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*03*

 ああ、やっぱり好きだな。


 さっきのハグもすごくドキドキしたし、気持ちよかった。

 少し反芻し、多幸感に包まれる。私はふふっと小さく笑うと茶器を片付けた。

 いただいたアーフの実は速やかに保管庫に入れた。傷んでしまったらもったいないからね。

 一つだけ手のひら大のをもいで水で簡単に洗う。かぷっと噛り付いたらとても瑞々しくて甘くって、ネクタリンみたいな味がした。

 「あ、これ、大好き」

 食べながらくすくす笑った。

 私はネクタリンももちろん大好きだった。夏から秋にかけて店で見かけると毎年必ず買って食べるほど大好きな果物だ。


 明日の夕飯のデザートに、これをタルトにして持っていこう。

 クリームはそうだ、カスタードクリームとクリームチーズを合わせた濃厚なものにしよう。絶対に美味しい味になるはずだ。

 心の中で想像してふふふと笑った。


 夕方、庭に出てみた。

 家庭菜園は毎朝スプリンクラーが水やりをしてくれているので、葉がほこほこしている。

 果樹の木も順調に育っているし、家畜小屋の鶏も元気だ。

 卵を採取して、自動えさやり機と水やり機の中身を補充しておく。


 ガーデニングもスプリンクラーが水やりしてくれているので美しく咲いていたし問題ないだろう。

 本当にフレンディの世界にいるんだなぁ。

 私は空を見上げた。

 そこはどこまでも広く青く澄んでいた。



 私は冷蔵保管庫の材料を見ながら夕飯を考えた。

 ついでに明日何を持っていくかも考える。

 

 明日はフィンもいるし。

 そうだ、丸鳥でスープを取ろう。スープはこれからの私の食事のストックにできるし、丸鳥はフィンに食べてもらえるし。

 狼だから犬のご飯を参考にしたらいいよね?


 私は大きな寸胴鍋に掃除した丸鳥と、セロリ、しょうが、にんじん、たっぷりの水を入れて火にかけた。

 沸騰しないぎりぎりの火加減をキープさせてコトコト火にかける。ぐらぐら煮立たせると白濁してしまう。それはそれで美味しいけれど、今回は澄んだスープが欲しかった。

 

 明日は彩野菜のサラダとパン、それからさっき考えていたデザートを持っていこう。

 これならフィンも一緒に食べられる。

 うん、決まり。


 明日の夜ごはんが決まっても今食べるものが決まらない、なんていうのはあるあるだと思う。

 私はくすりと笑って冷蔵保存庫の中のすぐに食べられそうなものをいくつか見繕って食べることにした。


 自分で選りすぐって決めたお風呂に入り、自分で作ったバスソルトの湯で肌を整え、自分で作ったシャンプーやトリートメントで髪を労わって、自分で作った石鹸で以下略。

 とにかくスキルカンストの私が作った美容品でいろいろ整えたら、すべて最高だった。

 ていうか、入院生活していた私は長くまともにお風呂に入っていなかったのだ。病院は基本シャワーだけだったし、インフルエンザになってからは清拭すら難しい状態だった。

 だから久々のお風呂は気分的にも最高だった。


 汚れものの衣類を洗濯乾燥機に入れて、スイッチを入れる。

 この世界に洗濯乾燥機の概念を持ち込んでくれた人ありがとう!

 

 自分で作った保湿美容液を肌に含ませたあと、私は台所にいって、ずっと火にかけていたスープの加熱を止めた。

 このまま朝まで冷ましておく。

 「いいにおい」

 私は鍋の中のにおいを吸い込んで目を細めた。

 それから冷蔵保存庫からレモン水を取り出しグラスに注いだ。


 飲みながら考える。

 明日、目が覚めて現実に戻っていたら?

 いや、たぶん私あの状態ってたぶん終わってるよね?

 その場合どうなるんだろう?


 突然足元がおぼつかないような不安に襲われて、私は自分の胸の前で手をぎゅっと握りしめた。

 この世界は、一時の夢?

 においも、味も感じるのに?

 今夜眠って、明日この世界で目覚めるだろうか?

 明日カナンさんとまた会う約束をしたのだ。

 

 もし、目覚めなかったら?

 またすべてを失うの?


 私は自分の手で自分の体を抱きしめた。




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