そうやった、そうやった。すまんな」


エクレアはタバコを仕舞った


「まずは国を乗っ取る。優しく取引という形を取ってはいるが、そろそろ武力行使に出てもいい頃だ」


ケーキがそう話す。目が隠れるほどに黒色の前髪が長い青年。背は高く鋭い目をしていた


「今回こそは国が応じるかもしれないよ」


話したのはプリンという名の青年。ウェーブの掛かる長い銀髪であり、誰がどう見ても女だった。服装はワンピースを着ている


「なら答えを確認するか。統括、国の返事は?」


ケーキが統括と呼ぶそれは、誰がどう見ても狐だった。しかし、色が不気味な程に白い。統括は静かに首を横へ振る


「だろうな」


「僕も知ってたけど……」


あんまり武力行使は使いたくないんだけどな。スイーツが美味しい国だし


「あんな国、早く潰さねえか?」


ショコラという女がそう訊くと、統括は首を横に振った。地につく程に長い桃髪の女。トルテと並ぶくらい小柄であり、楽しそうに不気味な笑みを浮かべていた。白いドレスを着用している


「統括は使えねえな」


「これはボスの判断じゃ。そして、ボスにも考えがあるのじゃろう。焦りは失敗を生むからのう。慎重に事を進めておるんじゃ」


そう話す男はカステラ。服は着ているが全身が骨だった。声の出ている原理は、隙間なく骨で覆われているからだ。人骨とは構造が少し異なっていた。最後に何も話さない男、名はタルト。二メートルを超える背丈と、紫色の肌が特徴だった


安っぽい効果音と共に、そのモニターには文字が表示された。それぞれに向けられた指示が記されていた。トルテは真っ先に立ち上がる


「プリン、ショコラの二人と共に、シャロ王国を潰すのか?三人は多すぎる気もするが」


カステラは返す


「言ったじゃろ?ボスは慎重なんじゃ」


「そうみたいだな」


「けど、ようやく潰す指示が降りたな」


ショコラは嬉しそうだった。三人は国へと到着した。ショコラは笑みが大きく漏れていた


「プリンは広範囲攻撃で注意を引け。なるべく誰も殺すな。そして、ショコラは王城へ向かえ。王を頷かせろ。頷かなければ王を殺せ」


「分かってんじゃねえか」


こいつは自分の楽しい仕事しかしない。一つ扱いを誤れば、計画に大誤算が生じる。逆に、扱い方次第では優秀な駒になる


ショコラは上機嫌そうに王城の方へと向かっていく。その背中が見えなくなった


「ほんとに君はショコラの扱いが上手いね」


「十年間の付き合いだからな」


そうだったんだ


「プリン、敵の気を引け」


「いいよ。少しだけね」


おおよそ二百平方キロメートルの国。その国を強風が襲う。急に台風が現れたかのように、家は倒壊し、物は飛ぶ。何より軽い子供くらいならば飛ばされてもおかしくなかった


「こんなもので大丈夫かな?風量は」


「完璧だ」


風が止む。一瞬にして、国が崩壊した。殆どの家は崩れ、飛ばされ怪我をする子供も少なくはない。国はパニックに陥っていた。同時に、多くの兵が街へと出てくる。一人の兵は、その男に報告をする


「レファンチ殿!敵の奇襲です!」


酒を飲んでいる男だった。黒い髪の跳ねた、髭を生やす男。それなりにガタイは良かった。腰には刀を掛けており、また一口と酒を飲む


「レファンチ殿!街に強風が……」


「うるせえな!分かってるよ。ここ見りゃ分かるわ。敵の場所だけを伝えろ」


その居酒屋はボロボロに壊れていた


「風の発生は国の入り口付近です。犯人の特徴については不明。それと、王城へ侵入者が入ったとの報告が」


この風は王城への侵入を隠す為の物と考えるのが普通。敵は複数の可能性が高いな。少なくとも入り口からここまでの範囲は風で破壊できる実力。この程度の破壊力なら、俺の敵じゃないな。しかし目的は乗っ取りと戦力の分散。敢えて力を抜いてると考えるべきか


レファンチは立ち上がる。男はこの国で最も強かった。酒を片手に歩き出すと、その兵士は後を着いてくる。呑気に欠伸をしていた


「それで俺は、王城と入口のどっちに向かう?指示がないなら王城へ向かう。特攻してる奴が一番強いだろうからな。少なくとも近接戦は」


「王城はフォット殿とラプンス殿がおられます。ですので、レファンチ殿は入口の方へお願いします」


「はいよ」


あいつらがいるなら、敵が俺の想定より強かったとしても大丈夫だろう。それより、戦力が割かれないことに怒って国を更に破壊される方が面倒だ


年老いた王だった。その部屋には既にショコラが入っていた。王は震えた様子で指差した


「ど、どうした?」


「あ?」


「フォットとラプンスをどうした?」


誰だそれ


「そんなんどうでもいい。これは、国を支配下に置かせろって話を断った罰だ。今からでも受け入れるか?それとも拷問されたいか?」


レファンチは国の入り口付近へと到着した。そこには明らかに目立つ、白服の二人がいた


「なるほど。もしかして、この国の権利を寄越せって言ってた奴らか?確か、スウィートって組織の」


「話が早いな」


トルテは前へ出る


「二人揃って若いな。ここは狂った女子の遊び場じゃねえんだが……残念、下調べが足りなかったな。俺を甘く見て乗っ取れると高を括ったろ。小さい国だからな。そう思われても仕方ねえが」


トルテは手に剣を召喚した。そういう能力だった。気がつくと、トルテはレファンチの後ろに立っていた。剣と刀のぶつかる音が響く。レファンチの刀と腹が深く切れていた


「私の瞬間移動に反応した?」


「なるほど。何でも切れる剣的な。どう頑張っても刀じゃ抑えられんわな。そして、ヒカリノみてえな足の速さだ。剣の方が能力だとすると、そっちは素で走ってんのか?」


ヒカリノだと?こいつ、師匠と戦ったことがあるのか?師匠は素で走ってるが、私のは能力。圧倒的速度で全てを切る。私は擬似的に師匠と同じ動きができる


「俺は泥人間だからな。悪いが、これは傷にすらなってねえ。だが、俺は大きな懸念を持っている。それは、お前らが予想より強かったって事についてだ」


レファンチの傷には泥が埋まり完全に直る


「自信を無くしたか?」


男から笑顔が消えた。真剣な顔になると、酒瓶を捨てた。兵士が新しい刀を渡すと、それを両手で持つ。場の空気が鎮まった


レファンチ殿が本気を出した


「自信なんて話じゃねえ。城に向かった奴がお前らレベルの実力者だと考えると、フォットとラプンスの二人じゃ足止めにもならねえって話だ。それで話すなら、風使いの奴も加減に加減を重ねた挨拶をしてたんだなと」


「考え通り。風使いは僕だよ。けど、さすがにトルテに並ぶかと言われると怪しいかな」


「トルテ……そうか、ヒカリノの弟子か。ヒカリノがこの国に滞在してた頃、酒場でよく話してたもんだ。五年くらい前か?私の弟子が独り立ちしてったって悲しそうによ」


男は溜息をはく


「ヒカリノも可哀想だ。五年掛けて育てた弟子が、こんな失敗作になるんだからな」


「図に乗るなよ」


「怒るなよ、失敗作」


トルテは瞬間移動をし、その最中に男を切ったつもりだった。しかし、トルテの剣が折られていた。その瞬間に、男の強さを悟った


「本気で言ってるのか?」


「簡単な話だ。瞬間移動しながら切るってことは、瞬間移動前に剣の位置を調整しなきゃならない。瞬間移動中に剣を動かすなんて無理だからな。そう考えれば、剣の位置は大凡分かる。そしたら剣の側面をタイミング良く叩き割るだけだ」  


確かに甘く見ていた。ボスが三人も送った理由はこいつか……納得が行った。ただ、こっちは一人じゃない


トルテは折れた剣を捨てると、新しく剣を召喚した。それと同時にプリンは両手を背中に隠す


「僕も行こうかな」


次に攻撃をすれば、奴は反撃を狙ってくるはずだ。私が剣の位置を事前に置くように、奴も私の来るだろう位置に剣を置くことができる。私が左に剣を構えれば奴も左に構えれば良く、正面なら奴も正面。奴は必ず互いにダメージを負う形にできる。そうなれば、有利なのは泥人間のあいつだ


プリンは自分を風の力で大きく押し、風速でレファンチの元へ向かう。レファンチが刀を構えると、プリンは左手を背から出し男に見せた。一瞬、その警戒がその手へ向く


左手はフェイクか


プリンが右手を出そうとした瞬間、レファンチはプリンに切られた。左手で剣を振ったようにも見えるが、剣は持っていない空振り。それと同時に、トルテは瞬間移動をしていた


動揺した。剣の構える位置は見られてない。そして、泥人間だろうと分解されれば死ぬ


レファンチの首がトルテにより切られた


「任せて」


その首を、プリンが風で粉砕した。レファンチの身体は動かなくなり、その場に倒れた


「初見だと透過能力は刺さるね」


プリンは剣を透過させて所持していた


「しかし、ほんとに強かった。この私が差しで負けかけるなんて。二人必要なわけだ」


王は立ち上がる


「拷問されようが国は譲らない。王として!ここを譲るわけにはいかない!」


「誰もお前を拷問するなんて言ってねえよ。誰がご所望なんだ?おっさんの鳴き声なんか。王女に言ってんだよ。四歳だっけか?」


王の表情は変わった


「そうか、お前がそこまでのクズだったとは。くそ外道が!ハゲ面!アホビッチが!お前みたいな人間がいるから──」


王は重力に押しつぶされ粉砕した。ショコラの能力である重力操作による物だ。ショコラは金切り声で大きく笑った


「死んだ!死んだァ!あははは!」


転がり落ちる眼球を踏み潰した


「最低限しか殺さないあいつらとは違う。こっちは殺したくて仕方ねえんだよ!スウィートだって邪魔な奴を殺す道具に過ぎない」

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