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 第三章 13、轟音の中、聞こえた希望の言葉!

巌鉄斉は秘伝乃書(ひでんのしょ)を閉じると深く溜め息をついた。


というのも、鍛冶ガールの5人と軍司が天文へと旅立った翌日から予期せぬ地震が多発し、これまでの()()()()()という命題が大きく覆ったからに他ならない。


「どうやら天文、初代様は万事整えたようだ」


(そしてどうやら現代の我々も傍観している場合ではないようだ)


そう十戒した老爺は、庭に出て趣味のメダカを愛でるように観察してから、新たに設けた急拵えの半透明の容器に視線を移すと、その目を顕微鏡のようにズームし、水中をまじましと見た。



老爺の愛育も手伝ってかメダカはホテイソウを足掛かりに盛大に繁殖し、今や備え付けの鉢では過密だということで幾つもの容器を設置し、擂鉢で砕いた専用の餌を、繁殖と発育に合わせて巻くのが日課になっていた。


そんな半透明な稚魚群を思う存分愛でた老爺は、室内を見渡した。

彼女らが旅立った後も権爺(ごんじい)を中心に()()()()()()()を募っていた。


そして今、令和の指令室と化した巌鉄斉の私室には、権爺、柊一、萬屋すーさん、村上館長、お富と白石委員長らが集結し、遠い天文時代へと旅立った鍛冶ガールの再来を待ちわびていた。



秘伝之書に新たに記された文を読んだ令和の巌鉄斉は焦りを感じていた。

その内容、初代から記された特命にはどれも鍛冶ガールらが必要不可欠である事柄ばかりであるにも関わらず、当の本人逹が一向に姿を現さなかったからだ。


今朝も秘伝乃書をめくると初代からの催促とも苛立ちともとれる文面が届いていた。

お富が淹れてくれた番茶を()すと、またぞろ深い溜め息を吐いた。


そんな巌鉄斉の苦悩を(おもんばか)ってか、白石委員長がテレビをつけ、連日の報道に終始しているところへ、リポーターの空を飛ぶ少女逹という極上の(いん)が声が耳に入ってきた。


ガタガタっと一斉に一同はテレビに釘付けとなり、待ちわびた鍛冶ガールの無事な姿を観て一段落した。



「ほっほっほっ。元気そうでよかったよかった!」

「それにしても空を飛んで帰ってくるなんて」

「予想外の展開ですねぇ」


権爺、柊一、何故かワクワクし始めたすーさんは順繰りに言葉を交わすとまたも画面に注視していく。


「あらまぁなんだか少し見ない間に急に大人びたわねぇ? 咲良ちゃんも茜ちゃんも」

「そうですわね! ボランティアの時とは違って(たくま)しくなったというか!」


と、呑気なお富と白石委員長はにこやかに会話した。


「なにはともあれ。じゃ。早速に鍛冶ガールを迎えに行かんとのぉ!」

「そうじゃの。あれでは鍛冶道場のマスコットガールズが見世物じゃわ!」


権爺と村上館長が話し合い、迎える準備を進めた。




当の鍛冶ガール一行は黒門から令和に戻ると不穏な気配を敏感に感じ、三条を見渡そうということで空の人になっていたのだ。


「なにこれー!? ほとんどの橋が壊れてるぅ!」

「それに家も崩れたりしてるわよ!」

「ま、まさかこっちでも地震が起きてたってことかよ!?」

「どうやらそのようね! これは大変なことになったわ…………」

「あっ! 歴史資料館は無事だわ!」

「とりあえずは十八代目・巌鉄斉様の所へ行ってみましょうよ!」


姫子の一言で一行は、まことの自宅でもある巌鉄斉の元へと急行することとした。

まことは栞菜と共に風の人となり、咲良、茜、軍司は姫子の操る水の絨毯(じゅうたん)に乗り、小波(さざなみ)となって急行。

その途中で例のテレビ番組の取材ヘリコプターを見付けたというわけだ。



「ちょっと待って! あそこのヘリコプター! あれカメラじゃない?!」

「はぁ~!? それがどうしたってんだよ?」

「一言いってこうよ!」

「なに言いたいのよ? 咲良」

「だからぁ! 私達が絶対解決するよー! ってな感じでさぁ!」


「咲良、あんたって…………」

「けどそれで安心する人もいるかもしれないわよね」

「姫子も賛成です!」

「んじゃあヘリコプターに近付いてからのーまことん家ってことで! GO!!」



「にっ新田さぁん! 空飛ぶ少女逹がこちらへ向かって来まぁす!」

「なんですってぇ!? 今井日(いまいにち)さん! で、出来たら一言貰えるとありがたいですよぉ!!」

「わ、わかりました! が、頑張ってみます! おーい! へーい! おーい!!」


と、機内で大手を振ってリポーター・今井日は咲良逹に自身の存在をアピールした。目がいい姫子はすぐにそれに気付くと慎重に距離を縮めつつ、咲良を促した。


轟音をあげるプロペラは全ての音を書き消すかのように1秒間に何百という回転を続けていたが、咲良の言葉はしっかりと今井日が向けたマイクに拾われていた。


「じゃあねぇーーー!」


そんな感じで手を振りつつ、謎の空飛ぶ少女逹は三条の片隅に消えていった。


「とのことです! 新田さん!」

「うーん。不思議も不思議過ぎて…………思考が追いつきませんね」

「彼女逹は天が救済の為に降された天使に違いありませんねぇ!」


「というと? 山口さん!」

「空を飛ぶなんてことを()のまま出来る人間がいますか!? 今観ましたよねぇ? 実際になにも使わずに飛んでいる姿を! それにあの言葉!」


「確かに! 水色の茣蓙(ござ)に乗っておった! あれはこの世の物ではなかったし、ハッキリと聞こえました!」

「ですよねぇ井戸田教授!」


「それに服装もまるで昔の格好のようだった! 現代にあんな格好はあまり見ません。そして希望を貰った気分ですね」

「ですよねぇ瓦田先生!!」


「はっきりと聞こえましたね」


『三条を、日本を、そして世界を救う』


と、3人の有識者はこぞって咲良の言葉をなぞった。



「しっかし世界とはまた、大きく出たもんだなぁ、咲良!」

「なんでよ!? 実際そうでしょうよ?」

「うっ、ま、まぁな……」

「よぉぅわっ! チャンバラくんよわっ!!」


「ぐっ、カンナム先輩、相変わらずムカツクぜぇ」

「はいはい、馬鹿言ってないで入った入った!」


凱旋した一行はまことに促されぞろぞろと、指令室たるまことの自宅は厳鉄斉部屋に入って行くのであった。



『ただいま!三条!!』



次回 14、すーさんはにんまりする


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