閑話休題 加納家の不揃いな遺伝子
放課後の瑞穂学園。航聖と薫の演算室での会話である。
「なぁ、ヒメ。前から思ってたんだが……加納の連中って、本当に兄弟なのか?全然似てないだろ?」
薫は笑みを浮かべる。
「ふふっ、そうね。航聖もそう思う?まあ、あの家は『事情』が複雑ですものね」
薫はコーヒーカップを片手に、話を始める。
「まずは長男の耀心さんと末っ子の朔夜くんね。あの二人は本妻さん、正統な子供よ。目がクリっとしていて、なんていうか……愛嬌のあるタヌキ顔よね」
「ふん……耀心ね……同い年だが、あいつはやり手だからな。大学生でもう起業してるんだろ?あの顔でニコニコしながらエグいビジネス決めるから、タヌキっていうか『化けダヌキ』かな。朔夜もあの末っ子特有の可愛がられ方はその……なんだな、兄貴ゆずりのタヌキの目から来てる気がするね」
「次は、愛人の子ども、刹那くんよね」
「ああ……アイツは全然違うな。細い釣り目の……うーん、典型的なキツネ顔ってやつ?」
「刹那くんは、どこか冷ややかで食えない雰囲気よね。タヌキの兄弟の中に一匹だけキツネが混ざっているって、あの異質さは、やっぱりお母様が違うからなんでしょうか……」
「でも、私が一番『整ってる』と思うのは、やっぱり龍輝かしら」
航聖のキーボードを叩く手が止まる。
「龍輝か。話では、使用人の子だってことだが……まあ、あいつの顔は、タヌキでもキツネでもないな」
「そうね。鋭くて、でもどこか気高い……オオカミって感じよね。でも、兄弟の中で顔の造形だけで言えば龍輝がダントツなのよね」
「……ははっ、本妻の子より使用人の子か……そうだな、あいつのあの飢えたような目は、確かにオオカミっぽいかな」
航聖は椅子を回して、薫と向き合った。
「タヌキが二匹、キツネが一匹、それにオオカミか。バラバラな種族を同じ檻(加納家)にぶち込んだ当主(父親)か……」
「ふふっ、きっとその全ての要素を混ぜたような、とんでもない怪物なんでしょうね」
「……まあ、今の話は、龍輝にはしないほうがいい。特に『お前は一番整ってる』なんてね」
「……え?」
薫は首をかしげる。
「あいつ、自分の顔には興味ないみたいだよ。……何より『お前を顔で選んだ』なんて思われたら、マジでブチ切れて怒り出すぞ。あいつのプライドはそこじゃない」
「……ふふ、そうね分かったわ。……この話は二人だけの秘密ね」
オマケです。これで暫くお休みします。有難うございました。




