第三章 15、妙案! すーさんは妄想する
萬屋すーさんは姫子を見ると水色の小袖に見え隠れする豊満な胸にズームし、ドキドキしつつも目移りし栞菜を見た。
栞菜の華奢な体型を見ると何故か胸が高鳴る気がした。
お次はとばかりに茜に目を向けると、ピチッとした作務衣姿から見事なまでのボディラインに見とれて身をよじらせた。
いよいよとばかりに巨峰に向かう登山者のような真剣な眼差しでゴクリとまことを見詰めた。
遠目でもはっきりと分かるほどの瑞々しい肌と、見事なまでの谷間を本気と書いてマジと読むような顔つきで食い入った。
そしてこれで最後かと残念な気持ちと妙な達成感が入り交じった複雑な思いと共に咲良に視線を運ぶ。
咲き乱れる一輪の花のような笑顔と健やかな体型はただそれだけで幸福感を与えてくれる。
ガールズ内きっての美尻のラインを見るとムズムズしてしまうのは何故なのかと自問自答したものだ。
と、以上の事を誰にも気付かれない程度に妄想してのけたすーさんは、脳内とは裏腹に真面目な顔つきで話し始めたが、突然鼻血が出たことにより、ティッシュを詰める作業を追加した。
「あの三条市内に放送が流れるやつあるじゃないっすか? あれ使えないっすかね?」
「あぁ、あの熱中症対策とか選挙とか呼び掛けるやつですよね?」
「そう、それ! 栞菜ちゃん!」
(変態にちゃん付けされたわ…………)
栞菜は寒々と鳥肌がたった両の二の腕を何度も擦った。
「今回も緊急事態宣言で避難勧告が出た時も放送流れましたよね? あれ使えないっすか?」
すーさんは何かの力が発動したかのように猛進していく。
「あれのぉ。じゃが最近は一切流れておらんし、もしかしたらこの地震で壊れたのかもしれんぞい」
「なら現状がどうなのか調査して使う許可を取りたいのですが? 権爺さん」
すーさんはずずいと権爺ににじり寄るとそう訴えた。
「でたネオすーさん…………」
柊一が呟いたのをまことは聞き逃さなかった。
「えっ?」
「いやぁ俺も色々とすーさんと行動を共にしていてね、時々トランスしたかのようなすーさんを何度も見てきたんだよ。それで付けたのがネオすーさんってわけ」
(ネオ栞奈の男版!?)
まことは兄である柊一からネオが付く2人目の逸材を聞きつけ驚愕した。
「どうっすかねぇ? 権爺さん! あなたは前市長でもあるわけだし」
「えっ? 権爺さんって市長だったのぉ!?」
「あんたほんと馬鹿ねぇ。そんなことも知らなかったの??」
「そうだぞ咲良! それくらい知ってて当然だぞ」
「そうね。馬鹿よ馬鹿! 十期40年もやってた市長を知らないなんて!」
「でも十期って。そんなにやっていいものなのかしら?」
『…………』
取り残された形となった姫子は、ちょこんと座ったまま、理解し難い内容に目をぱちくりし小首をかしげ、いつもの通りぶりっ子然としていた。
「しかしワシは先代じゃからのぉ」
なおも権爺は難色を示したが、巌鉄斉と村上館長が詰め寄り、お富と白石委員長が無言の笑顔を向け続けたことにより観念したように見回すとこう言った。
「わかったわい! それにしても現市長の居所を探さねばならぬて! おそらくは震源地から距離もあって、今のところ被災を免れておる場所あたりで指揮しとるはずじゃ」
「検討はついているといった口調ですね」
ネオすーさんは止まらない。
「ぐっ、栄町の庁舎か下田村の庁舎か…………そのあたりじゃろうて」
「本当ですね??」
咲良は拳を握ると、
「よし! じゃあ手分けして市長を探そう!」
「見つけたら?」
「放送の許可を!」
「放送の内容は!?」
立ち上がった咲良とすーさんは声高らかに、
『演説!!』
と言ってほくそ笑んでいくのであった。
そんな中、まことは柊一のスマホを使って調べものをしていた。
(次の満月はっと。10月2日! ってことは後……2週間位しかない! 急がないと間に合わないわ!)
ゴゴゴゴゴォォォォ
「この揺れは!」
「フン! 今宵は新月じゃからのぉ。闇の力を持つあやつがもっとも力を発揮する。復活したおぬしらの力を再度鎮地盤に注入しておいてもらって助かったわい。それに令和でも今後に備えて鍛冶ガールの力を鎮地盤に注入しておいてもらわねばな」
「重ね重ねそういうことは事前に言っておいてもらいたいものですね……」
「まったくですわ」
「か、からだがおもいよぉ」
「このくそエロじぃ……だが何故影虎殿だけはすぐに動けるのじゃ」
「ホッホッホッ。影虎は八龍神じゃからの。お前逹は彼女逹が戻るまで、ゆっくりそこで養生しておれい!」
言葉たらずの初代厳鉄斉に指示されるがままに各々の鎮地盤へと新たに力を注入したことにより、再度布団の上に寝かされていた神々の愚痴は止まらなかったが、黒龍・無縁の嫌がらせはなんとか止めることができたのであった。
同時刻、令和でもこの大きな揺れは確認でき、おさまった頃合いで出発していく。
「じゃあ姫ちゃんは権爺さんと下田へ! まことは館長と一緒に栄ってことで!」
「私も念のため姫ちゃんに着いていくわ!」
と、茜。
「でしたら、わたくしはまことさんと館長さんに着いていきましょう!」
と、白石委員長。
「オーケー! んじゃそういうことで! あたしと栞菜と軍司で放送が使えるのか確認しに市役所に行ってみよう!」
「ならあたしも着いて行きましょうね」
お富は柔く言った。
姫子隊とまこと隊はそれぞれ能力を使い下田と栄に向けて出発していった。
『行きますよ!』
「うひょー! この歳になって空を飛べるとはのぉぉ! 長生きはするもんじゃー!」
(それに年頃の娘のボデーをこんな近くで見れるなんてラッキー!)
「権爺さん、暴れないでー!」
「ま、まことぉ! ワシだけ落とさんでくれよぉ!」
「館長さん、わたくしの手を握って下さいまし!」
(おぉ! ラッキー!!)
エロ爺はここにもいたりといった具合か。
そして咲良、栞菜、軍司、それに引率者としてお富が同道し市役所に向かい、巌鉄斉は新たに記された秘伝乃書に目を落とした。
そして、すーさんはというと。
「ついに全員招集の時がきたな……」
そう言うと端末を取り出し、グループ『萬屋』ページを開き一言入力した。
集われたし!
すーさんと行動を共にするつもりの柊一は怪訝そうな顔をしながらすーさんが動き出すのを待った。
今宵、コーヒー屋にて待つ!
いつの間にか日が陰り、カァーカァーとカラスの鳴き声がこだまし、一日の終わりを知らせゆくのであった。
次回 16、萬屋すーさんの憂鬱




