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 終15、特攻! 五柱神、潰滅

 やっとの思いで到着した咲良と影虎は絶望を味わう事となる。

 既に黒き柱をして五芒星は六芒星へと姿を変えつつあり、正義の名の元に注ぎ込んだ力は全てが宿敵、無縁がものになろうとしていたからだ。



「どうなっちゃったの!? これぇ」


 咲良の素頓狂な声は響き渡ったが返事をしてくれる者はなかった。

 空中から見ると、茜と軍司、天子と巌鉄斉が一塊となり、その先に見る影もないほど変わり果てた四季彩。

 その行く手を塞ぐように空には暗黒龍・無縁が立ちはだかっていた。

 直感的に現状を把握した影虎は無縁に対して言い放つ。


「貴様が無縁かっ! 許せん! そこになおれぃ、成敗してくれるわっ」

「ムフフ。かつては世界を厳然と統括する立場にあった八龍神も地に落ちたものよ。貴様のような人間風情が龍神てか? 片腹痛いわっ」



 この世界で数多の力を得た無縁にとって龍神一人の力なぞ子供の手を捻るようなものであるのだろうか。

 現に茜を守ろうと無理な体勢ではあったものの天馬・天子の力を合わせたとて巌鉄斉は平伏(ひれふ)していた。


 そうこうしているうちに、まこと・栞菜・姫子もパートナーの神々と共に到着。

 無縁を取り囲むような形となった。


「これはまずいですね……」


 白夜の悲壮感漂う台詞に千恵も天狗も無言で頷きをくれ、額には汗をびっしょりかいていた。


「これほどの力を持っておったとは…………」

「私達のような末(・)端(・)の神族のにはどうしようもないってことなの…………」


 頼みの五柱神も無限大に広がるブラックホールとそこから絶えず力を吸収していく無縁に立ち向かう術を見つけることが出来ずにいた。


「咲良! 奴は俺が引き付ける。その間に四季彩を元の姿に戻して参れ! なぁに四季彩さえ奴の呪縛から解き放たれれば、あの黒き柱も消える! あの柱はおそらく四季彩を糧に稼働している。その次は段取り通りに奴の封印に入るだけだ! よいなっ」


「わかった!」


 咲良は真っ直ぐに四季彩目掛けて影虎の背中から飛び、それに続くようにまことらも続いた。

 そして力尽きた天子を除く五柱神は影虎の灼熱の闘志に感化され、無理と承知の上であえて無縁の前に立ちはだかったか。



「フン、見るがよい。貴様らが決死の覚悟で地中へと捩じ込んだ柱も、あの黒き柱に呼応するように天に向かって再度上昇を始めておるわ! 諦めろ、神族の端(・)く(・)れ(・)どもよ」


「まだ抜かすかっ! 巌鉄斉が何故、お前の行動を知りながら今まで待ったか。まだわからぬのかっ」


 影虎は意外な言葉を発した。

 それは巌鉄斉が誰にも話したことのない、心の慟哭(どうこく)でだった。


「貴様ならいずれ全てを理解し、事を起こすこともなかろうと思い、見守ってきたのだ!」


「……影虎さんはなんの話をしてるのでしょう?」

「私にはさっぱりだわ……お分かりですか? 天狗さんは」

「ワシが知るはずもなかろう! しかし無縁の邪気が止まったぞ」


 影虎の言葉の節々が無縁の身体を突き破り、五臓六腑(ごぞうろっぷ)に沁み渡るようだった。

 無縁は遠い昔の黄金期を回想するような体でしばらくは黙っていたが、今さら引けない覚悟でことに及んでいるのだと鈍重にも動き出した。


「黙れっ! 小僧が! まとめて始末してやるわ! くらえぃ、闇の咆哮(ほうこう)!」


 即座に守りの体勢を取ったのは白夜と千恵だ。


「飛沫流守(ひまつりゅうじゅ)!」

「銀光壁(ぎんこうへき)!!」


 激しい無縁の攻撃を阻止すべく、そして影虎と天狗を守るように白夜と千恵は技を繰り出し、どす黒い闇の咆哮へと突進していった。


「後は頼みましたよ、影虎さん」

「甘えん坊の妹をお頼み申します」

「ま、待てっ! 白夜! 千恵! これくらい俺が受け止めてやる!」


 2人の特攻を止めようとした影虎を天狗が制止した。


「退(ど)かぬか天狗!」


 その一瞬の間に白夜と千恵は闇の咆哮を相殺した後、力なく落下していった。


「白夜!」

「お千恵さん!」


 姫子と栞菜は真っ青になって落下地点へ急行しようとしたが、これもまた天狗に止められた。


「ならぬ! おぬしらは四季彩の呪縛をとくことが先決! あの二人を信じろ」


 天狗はそう言うと影虎だけに聞こえる声で呟いた。


「今度同じ攻撃が来たらワシが受け止める。その隙をついて影虎殿の渾身の一撃を奴に撃ち込んで下されよ!」


「天狗……お前まで……」

「フッ。寄る年波には敵わぬでな。これからは若い者達の時代じゃ。どうか未来を切り開く光の道標となって下されよ」


 残る五柱神、天狗と暗黒龍となった無縁の攻防は一瞬だった。


 天狗は自身が言った通り身代わりとなって攻撃のチャンスを作り、影虎は持てる力全てを注ぎ込んだ文字通り乾坤一擲(けんこんいってき)、必殺の一撃を無縁に向かって放つのであった。



 一方、咲良を筆頭に再び無縁の傀儡となった四季彩への必死の説得は続いていたが、その呪詛(じゅそ)は固く、閉ざされた四季彩の心の扉は開こうとはしなかった。


 やがて先に力尽きた大地に倒れた天狗と重なるように無縁に敗北を期した影虎が崩れ落ちた。


「くっ……。化け物め…………」


 五柱神、ここに倒れる。

 180度回頭した無縁と四季彩に挟まれる形となった鍛冶ガールは絶体絶命のピンチに陥っていくのであった。


「くっ……。これまでか…………心の奥底まで鬼と化したか、無縁よ……」


 歯を食い縛る巌鉄と気を失った天子を守るように侍(はべ)る軍司は、それでも咲良や茜ならなんとかしてくれると一縷(いちる)の望みを持って見守るのだった。




 次回 終16、とある少女の願いは次元を越えて奇跡を起こす





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