第三章 14、すーさんはにんまりする
「よう戻った!」
巌鉄斉は鍛冶ガールの面々を一人ひとりじっくりと見渡すとそう言ってしばらく無言だった。
この半月足らずの間に現代の三条も度重なる地震に蝕まれ、今や見る影もない姿へと変わりつつあった。
しかしこの選ばれし巫女逹を前にすると自然と勇気が沸き起こり、心強い存在なのだと改めてそう感じずにはいられなかった。
何故ならば彼女逹は旅立ちの時とは比べ物にならないくらいの成長を遂げていたからだ。
それは一目みれば分かるほどに、それぞれの相貌はメラメラと闘志に燃え、ただならぬ力をヒシヒシと感じたからに他ならない。
「お富さん!」
「ほんとだ! お富さーん!」
「あらまぁ少し見ない間に大人になったんと違う??」
「まぁね! エヘヘ」
「色っぽくなったのぉ」
「あれれ? 館長さんまで!」
「この人が鍛冶道場の館長かよ?」
「ええそうよ!」
「お前さんは誰じゃ?」
「えっ? あっ俺は彼女達のボデーガードっす!」
「お久しぶりですわ、お二人とも」
「あっ白石委員長まで! お久しぶりです」
「ほんとだぁ! 委員長も元気でしたぁ!?」
「無事で何よりじゃった、まこと、栞菜!」
「はい! なんとか戻ってこれました!」
「それより見て下さいよ権爺さん! このお揃いの作務衣! 私とお千恵さんの力作なんですよ!」
「姫子ちゃんも随分と落ち着いた感じになったんじゃない? ねぇすーさん!」
「ですねぇ。小柄で隠れ巨乳だとはわからんかったわぁ」
「エヘヘ。柊一さん、そうですか? すーさん……変態!」
一頻り再会の喜びは続いたが、じっと孫であるまことを見詰めていた巌鉄斉はその場を仕切り直す咳払いを一度エホンと出し、舞い戻った鍛冶ガールらにこれまでの経緯を訪ね、鍛冶ガールの面々は入れ替わり立ち代わりに天文での冒険譚を語り聞かせた。
長尾影虎との出会いから、雨生ヶ池に棲む巨大な大蛇と遭遇したこと。
その道中で叛乱党という謎の組織から強襲されたこと。
その後、個々にパートナーである神々との出会いがあり、自身の秘めたる力を得たことなどを細部に渡って語った。
そして最後に初代・巌鉄斉が神々の中心たる神龍族、その要に座する八龍神として黒幕である黒龍・無縁の野望を阻止せんが為に自分達を召喚したのだと告げた。
「なんとも壮大な話じゃ……」
権爺はそう言って神の子孫であった巌鉄斉を見た。
巌鉄斉は深く沈思したが、たった今の三条の有り様を見てきて合点がいった風な口調で口を開く。
「なるほどのぉ。そなたらも空から只今の三条の現状を見たであろう? 当初の天文を救う目標は大きく変わった! そなたらの力次第でこの現代も左右されることとなった。ワシの感ではこのままでは三条はおろか、日本それに世界を揺るがす大異変へと変わる気がする。ワシらもなお一層協力する。是非ともこの難敵を撃ち破ってもらいたい!」
そう言って深々と頭を下げた。
「もちろんだよ! この世界を救う為に!」
腰を捻ってガッツポーズと同時にお尻を揺らした咲良は早速秘伝乃書に記された事柄を遂行していこうと言い放った。
「ウム。初代様からの伝言では、無縁とやらの封印を開始する際に現代でも力を合わせよと書いてある。光る柱、鎮地盤に住民の力を集めよ! とな」
「よし、じゃあ集めよう!」
楽観的な咲良を制止するように権爺が重々しく口を開く。
「じゃがのぉ……巨大な揺れが今もなお続いていることにより政府から緊急事態宣言が出されてしもうた。それを受けて被災を免れようと多くの市民が市外へ避難したんじゃ…………今現在どれだけの人々が三条に残っておるやら」
「そうですね。あたしも商売どころじゃなかった時に権爺さんに誘われて咲良ちゃん逹の手伝いを引き受けたんよ」
「わたくしもよ! こんな現状じゃマルシェどころではないですから。早く解決し、また元気な笑顔を作るマルシェがしたくって参加したのですわよ」
お富と白石委員長がまこと宅にいる理由を知り、たった今の三条の有り様を聞かされた鍛冶ガールらはどうしたものかと勢いを止めてしまった。
「初代様の話しぶりだと、その無縁という龍神は物凄い力を蓄えてるって話だったわ。だからこそ令和の人達の力も必須だって……」
「そうです! 天文と令和、二つの時代が重なりあって立ち向かわないと無理だと白夜様も言っていました……」
まことと姫子の言葉にさしもの栞菜も腕組みして考え込み、茜と軍司は顔を見合って困り顔をした。
そんな中、じっと聞いていた萬屋すーさんが口を挟んだ。
「人がいないんだったら集めましょう!」
思い付きのように軽く言うすーさんを一同は睨むように見た。
「あ、いやだって! いなければ集めるしかないじゃないっすか!」
「それができればとっくにやってますって」
怒り気味の柊一はそう言うと深々と嘆息した。
「じゃがそれしかあるまい? のぉ権! 巌鉄!」
『ウム』
館長の言葉に悪友の2人は同時に頷いた。
「問題はどうやって散り散りになった市民を集めるか……じゃが…………」
「あのぉ、そこんところで俺に案があるんすわ」
妙に自信に満ちた顔をしたすーさんはぐるりと見渡した後、にんまりと笑って、見惚れるほどの美少女逹をなおも順々に見ていくのであった。
鍛冶ガールの面々はきっとこう思ったであろう。
「この人、キモイ」
と。
次回 15、妙案! すーさんは妄想する




