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天道虫の国

懐かしい生き生きとした森が眼下に広がっています。

あそこは前に一度訪れたアリの国も属する、昆虫調和連邦領土です。


ぽん「お久だね」


ぼん「あなたさんはアリの国で何をしたの?」


ぽん「アリさんの引っ越しを手伝ったよ」


引っ越しというより強奪ですね。


ぼん「ええ……あなたさん……」どんびきー


ぽん「引っ越しだよ」真顔


あれから彼らアリさんは深く反省し、よその家を強奪することはなくなりました。

現在は高層蟻塚で快適に暮らしています。


ぽん「いいなー」


それがー!壊れましたー!ひどすぎるー!


ぼん「うわー!」ひゅー


ぽん「くちゅん!」


蝶「あ!ぽんちゃん!」ひらひら


あの日、鳥にさらわれた蝶々さんです。


ぽん「無事だったんだ」


蝶「鳥さんの唄と私の躍りで、この国は鳥虫調栄連邦領土になったのよ」ひらりん!


ぽん「とりむしちょうえ……難しくてよく分からない」


鳥さんも虫さんも仲良く暮らすところになりました。


ぽん「良かったね」


蝶「ええ!これが生きてこそ繋がる物語よ!さあ、踊り語りましょう!」ひらひら!


ヨワムシ「いつか食べられるよ」


ぽん「ぷちきしょ」


ヨワムシ「ひどいよー!」うわーん!


謝りなさい。


ぽん「ごめんなさい」ぺこり


蝶「ヨワムシはね、とっても心が弱いの」


ヨワムシ「最近ね。ここ、天道虫の国で噂されているんだ。もうじき平和な時間は終わるって」ぐすっ


ぽん「てんとうむしの国」


あらゆる導きを示す、てんとう虫さんの暮らす国です。

彼らには未来を感じとる能力があるようです。


ぽん「ふーん」


ぼん「ぽんちゃん!大変!」たたっ


ぽん「どこ行ってたの?」


ぼん「鳥にさらわれてた」


ぽん「気づかなかった」


ぽんちゃんが、くしゃみした時です。


蝶「そんな……鳥さんが……」


ヨワムシ「やっぱりーうわはあーん!」号泣


ぼん「でもあれは普通の鳥じゃなかった。逃げるときに一瞬見たんだけど」


ぽん「どんなだった」


ぼん「ガーゴイルぽかった」


ぽん「それって……悪魔?」くびかしげ


ぼん「だからまさかだよ。空想の国でもメルヘンにしか登場しないからね」


てんとう虫「あれは妄想より生まれしものなの」ぶーん


ヨワムシ「てんとう虫さあん!」とびつき!


てんとう虫「そしてあれを生み出したものは、あれ自身なの」


ぽん「どうゆうこと?」


ぼん「もしかして妄想にとりつかれ……とりつかれ……とり……鳥!そういうことか!」なるほど!


納得できません。


てんとう虫「今、あなた達の運命が大きく変わろうとしているの」


ぽん「急に何?」


てんとう虫「空想と妄想の茶番劇が幕を開けようとして」


アリ「セモンジンガサハムシがやられたー!」たたっ!


ぼん「ぽんちゃんの大好きなあのセモンジンガサハムシさんが!?許せん!」たたっ!


ぽん「お姉ちゃん!」


てんとう虫「幕は開かれたの」ぶーん


ぽん「もう!わけわかめこんぶのり!」


蝶「逃げましょう、ぽんちゃん」


蝶々さん、ガーゴイルに捕らえられる。


ぽん「うわっ!想像と全然違う!」


まるで黒いゴミ袋のようです。


ぴょん「想像力が足りなかったようだな」


ぽん「誰?」


ぴょん「オレは、ぴょんぴょん・ネーデルミント」


ぽん「黒い空想科学服……?」


ぴょん「これはチョコ姉から貰った、空想特撮で有名な、風の戦士に憧れた空想科学服だ」


ぽん「おへそ見えてるよ」


ぴょん「これは、ベルトをつける予定だったんだ」


ぽん「そう」


ウサギの耳のように立つ二本の長いツインテール、そして深紅の丸いサングラスとマフラーが特徴的な女の子。

彼女は、ぽんちゃんとガーゴイルの間に勇ましく進み出ました。


ぴょん「下がっていろ。ここはオレが引き受けた」


ぽん「かっこいなー!」きらきら


ガーゴイル「幼い子は、はやくお家に帰ってテレビでも見てはしゃいでご飯食べてお風呂入って歯を磨いてグッスリと眠っちまいな!」


ゴミ袋ガーゴイルは子供相手に優しい言葉を言い放ちました。


ぴょん「何が目的かは知らないが、オレは命を大切にしない者には容赦せん」ざっ


ガーゴイル「お?お?やる気?引き立て役くらいにはなってくれよな?」


ぽん「この木の実、ぷちうま」かりかり


アリ「懐かしい客人相手にアリ合わせで申し訳ないね」


蝶「花の蜜を持ってきたよ」ひらひら


ガーゴイル「あ!いつの間に!」


ぽん「がんばれぴょんちゃーん!」


ぴょん「ぴょんちゃん……」


まるでヒーローショーを見ているようですが。

これはガチですよ。マジなんですよ。


ぴょん「ぴょんぴょんちょっぷ!」しゅばっ!


ガーゴイル「あ、ずるい!」


ぽん「はやっ!見えなかった!」びっくり


爽やかな戦いっぷりでした。

ゴミ袋という妄想は浄化され、ゲップのように空に消えました。


ぴょん「ナナフシさん?」


ナナフシ「目立ちたかったのにぃ!ええい、あばよ!」ぶーん!


ナナフシ逃げる。


ぽん「ナナフシさんだったんだ」ごくごく


ぴょん「今のゴミ袋は狂妄化した妄獣。悪の国を支配した皇帝ペンギンが、ナナフシさんに妄想を植え付けたんだ」


ぽん「ほーん」


ぽんちゃん無関心の興味なし。


ぴょん「まあいい。それよりも」


ぽん「サングラス取ったら」ひょい


ぴょん「あ!」ふい!


ぽん「どうしたの?目が小さいの?そういうの気にするタイプだったの?」


ぴょん「…………」ふい


どうやら、サングラスをセットアップしないと、人と素直にお喋りできないようです。


ぽん「人見知りさんなんだね」すちゃ


意地悪しないで返しなさい。


ぽん「はーい」


ぴょん「チョコ姉は?」セタップ


ぽん「もしかして、僕のお姉ちゃんのこと言ってるの」


ぴょん「そういう君は?」


ぽん「がおっしゅ!僕は、ぽんぽん・チョコラティエ!ぽんちゃん、て呼んでね」


ぴょん「じゃあ、やっぱりチョコ姉は君のお姉さんで間違いない。それでどこに?」


ぽん「知らない。どっか行った」


ぴょん「そうか……」


ぽん「そんなに会いたいの?」


ぴょん「悪の国のバリ改造自転車があった。だから心配で」


ぽん「ふーん」


ぴょん「一大事だぞ」


ぽん「お姉ちゃんなら大丈夫だよ」


ぽんちゃん、お姉ちゃんからメッセージです。


ぽん「なに?」


ぼん「聞こえる?」


ぽん「うん。ナレーションさん便利だね」


ぼん「僕は今、自転車のカゴに詰め込まれて連れていかれてます」


ぽん「あれまあ」


ぴょん「そんな!遅かった!」


ぼん「その懐かしい声……ぴょんちゃん!」


ぴょん「チョコ姉、もしかして今」


ぼん「うん。悪の国に向かってる」


ぴょん「すぐに助ける!」


ぽん「いやいや逃げたらいいじゃない」


ぼん「僕は逃げないし、このまま悪の国に向かうよ」


ぽん「え!なんで!」


ぼん「まだその理由は話せない。ただ、最後にこれだけ言っておくよ」


ぽん「なに?」


ぼん「ぽんちゃんもぴょんちゃんも、自分らしく、まずは目の前にある試練を一つずつ乗り越えなさい。いま自分に出来ることを、しっかり成し遂げなさい」


ぽん「わけわかんないよ!」


ぴょん「できること……」


ぼん「詳しくはぴょんちゃんに聞いて。それが終わったら、必ずまた会いましょう。ということで、僕はこれから自転車をこぐのに忙しいのでさようなら」


ぽん「ええ……」


ぼん「また連絡するね!じゃ、仲良くお元気で!」


お姉ちゃんはカゴに詰め込まれたことでヒップをひどく痛めたようです。

それで、自ら自転車をこぐことを決めたのです。


ぽん「大事なとこはそこじゃないでしょう!ぴょんちゃん説明して!」


ぴょん「悪の国の皇帝ペンギンは、強い妄想を世界に送った。それから妄獣が生まれた。オレの目的は、その数を減らして皇帝ペンギンを弱らせ、やっつけることだ」


ぽん「僕は、それを手伝えばいいんだね」


てんとう虫「そういうことなの」ぶーん


ぽん「あ、さっき一番に逃げたてんとう虫さん」


てんとう虫「これは世界の存続を少々かけた運命になりますの」


ぽん「こういうの、虫の知らせって言うんだよね」


そうですね。


ぽん「いいよ。ちゃっと片付けちゃお」


ぴょん「君は何もしなくていい」


ぽん「どうして?」


ぴょん「戦うのはオレだけでいい。君には戦ってほしくない」


ぽん「僕はこう見えて強いんだから!空想科学光線とか色々」


ぴょん「人間の武器は言葉だけでいい」


ぽん「武器じゃないんだけど」


そうだったんですか。

わー驚いた。


ぴょん「とりあえず。アヒルボートに乗せてくれ」


ぽん「いいけど、あれは改造したスワンボートフィナレティだよ」


ぴょん「見た目が変わってたのは改造したからだったのか」


ぽん「うん」


ぴょん「フォアグライドPWCは乗せられるかな」


ぽん「は?」


ピーダブリューシーは、パーソナルウォータークラフトの省略記号ですね。

それも、ぼんちゃんから貰ったものですか?


ぴょん「そう。ただ、ついに壊れてしまって」


ぽん「そんな簡単に壊れないと思うけど何したの?」


ぴょん「ネジの国でネジを抜かれて、自分で何とかしてみたんだけど駄目だったみたいだ」


ぽん「あーそう……」じとー


アリ「その乗り物運んできたよ」よいせ


ぴょん「ありがとう」


アリ「アリが九匹でありがきゅーだろ!」おこ!


ぴょん「ごめん。ありがきゅー」


アリ「いいよ。この森の平和と彼女を助けてくれたお礼さ」


ヨワムシ「恋の引っ越ししちゃった……」もじもじ


ぽん「きしょ」真顔


ヨワムシ「うわあああん!」がささっ!


アリ「ヨワムシー!」たたっ!


ぴょん「かわいそうに……」


ぽん「この乗り物カモさんなんだ。小さくて可愛いけど、中に入れないね」


ぴょん「緊急用の乗り物だと言っていた」


ぽん「なるほど」


スワンボート「ぱく」


ぴょん「!?」


ぽん「さ!いくよ!」


ぴょん「フォアグライドはどうなった?」


きちんと収納されました。


ぽん「れりーごー!」


次はどの国へ。

明日はどっちだ。


吹き飛んだてんとう虫さん達にもそれは分からない。

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