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中学時代
中学に上がる頃、母親と継父は別居した。
これで少しは家の空気も変わるかと思ったが、待っていたのはさらに酷い「無視」だった。
誰もユリに話しかけない。
朝起きても、学校から帰っても、ただ空気のように扱われる。
母親、祖母、妹、弟――全員が、まるでユリがこの家にいないかのように振る舞った。
名前を呼ばれることすらなかった。
「なんかあんた最近おかしいよね。絶対男がいるでしょ」
そんなふうに、何かが気に入らないと決まって言われた。
ユリには恋人どころか、そんな相手と関わる余裕もなかったが、関係なかった。
母親の中では、ユリが悪いのは「変な男のせい」にしておけば説明がついた。
ある日、母親のスマホを見てしまった。
そこには、彼氏とのLINEと、裸で写る動画があった。
まだ継父との籍は抜けていなかった。
つまり、それは不倫だった。
不倫相手はユリより8〜9歳年上。
その男と喧嘩すると、母親は決まってユリに当たった。
「全部あんたのせい」
「生意気な顔してんじゃないよ」
そう言って平手打ちが飛んできた。
ユリの中で、何かが静かに壊れ始めていた。