終14、四季彩陥落! 謀略の無縁
咲良と影虎が急行するそのかなり前に、茜・天子・軍司は結界内で待機する四季彩隊と合流していた。
茜は何か病魔に苦しむような素振りをみせる四季彩に駆け寄り、背中を優しく擦ったが、意識があるのかないのか何の応答も示さない。
茜は天子にどうしたらよいか顔で問い掛けた。
天子は珍しく真面目な顔をして四季彩を仔細に調べたが、決して近くまでは寄って来なかった。
「おい! ペガサスさんよぉ、これはどういうこった!? なんで四季彩さんがこんな事になるんだよ!」
その問いに答えるようにムチムチした指が四季彩の腕の辺りを指し示した。
「その腕輪からおっかない妖気が漂ってるぅ! 皆離れて! 四季姉ちゃんは無縁に操られてるの!」
天子のその言葉に一瞬疑問符が頭を過る。
「だ、だって、それは前の話で……克服したんじゃなかったの!?」
「そうだぜ! 今は立派な長尾の将兵になったんだろうがよ!」
「違うっ!」
天子は2人の必死な言葉を一言で両断すると、テレパシーで巌鉄斉と交信し始めた。
(じいちゃん! まずいよ……四季姉ちゃんはまだ本当は無縁に操られてるんだよぉ)
天高くに座を構え、次なる行動に移っていた巌鉄斉は皺くちゃな顔を歪ませてその方面を振り見た。
(な、なんじゃと!?)
(ダメだよぉ。姉ちゃんも頑張って抵抗してるけど、このままじゃ…………)
天子は狼狽え、交信を断った。
「マズイわ……ここへきて四季彩さんを操るってことは何か大きな罠にはめられてるのかもしれない……」
茜はそれでも四季彩を抱くように側にいて、背中を腕を必死に擦った。
「ど、どうすりゃいんだよ!?」
「そんなのわかんないって! 咲良……どうしたらいいのよ…………」
茜は咲良と影虎が柱を沈める儀式を始めたのを確認すると焦りと不安で押し潰されそうだったに違いない。
そして指揮官を失った四季彩隊は総崩れとなり、共に戦う山吉隊もまた押されはじめるのであった。
「フフフ。それ我が傀儡よ、暗黒の柱を建てるのじゃ。五芒星を乗っ取り、六芒星とし、一気にその力を我が手中へと献上せよ!」
その言葉を実行するかのように、そして自分の意志とは裏腹に漆黒の腕輪から無限に放出される悪の闘気をまとい、四季彩はその邪気を送り始めた。
その先には薄っすらと黒い影が立ち昇っていたか。
そして四季彩の容貌もまたいつの間にか夜叉羅刹が如く変貌を遂げていた。
「ダメ! ダメよ! 四季彩さん! あなたは私達の大切な友達でしょ!? 無縁の陰謀に負けないで! 優しい笑顔のあなたに戻って!」
茜の悲痛な呼び掛けに苛立ちを覚えた四季彩はあろうことかその茜に向かって衝撃波のような攻撃を加えた。
「きゃあっ」
茜は数メートル吹き飛ばされ、岩場に激しく衝突しそうな所を間一髪、天子がクッションとなって助けた。
操られているとはいえ想い人を傷付けられた軍司は激昂し、木刀を抜くと四季彩に躍りかかった。
「荒療治が必要なら俺がやってやんよぉ!」
「ダメよっ! 軍司!」
その声を背に猛進しながら古城館の名入りの木刀を振りかぶり四季彩に迫ったその時だ。
弱まってしまった五芒星の結界の隙を付き、ついに黒幕である無縁が遠大な計略と共に浮上してきた。
「さぁ我が僕達よ、時は来た! 神魔転覆の時だ!」
浮上した光さえ飲み込みそうな恐怖の黒龍は地の果てから渦巻くブラックホールのようなものまで発生させ一面を邪悪な色に塗り替えていく。
「くっ、そうはさせるか!」
白龍・巌鉄もまた己の力を振り絞って応戦したが、どういうわけかまったくといっていいほど歯が立たない。
「何故じゃ……まさかあの黒き柱は…………」
「はっはっはっはぁ! 今さら気が付いたか巌鉄よ。貴様も年老いたものだ。貴様が頑張って作り上げてきた星はそっくりそのまま我が頂く。こうも簡単に事が運ぶとはなぁ! ふぁっはっはっはっ」
不気味な笑いは人々を震撼させ、絶望の淵へと落とさんばかりだった。それでも諦めない茜は絶えず四季彩の心に訴え掛けた。己の限界をとっくに越えた力を駆使してまで。
「フフフ、小娘ちょろちょろと目障りな! 始末してくれるわっ」
無縁はそう言うと、世界を飲み込む勢いでその大きな口を開け、暗黒の息吹を茜目掛けて放った。
「いかん! このままでは茜の命が危うい!」
巌鉄斉は全てを投げ出して茜の守りに入った。それは五芒星の力を自身の管轄から手放すことと同様、同時にそれら全ては無縁がものとなるであろう。
黒の衝撃が迸り地平線の向こう側まで真っ黒な闇の大地とかした。
「ぐっぐふぅ……茜、軍司! 大丈夫か…………」
全身傷だらけとなった巌鉄斉はそれでも2人の無事を確認すると笑い、続けて言った。
「天ちゃんもよう協力してくれたな。ワシの力だけでは二人を助けられなんだ……」
天子もまた茜と軍司を助けるために無縁の攻撃から二人を守っていたのだ。
当然ボロボロとなった天子はニコッと笑うと力尽きて倒れ込んだ。
「ちっくしょぉ! 何とかあのバカでけぇ龍を黙らせる方法はねぇのかよ!」
吠える軍司に静かに巌鉄斉が囁く。
「あれを見よ。奴の真下にあるものを……あれこそ溜め込んだ力の全てを魔に委ねた証」
「ま、まるでブラックホールのようだわ……」
「ブラックホールつったら何でも飲みこんじまうあれかよ!?」
「えぇ……前に何かの本で読んだわ。あれはまさに事象の地平線よ。あの一線を越えたら全ては飲み込まれるだけよ……。光さえも…………」
「じ、じいさん! なんとかならねぇのかよ!?」
「フフ……ワシも耄碌しとったようだな。ぬかったわい……」
その言葉は諦めているかのように軍司の目には映った。
異変を感じたまこと、栞菜、姫子もまたパートナーと共に駆けつけ始めていたが、いち早く辿り着いたのは咲良と影虎であった。
「ど、とうなってんのこれぇ!?」
咲良の素頓狂な声に誰も答える者もなく、虚しく響くばかりであった。
次回 終15、特攻! 五柱神、潰滅




