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 終16、とある少女の願いは次元を越えて奇跡を起こす

 四季彩にこの思いは届かない。

 誰もがそう感じ、諦めかけていた。

 己のパートナーを失い、半ば全てを放り投げたい気持ちであっただろうか。


 しかしそんな絶望と閉ざされた空間の中で咲良だけは決して諦めたりはしなかった。

 彼女もまたパートナーであり、今や恋人同然の間柄の影虎を傷付けられ、内心では怒り浸透であったにも関わらず、眉を下げそれでもなお四季彩に語りかけた。



「思い出して! 私達は何故出逢ったの? 皆で平和を取り戻すためでしょ!? あなたは誰よりもそれを望んでいたはずでしょ!」

「黙れ、小娘! 私は無縁様と共に神が退(しりぞ)き、魔が世界を納める世でこそその願いは叶うと確信している」


 まるで口調までも無縁のようだった。

 背後に迫った無縁もまた始めて自身の思いを語りだした。


「その通りだ。この世は腐っている。神々は大地を見下し、己れらがあたかも造物主であるかのように慢心し、全ての(ことわり)ですらが自分達が決められると勘違いしている」


「それは神々へのあなたの見解であって、人間達はどうなるの!」


 強い口調でまことは疑問を呈した。


「フフ。それら睥睨(へいげい)する神々に(おもね)るのが貴様ら人間だ。長い年月たいした理由もなく、神々が敵対したからという理由だけで、妖怪それに魔族を悪として捉えてきた。魔族は無実の罪に晒され、不要な罰を受けてきた。我は神であるが故に神・人、それに魔が平等である世を造り出す」


「な、なんか根が深そうよ、まこと…………」

「だけど人間だって、神様だって一生懸命に()を生きているはずよ! 魔族にしたって今の世にきちんと向き合って自分らしく生きようと必死でもがいているかもしれないのに、あなたがその全てを否定してしまう行動を取るのはおかしいわ!」


「は、話し合いましょ! 三者三様の思いを汲める世にするために!」


 栞菜は両手を上げ、左右に動かしながら無縁の懐柔を狙ったがそれは届かなかった。


「フフフ。面白い娘達だ。我もそれを何百年何千年と待ち続けていたが、今の今までそれが叶うことはなかった……」


「それは違う! はぁはぁ……己の事ばかり考えて生きておる者なぞ一人もいないのじゃ! ふぅ……お前は自分の悲しみを他人のせいにして逃げているだけとまだわからぬかっ! き、羌月(きょうげつ)はいつも何と言っていたか思い出せい」


 途切れ途切れの巌鉄斉の言葉は無縁の心を突き刺した。


「羌月……」


「だれ? 誰のことなの??」

「わかりません! ですが過去に何かあったんでしょうか?」

「そんなことより、四季彩さんが攻撃を仕掛けてくるわ! 防ぐわよ、姫ちゃん!」

「こっちも守りの体勢を取りましょ! 栞菜」

「えぇ!」



 咲良を除く4人は最後の要であるリーダーを守るように、無縁に対してはまことと栞菜、四季彩側には茜と姫子が一歩進んだ。


「なんか絶体絶命ってのも悪くないわね! 私は後悔なんかしてないから! 咲良に任せるわ!」


 栞菜のその言葉にそれぞれが続いた。


「そうですね! 咲良さんと……皆さんと出会えて楽しかったし、たくさん笑いました!」

「あなた達はいつも揉めるんだから! 調整役も大変だったわ。だけど……栞菜と同じく、後悔はまったくしていないわ!」


 咲良を振り向いた茜はニコッと笑うと皆に続いて言った。


「絶望的だけど、あんたなら何かやってくれるって……皆、謎の期待をしてるの。咲良……この世界を守ってよね!」

「あ、茜………」


「お遊びはこれまでだ! 消し飛ぶがよいっ」


 無縁の闇の咆哮と四季彩の混沌の衝撃波が鍛冶ガールを襲う。

 それぞれは自身の力を防御に回して対応していたが、それもそう長くは持ちそうになかった。


「なんて力なの!? 私達の力なんてまるできかないの?」


 まことはそう言いながらも懸命に防いでいた。

 防御壁が中和されるようにみるみる溶かされていき、丸裸となったその時だ。

 不思議な声が咲良に届いた。



「咲良とやら、高々と我等の名を呼びなさい! あなたの願いと理想を乗せて、我等の名を!!」


(な、何っ!? 誰なの?!)


「刻が惜しい。さぁ我等をお呼びなさい! ()()よ!!」


 咲良の胸の辺りに6つの光る珠が突然出現し、咲良に語りかけた。今にも突破されそうな仲間達を視線に焼き付け、咲良は無我夢中でその声を信じ、薄明かりが照らしはじめた空へ向かって大声で叫んだ。


「…………真羅八龍神(しんらはちりゅうじん)よ、ここに集えっ!!」



 夜空の雲を吹き飛ばし、遥か彼方から6つの光がブルーインパルスの一隊のように出現し、6色の輝きを放ち、今にも消し飛ばされそうだった咲良達を守るように配列した。


 その中の黄色く発光する球体が稲妻のような勢いで無縁の攻撃を受け止めた時、もはやこれまでと諦めていた巌鉄斉が目を剥き出し言った。


「ば、伴峰(ばんほう)!?」


 無縁の攻撃を退けた、伴峰と呼ばれた若者は振り返ると悪態をついた。


「じいさん、一人じゃ無理があんぜ! なんで()()を呼ばねんだよ!」


 その反対側、四季彩の攻撃もまた、謎の球体から姿を露にした、例えるならばプラチナに輝く絶世の美女とでも言うべきか、その女性が軽く受け止め吹き飛ばしていた。


「そうですわよ。我等は一心同体。本当にギリギリでしたわ」

(ひらめき)、お前まで……しかし何故…………」

「俺達だけじゃねーよ!」

「そうですわ。巌鉄様、上をご覧下さい」



 巌鉄斉と鍛冶ガールは突如現れた絶大な力を秘めた6体の存在を、文字通り神様でも見るような顔をして、夜空へ視線を移していた。

 空には4個の球体が相変わらず目映い光を出していたが、少しずつその光は球体に吸い込まれるように消え去り、()()の4名が姿を現した。


「巌鉄様、ご無事でしたか!」


 一番年齢が上そうな落ち着いた雰囲気の金色の霊気を帯びた美女が言った。見た目は先に閃と呼ばれた女性と瓜二つであったが、こちらは黄金に輝いていた。


(きらめき)か………」


 煌と呼ばれた女性は残る3人にテキパキと指示を出し始めた。


一帆(かずほ)海鏡(かいきょう)。すぐに巌鉄様達の治療を!」

「はーいっ!」

「はい……」


 一帆と呼ばれたキュートな少女と、海鏡と呼ばれた大人しい少女はそれぞれ返事をすると、大自然の癒しの力と揺蕩(たゆた)う水の流れのように傷付いた一行の回復にかかった。


 そうこうしている間に伴峰と閃は散らばった五柱神を集め、己れらも回復役に徹した。

 わずか数分の出来事であったが、それは現実であり奇跡であった。

 そして次の攻撃に備えていた煌は無縁、四季彩に一定の間隔で睨みをきかしている。


「むむぅ……真羅八龍神が揃うとは……いったい何故? 突然現れたのだ……」



 焦りの表情を見せ始めた無縁は猟銃の照準を合わせるような目付きで、一人だけピンピンしていた咲良を見詰めるのであった。



 次回 終17、6番目の巫女、その名は四季彩神無!




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