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不可思議の国

ぽん「こんこん!」ぷるぷる


ぽんちゃんは風邪をひいてしまいました。

それも、人の空想に感染する恐ろしいカゼコンコンです。


ぼん「ほら、鏡を見てごらん」はい

 

ぽん「キツネさんになってる……」ふぇぇ


ぼん「薬を飲んで治そうね」


ぽん「やだ」くびふりふり


ぽんちゃんは、咳と熱と頭痛と悪寒により、今にも泣きそう目で切実に訴えかけます。


ぼん「そのうち、ヒゲだけじゃなくシッポまで生えるかもよ」


ぽん「やだよぅ……」ぷるぷる


カゼコンコンは自然治癒だと完治までおよそ二ヶ月かかります。

しかし、一般的な風邪薬で構わないのでそれを服用すれば、たった二日で治ります。


ぽん「苦いからやだ……」ぷるぷる


ぼん「じゃあ、粉じゃなくてカプセルで頑張ろう」


ぽん「あむ」ぷるぷる


ぼん「ゼリーなら、ごっくんできるよね」


ぽん「ん……んく」ぷるぷる


ぼん「よし!」


お薬じょうずに飲。


ぽん「ぷっ!」ぷるぷる


ぼん「いたっ!」


飲めませんでした。


ぼん「まあ、あなたさんってば!」ぷんぷん!


ぽん「だって……」ぷるぷる


ぼん「とりあえず、用意していたカゼコン用の空想毛皮服持ってきますから、それに着替えてね」よっこいせ


ぽん「どうしてこうなったの……」ぷるぷる


昨晩、咳をする度にキツネになっていきましたよ。


ぽん「えすえふほらーだよぅ……」ぷるぷる


ぼん「はい着替えて」よいせ


ぽん「これ」ぷるぷる


ぼん「いいから」せっせ


ぽん「ん……」ぬぎぬぎ


キツネそのものになりました。


ぽん「ひどいよぅ……」ぷるぷる


ぼん「かっわいいー」すりすり


こんちゃん。


こん「ぽんちゃんです」ぷるぷる


薬を飲んで、さっさと治してしまいましょう。


こん「もう諦めます」ふて寝


ぼん「まったく仕方ないかな」


何か良い案がおありですか?


ぼん「不可思議の国に行って、福蘭寿を手に入れる」


福蘭寿はどんな病気も怪我もフェチも治る幸せの花。

ですが、伝説でしか語られぬ花です。


ぼん「不可思議の国は望むものが手に入ると云われる国」


一方で、望まぬものが失われると云われます。


ぼん「それでも、行ってみる価値はある」


とても妹思いですね。


ぼん「ずっとね」


スワンボートは、誇り高き純白の高山、エンゼルヴァイスの頂へと降りました。


ぼん「行ってきます」ちゅ


こん「気をつけてね」ぷるぷる


その頂には、銀星の輝きが空へと還るクレパスがあります。

ぼんちゃんは、ちゅうちょすることなく、そのクレパスへと飛び込みました。

その奥底は、どうやら私には干渉できないところのようです。

どうかご無事で……。



ぼん「きれい……」


辿り着いたその場所は、心を奪われるような甘い世界でした。

目の前には白いバラが咲き溢れる牧歌的な庭。

僕は呼ばれたような、誘われたような気がしてその庭へと足を踏み入れました。


すると、いっそう甘い香りがして、僕はその香りの中に、沈むようにゆっくりと、この国と混ざるように溶けていきました。


ぼん「空想の国は、ロマンから生まれたと伝えられている」


生き物が育ち、ロマンが広がり、それが豊かな国を作った。


ぼん「でもいつしか人間は、ロマンに満足して、科学で現実を充実させることに直向きになった」


それは決して間違いとは言いきれない。

それでも、ロマンが減少する理由としては十分だった。


ぼん「ある日、ロマンと平行して空想生物が減少していることがわかった。国はこれを由々しき問題として空想科学センターを設立した」


空想科学センターは、空想と科学のバランスを保つのが目的の組織。

でも、問題解決と、当たり前にそう簡単にはいかなかった。


ぼん「色々と調べて試してみた。けれどダメだった。それで国内だけじゃなく、国外にも注目したいつか、僕は気付いたんだ」


ロマンは世界に満ちている。

その量もまた減っている。


ぼん「なら、世界規模でもっと空想が増えればいい。それがこの国に流れてくれれば」


そこで、決まった国外への空想提案を、僕は自ら志願した。

空想は創造と破壊のどちらも可能にする、とても危険なものだと考えたから。

もしもの事態で誰を犠牲にしたくないのと、だからこそ慎重にいきたかった。


そして世界を巡った。

そこで知った。


ぼん 「この世界には想像した以上に、個性の強い国が数えきれないほどあった。もしいつか。その国々が、自国の個性に強くこだわり、それを無理にでも主張し始めたら……」


僕は余裕を与えようと、楽しい空想を広めることを、より決意した。

そこで改めて思った。


ぼん「僕は本当に正しいことをしているのだろうか。ただいたずらに、破壊の手段を広めているだけじゃないだろうか」


悩みながらも、たくさんの空想、そして笑顔と一緒に想いを提供した僕は、少しずつ生きる気力を失っていった。

それはどんどん加速して、ついには命を提供するまでになった。


ぼん「それに後悔はなかった。だって楽しかったから。みんなが笑ってくれて嬉しかったから」


でも、心にずっと秘めていた大切なものを、僕はいつの間にか忘れていた。


ぼん「大好きなぽんちゃんが笑顔で幸せに暮らせる世界にする。そのために僕はずっと頑張ってきた」


なのに、忘れちゃった。


ぼん「僕が死んでしまって辛い思いをしただろう。たくさん泣いたことでしょう」


後になって気づいたよ。

馬鹿なお姉ちゃんでごめんね。


ぼん「僕はずっと……迷って迷って……」


あれ?


ぼん「何に迷ってたんだっけ」


心地いい。

なんだか眠くなってきた。

曖昧なのはそのせいかな……。


ぼん「おやすみ」


ぽん「お姉ちゃん!」


ぼん「ぽんぽん……」


目の前の愛らしいキツネさんは、僕を覆う白いバラの花弁を両手で一生懸命に散らしてくれました。


今こそハッキリしたよ。


ぼん「間違ってなんかいない。ぽんちゃんが助けてくれたあの日、僕は世界中から降り注いだみんなの想いを確かに受け取った。ありがとう、ぬくぬくしたその想いを」


ぽん「みんな、お姉ちゃんのことがだーいすきだよ」


一つだけ失わなかったものがある。

それのおかげで、僕は今も生きていられるんだ。


ぽん「らぶゆー!」むぎゅ!


ぼん「あなたさん、どうしてここに?」ぎゅ


ぽん「いつもいつもお姉ちゃん頑張ってくれるでしょう。でもね、僕はいつもいつもゴロゴロしてばかりで。それでね、僕も頑張らないとって思ったの。しっかりしなきゃって。この国は危ないし、何かあったら嫌だから。それでね、それでね!」ぐすっ


ぼん「わかった。よーくわかりました」ふきふき


ぽん「お姉ちゃんいなくなったらやだ。もういなくならないで」ぽろぽろ


ぼん「うん。約束します」ふきふき


ぽん「あ!」


ぼん「バラが僕達を襲おうとしている……!」


ぽん「こんこん!」


ぼん「カゼコンコンが効いてる!今なら!」


スワンボート「おまたせ」


ぼん「逃げるよ!」


ぽん「うん!」



そうして、なんとか無事に戻ってきた二人。

本当に何よりです。


こん「バラが追いかけてきてない?」ぷるぷる


心配いりません。

クレパスは赤いバラで埋まりました。


こん「今回はマジヤバだった」ぷるぷる


二人が戻ってきた時、ぼんちゃんの空想科学服に付属している胸のランプが赤く点滅していました。

命の危機にあったのは間違いないでしょう。


こん「こんこん!」


ぼん「さあ、今度こそお薬飲もうね」


こん「はーい」ぷるぷる


ぼん「ゼリーは、ささみ味ですよ」


こん「んく……」


ぼん「あむ……うわっ!まっずこれ!あーこんちくしょう!」


こん「おいしかったよ」ぺろり


お薬飲めたね。


こん「うん!」


ぼん「よく頑張りました」なでなで


それでは、夢の中へ。


こん「れりーこーん……」すや…


ぼん「いつまでも愛してるよ」ちゅ

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