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第5話 買い物と過去の記憶です。

もう夜になった。今日のお客さんの数もいつもと変わらず少なかった。外からは秋らしい虫の声がする。


「なあ、みんな服とかエプロン買いに行かないか?」

「賛成なの、エプロンが大きすぎて大変だったの。」

「ああ、そうしてくれ。あのエプロンはきつかった。」

「買ってくださるなら、是非お洒落な物を。」


 よし、決まりだ。スノウには帽子を被らせておいたのでとりあえずは大丈夫と。


 ドアを開けて外に出ると看板を裏返して、鍵を閉めて車に案内する。


 これはまあ、大奮発して買った。フランス車、なんかお洒落だったから、中古で買ったやつ。大きさも最初のころ家具を運ぶために使えたぐらい大きいので四人全員乗れる。色は薄い黄色でひとつ難点なのが左ハンドルのマニュアルであること。


 まあ、もう慣れたけど。ウィンカーとワイパーのレバーが逆なんだよな。


「これは何で動くんだマスター?」

「ガソリンっていう油を燃やして動くんだよ。」

「異世界にある物はどれも不思議だな。それから、なんで剣を持ってきちゃいけないんだ?」

「武器はこの国では振り回しちゃだめだし、万が一のことがあったら大変だから。」

「ふーん。」

「じゃあ車動かすぞ。」


 そういってエンジンをかけると辺りにエンジン音がしてライトがついた。


 視力の関係で運転時はメガネを装着。さて、近場にあるそういう衣服を扱っている店へ行くことにしよう。


 ここら辺はあんまり人が多くないし、夜になると街灯と家の明かりそれから車がたまに通るぐらいで明るさが微妙。


「ねえ、皆こっちの世界を見て少しは驚かないの?」

「だってお兄ちゃん、伝説というか絵本で良く読んだから。」

「伝説、絵本?」

「いや、人族の物ではなくて獣族の伝説で昔、異世界から帰ってきた奴がいるらしいぞ。アタシもスノウから聞いたんだ。」

「へえ、帰ってこれた人もいるんだ。その人はどうなったの?」

「消えたのよ。」

「え?」

「私の知る限りでは、また戻ったとも、死んだとも言われていて正しくはよくわからないの。でも、エルフの長老が言っていた話では異世界の人間に恋をしてまた戻って行ったらしいわ。」

「素敵な話だな。あ、もう着くよ。」


 この店は俺の店が開店した頃から使わせてもらっている店、ついでに言うと俺の幼馴染みの家でもある。俺の少ない女友達だ。まあ、特別な関係では無かったけどな。


 さて、店に入るとしよう。車から降りると三人を連れて扉へ向かった。


扉を開けると外とは違って凄く明るくなり、友達の母親が声をかけてくれた。確か、この家の父親は俺が中学の頃に事故で亡くなってるんだよな。


 あの頃はずっとアイツ泣いててな。俺も俺でバカだったから、なんかひたすら笑って欲しくて話し掛けてたな。


そんなことを考えているとこの店の店主であるアイツの母親が話し掛けてくれた。


「セイジ君、今日は何?」

「この子達のエプロン作って欲しくて。」

「じゃあ採寸するわね。一応個室でするけどセイジ君はあっち見ててね。」

「はい。」


 その間、店の外を眺めているとあまり変わっていない景色を見て少し昔のことを思い出した。


 あいつ、サユリの父親が亡くなった日は確か、今ごろで雨の日だった。朝から降っていた雨で学校に行くときも視界が悪いことがわかっていた。


 あの日はサユリの誕生日だった。その日サユリの父親はバースデーケーキを取りに行って車に跳ねられたらしい。次の日あいつは泣きながら俺に伝えてくれた。


 もう、あれから十年か。長かったようなあっという間だったような。あいつ、今は都内に住んでいるらしいがそろそろ誕生日か。


 なんとなく、今年は会えそうな気がしたんだけどな。


 その時声がした。

「セイジ君終わったわよ。」

「ありがとうございました。」

「明日には作っておくから取りに来てその時でお金はいいから。」

「はい、明日もこれくらいの時間に来ますので。あ、サユリさんの…」

「サユリがなにか?」

「あ、いやなんでもないです。それじゃあ今日はありがとうございました。」

 そうだな、他人の家のことに首を突っ込むのはよくないな。


 三人を連れて車に戻った。

 そういえば俺も実家に帰っていない。俺の両親はここから引っ越したので今は少しはなれたところにいる。最後に会ったのは開店の二年前。割と裕福な方なので資金を借りに行った時だ。


 返すときはいつでもいいからまとめて返せと。俺は家族と余りなかが良くなかった。多分これも家の敷居を跨がれたくないのだろう。今年から大学生の妹と就職した兄が要れば十分なんだろ。


 少し行きより車を飛ばして行った。


 家兼店に入ると携帯にメールが入っていた。ちょうどサユリからだった。

「お店開店おめでとう、一年も経っちゃったけど…私の誕生日ぐらいにお店に行ってもいいかな?」

 

 決意した。とりあえず三人はおいといて、あいつの誕生日を祝おうと。


 しかし、気付いた。

「俺、ケーキ作れねえ。」

「ご主人、ケーキなら私作れますよ。でもなんでケーキなんですか?」

「えっと、友達の誕生日を祝おうと思ってね。」


 ミルヒがケーキを作れるということはいい情報だ。近いうちにこいつらにも店の役にたてるようになってもらわないとな。しかし、事故の件もあるからその点はよく考えなくては……


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