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小説の書き方を勉強していくエッセイ  作者: Yuji
2.基本プロットを学ぶ。
4/12

Act 2~異世界の冒険、まやかしの成功~

基本プロットを学ぶ。その三。


前回の内容!

基本のプロットは三段構成!

『日常が壊れる!主人公はちょっと不安になる!』

それがAct 1!

 今回はAct 2を扱います!



『なんとか頑張って事件を切り抜けるけれど、そうして得た成功はまやかしだったことが判明する』



 それがAct 2です。手元のハウツー本によれば、小説の中で一番長いのはこの部分。小説全体の60%の文量だそうです。


 グレンラガンだとですね(ネタバレ)、


 地上で冒険して、ロージェノム倒して、そして真の敵・アンチスパイラルが登場するまで。第三話から十九話。途中の総集編を入れて十六話分。


 16/27話。約60%!ぴったりですね。


 先述の『十五のプロット・ポイント』のうち、七つがこのパートにあるそうです。ポイント①から⑤はAct 1だったので、⑥からです。



 ◇◇◇◇



 ⑥Act 2世界への導入(Break into 2)


 Act 1で主人公の日常生活は壊れたのでした。これからは新しい世界を生きねばなりません。


 その過程はジャンルや作家様のアイデアによってさまざま。



 魔女の修行のために新しい街に住み始める。

 空から女の子が降ってきて軍と空賊に絡まれる。

 実家の工場にブタが依頼人として現れる。

 トンネルを抜けたら神の国だった。



 などなど。


 ここで変わったのは外の環境だけでなく、主人公の内面かもしれません。


 だいじなのは『④事件発生』の前と後では主人公の世界が異なっているということ。


『世界』が『異なる』。


 異世界ですね!


 いわゆる異世界モノに限らず、Act 2の世界は『主人公にとっての異世界』と言えます。


 主人公はここで新しいことを経験して、人間として成長したりハーレム築いたりするんでしょう!


 Act 1の日常世界とAct 2の異世界。その間のクッション。導入。異世界の説明として『⑥Act 2への導入』があります。




 ⑦隠された真のストーリー(B Story)


 Act 2のメインパートは次の『⑧主人公の奮闘』なのですが、その中で一つ、だいじな点があるんだそうです。


 それは『⑦隠された真のストーリー』が始まる、ということです!


 なんじゃそりゃ!


 タネ本によれば、どうやらこの辺で、作品のテーマに関わる重要な人物と知り合いになるのだそう。




 Act 1の『③日常生活』の中でさりげなく『②テーマの言及』がなされたのを覚えていらっしゃるでしょうか。


 それと似たようなかんじです。


 Act 2のメインパート『⑧主人公の奮闘』の中で、作品テーマに関わる重要人物と知り合いになる。


 それも物語によって様々です。



 パン屋の女将さん、

 絡んでくる眼鏡の少年、

 画家の友人、

 ヤナヤツ、

 ブタ、

 空賊、

 幽霊、

 神様、

 などなど。



 主人公は『彼ら彼女らそれら』と知り合い、そしていずれは『②作品のテーマ』に関連したなにか尊いことを学んでいくんですね。


 でも、それはもっと先のお話。Act 3のことですが!


 このパートではその前フリがなされます。




 ⑧主人公の奮闘(Fun and Games)


 この部分がAct 2のメインパートです。


 Act 2世界で、主人公は頑張ります。自分の『目の前の目標』を叶えるために。



 生きていたい、

 谷に住む人を助けたい、

 腕の呪い(うずき)を解きたい、

 魔女になりたい、

 飛行機を設計したい、

 などなど。



 そんな目標(欲求とも)を持って頑張るのですが、そもそもAct 1の日常世界を生きてきた主人公です。別人になったわけじゃあありません。


 失敗もします。人生トライアンドエラーです。物語のフィナーレに向けていきなり正しい舵を取る、なんてことはありません。


 主人公が試行錯誤を繰り返す過程を、ハウツー本の筆者様は “bouncing ball narrative (p.48)” と名づけています。


 ボールが上に下にバウンドするように、主人が試行錯誤をし、成功したり失敗したりを繰り返すんですね。




 ⑨中間点(Midpoint)


『⑧奮闘』の末。もっと言うと、小説全体の真ん中らへん。


 そこで主人公は物語の『中間点』に着地します。この中間点が一時の成功なのか、失敗して自信喪失した状態なのか、それは作者様次第。


 ひとまずの成功だとすると、それは砂漠の中のオアシス。ダンジョンのセーブ地点。意中のあの人との遊園地デートです。


 でも、その安らぎは一時的なもの。これからもう一山あるんですね。




 ⑩不穏な影(Bad Guys close in)


 主人公が『⑨中間点』にいる間、蔭では別の物語が進行します。


 小説に不穏な空気が流れるのです。


 ここで明らかになる衝撃の事実!


 これまでの頑張り、そして得た成功(もしくは失敗)は、一時的なものに過ぎなかったのです!これまでの物語は第一部!物語にはもう一山ある!第二部がはじまる!



 な、なんだってー!



 なぜ小説はここで終わってはいけないのか。


 言ってしまえば、それはそうじゃないと物語が面白くないからなのですが、ここでだいじなのは、この『不穏な空気』は二種類存在する、ということらしいです。



 一つ目は外界での影。現実の問題です。


 バトルモノなら、『フハハ、あやつは四天王でも最弱よ……』って黒シルエットの誰かが呟いていたり。


 ラブコメなら、意中のあの人との遊園地デートの後、初恋のあの人(別人)が突然街に帰って来て私を壁ドンっ☆どきどきっ☆みたいなやつです。


 そうしてさらなる問題が発生するんですね。




 そして二つ目の影。それは物語のテーマ、多くの場合は主人公の内面に関係します。


 主人公はこれまで、『目の前の目標(欲求)』を叶えるために頑張ってきました。『⑨中間点』で、ひとまずその目標は叶えられたかもしれません。


 でも、まだ手に入れていないものがある。


 これこそ、Act 1『テーマの言及②』でさりげなーく触れられたアレです!物語のテーマ。なにかとても尊いことです。


 この時点では、主人公はまだその大事なことを獲得していません。中間点にいるので。


 それが何なのか、自覚すらしていないかもしれない。もしかしたら、この時点で自覚するかもしれない。もう少し後かもしれない。


 作品のテーマ。それはAct 3で得られる尊い何か。


 真の愛とか友情とか、さわやかな青春とか、天を突く螺旋の力とか。そんな何かです。


 主人公はそれをまだ手に入れていないんですね。


 なので、『物語を終えることができない』のです。




 そしてこの二種類の『不穏な空気』、お互いに交わっていることが望ましいのだそう。なんだか難しいです。




 ⑪そして全て失った(All is lost)


 そんなこんなで、先述の『外界の影』が行動を起こします。物語全体で見ると、二度目の『④事件発生』とも言えます。


 ここでだいじなのはですね。このパート、『主人公が原因となって』始まるのです。


 ラブコメなら、自分の我儘が原因で『意中のあの人』と喧嘩してしまって恋の冷戦状態に。その間、ぶりっ子系ライバルが「相談役になってあげるよー☆」とか言って『あの人』に急接近。いらっ!


 バトルモノなら、自分が敵を倒したことでもっと強い敵が目を覚ましてしまう。


 そんなんです。


 なぜ『主人公が原因でなければならない』のか?


 それは、物語だからです。


 主人公となーんにも関係ないところでいきなり事件が起こったとして、それはいわゆる超展開。


 実際、自分もそんな物語を読むとぽかーんてなります。商業作品でもじっさいあるのですがね。


 とにかく『主人公のせい』で状況は最悪になる。それがこのパートです。




 ⑫絶望と暗闇(Dark Night of the Soul)


 状況は今や最悪。主人公の目の前は真っ暗。絶望、怒り、悲しみ嫉妬といった感情にさいなまれます。


 ちなみにこのシーンでは、よく雨が降っているのだそうです。


 絶望の中、しかしその先には一筋の光(きぼう)が━━




 ◇◇◇◇




 と、ここまでがAct 2。


 長かったですね。話があっちに行ったりこっちに行ったりしました。自分で出した例えもジブリだったりジブリじゃなかったりしてごちゃごちゃでした。


 わざわざ読んでくださった方、分かりにくかったのは分かっていますよ。自分で読み返しても分かりにくいと思います。要は、


『なんとか頑張って事件を切り抜けるけど、そうして得た成功は、実はまやかしだったことが判明する』


 というパートでした。


 そして物語はAct 3に続く!




 ◇◇◇◇




 では、グレンラガンだとどうなのでしょうか!



 地下の村で暮らしていた主人公シモン。彼は突然現れた敵・獣人ガンメンとの戦いに巻き込まれ、地上での冒険を始めるのでした。それがAct 1。アニメ一話と二話。



 続く第三話では、地上の生活が描かれます。


 食料の調達シーンがあったり、敵の目的は人類の掃討にあることが明らかになったり。


 宿敵ヴィラルも登場しますね。戦いの中、シモンが発掘したロボット・ラガンとアニキが敵から奪ったロボット・グレンが合体。グレンラガンとして敵を一時撃退します。


 これが『⑥Act2への導入』ですね。




 そうして敵の本拠地を目指して『⑧主人公の奮闘』が始まります。


 小心者なりに、でも生きる為に、少しずつ強くなっていくシモン。敵を撃退して、人間の仲間も集まってきます。


 でも、成功続きじゃあありません。主人公は失敗も経験しなければならない。しなければならないのです。それがbouncing ball narrative。


 シモン最大の失敗は……ダイガンザン戦の……アニキのアレですね……くすん。




 この辺で、いずれ物語のフィナーレにも繋がる『⑦真のストーリー』に関わる人物も登場します。


 キタンら大グレン団の面々、宿敵ヴィラルももちろん大事です。


 でも一番は、やはりヒロイン・ニア。ニアは敵であるはずの獣人側の元お姫様。偶然シモンと知り合いになります。


 敵の元お姫様ニア、そして人間側の一応リーダーシモン。


 おーなんというロミオとジュリエット。二人の結末もね……


 ニアのお蔭もあり、『アニキロス』から立ち直ったシモン。敵四天王を退け、獣人の王、ロージェノムも撃破。




 そうして世界は平和になります。ここがグレンラガンの第二部の始まり。この解説でいう『⑨中間点』です。


 ロージェノムとの戦いから七年。

 科学の発展した世界。

 お日様の下で、笑いながら暮らせる世界。

 ロボでドンパチすることのない世界。

 シモンはニアにプロポーズします。ひゅーひゅー。



 でも、物語はまだ終わりません。ロージェノムが残した言葉が『⑩不穏な影』となって忍び寄ります。


 敵はまだ他にいる!


 そして忘れてはならない『②作品テーマ』。

「お前のドリルは、天を突くドリルなんだよ!」

 というアニメ第一話のアニキの台詞です。


 そう!


螺旋の力(ドリル)で天を突かないと、グレンラガンは終わらない』のです。そのことが一話の時点で述べられているのです。


 シモンは、この時点ではまだ天を突いていない。天が何か、螺旋の力(ドリル)とは何かまだわかっていないのです。だからグレンラガンはまだ終わらないのです。



 そんなこんなで、人類の真の敵が現れます。彼らの名はアンチスパイラル。その目的は人類の殲滅。


 第一部のボス・ロージェノムは『人類を地下に追いやる』ことで、実は人類をアンチスパイラルから守っていたのです。


 そのロージェノムは、第一部でシモンが撃破しました。そうして地上の人類は増え、アンチスパイラルが目覚めてしまったのです。


 つまりはシモンの頑張りのせい!皮肉!


 街で暴れるアンチスパイラルの撃退に向かったシモン。その戦闘で街は破壊されてしまいます。


 そしてヒロイン・ニアの身体に埋め込まれたアンチスパイラルの自我が覚醒。ニアは実はアンチスパイラルのメッセンジャーだったのです。


 シモンとニアはどこまでもロミオとジュリエットです。


 シモンはニアを失い、ドリルも地位も失い、


『超弩級戦犯により死刑』


 ガイナ演出!落ち込み!


 このパートが『⑪そして全て失った』ですね。そしてシモンは『⑫絶望と暗闇』の中!




 ◇◇◇◇




 と、ここまでが今回の内容でした。長かった……


 つまりはAct 1で日常が壊れ、Act 2であくせくしたのでした。言ってしまえばそれだけです。


 残るはフィナーレAct 3。


『まやかしの成功、そして陥った絶望から立ち直った主人公は、仲間や道具を集め、知恵を駆使して事件の元凶を解決する』


 です!

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― 新着の感想 ―
[一言] こうして改めて振り返ると、やっぱグレンラガンは面白いですね!! 特にアンチスパイラルが出てきた辺りの展開が秀逸だと思います。 ラスボスを倒して平和になったかと思いきや、真のラスボスが後ろに控…
[良い点] >そしてこの二種類の『不穏な空気』、お互いに交わっていることが望ましいのだそう。なんだか難しいです。 なるほどなあ、とおもいました これがあったらしっかりとしたプロットになるだろうなあ …
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